AD
エーディー
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
アートディレクター
Art Director
広告制作でビジュアル表現の責任者を務める職種。クライアントの要望を聞き取ってビジュアルコンセプトを立て、デザイナーやイラストレーターなどのクリエイターをまとめて制作を指揮する。仕上がりの品質チェックと修正指示、スケジュールや予算の管理も受け持つ。
このキャンペーンのADは、ポスターとWeb用バナーのトーンがそろうようデザイナーに修正を指示した。
アシスタントディレクター
Assistant Director
テレビ番組制作でディレクターの下につく補佐役。リサーチ、ロケの手配、出演者や関係先への連絡、議事録作成、撮影・編集の補助など番組づくりの実務全般を受け持つ。経験を積んでディレクターになる出発点とされる。
ADが明日のロケの交通手段と機材の手配を済ませた。
助監督
Assistant Director
映画・映像の撮影現場で監督を支え、撮影スケジュールや進行を管理する役。撮影順の調整、各部署との連絡、現場の安全管理、日々の撮影予定表(コールシート)の作成などを担う。日本の映画では監督の代行や、予算・創作面で一定の裁量を持つ場合があり、テレビのADとは役割が異なる。
助監督(AD)が翌日のコールシートを各部署に配った。
アルツハイマー病/アトピー性皮膚炎
Alzheimer's disease / Atopic dermatitis
診療科によって指す病名が変わる略号。神経内科・老年医学では、近時記憶障害から始まり認知機能が進行的に低下する神経変性疾患のアルツハイマー病を指す。皮膚科・アレルギー科では、かゆみのある湿疹がよくなったり悪化したりをくり返すアトピー性皮膚炎を指す。カルテや論文では文脈で読み分ける。
神経内科のカルテのADはアルツハイマー病、皮膚科のADはアトピー性皮膚炎と読む。
耐空性改善命令
Airworthiness Directive
航空機や装備品に安全上の不具合が見つかったとき、航空当局(米国FAAなど)が出す、点検・修理・改造を義務づける命令。対象機、実施内容、実施期限を示す。日本では、外国当局が出したADなどを受けて国土交通省航空局が耐空性改善通報(TCD)を発行し、実施されないと耐空証明の期間短縮や取消しもありうる。
新しいADが出たため、対象機は期限までに指定された点検を受ける必要がある。
ADという呼び名を手放した放送局
ADと書かれた略称が、広告ではアートディレクター、放送と映像ではアシスタントディレクター、医療ではアルツハイマー病かアトピー性皮膚炎、航空では耐空性改善命令を指す。このうち、呼び名そのものが動いている例を、調べた範囲で確認できたのは放送のADだけである。
日本テレビが選んだ「YD」
PRESIDENT Onlineの2022年1月18日の記事によると、日本テレビは番組制作でAD(アシスタント・ディレクター)と呼ぶのをやめ、「YD(ヤング・ディレクター)」と呼ぶことになっているという。同記事は、呼称を変えてイメージを刷新し、局内の意識を変える狙いがあると伝える。ADは長時間労働や雑用のイメージがつきまとう職種であり、働き方改革のなかで呼び名ごと見直す動きが出たかたちだ。
JPRIMEの記事には、日本テレビ以外の局でも「SD(サブディレクター)」や「ND(ネクストディレクター)」など、局によって呼び方が異なる状況になったとある。末尾のDはそのままで、頭文字だけが入れ替わっている。
映画の助監督は同じADのまま
同じ assistant director に由来する映画の「助監督」は、事情が違う。日本の映画では、助監督が監督の代行をしたり、予算や創作面で一定の裁量を持ったりする場合があるとされ、テレビのADとは役割が異なる。役割が違うのに略称は同じADで、呼び名を替えたと確認できたのはテレビ局だけである。
広告のアートディレクターも、綴りも読みもADのままだ。CM制作では、ビジュアルの責任者のADと撮影進行側のADが同じ案件に並ぶ場面もありえそうだが、今回の調査では裏づけを取れなかったので、推測にとどめる。
医療と航空のADは、人を呼ぶ名前ではない。病名と、当局が出す点検・修理の命令である。イメージを理由に呼び名を差し替える話が起こりうるのは、人を指すADだけだ。
日本テレビがADをYDに替えた一方で、映画の助監督、広告のアートディレクター、病名、命令の側に同じ動きは確認できなかった。確認できた範囲で、イメージを理由に呼び名が差し替えられたADは、日本テレビのYDの例だけである。