AE
エーイー
6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
アカウントエグゼクティブ(広告代理店の営業担当)
Account Executive
広告代理店で広告主(クライアント)を受け持つ営業担当。課題のヒアリングから企画提案、実施後のフォローまでを窓口として一貫して担う。アカウントマネージャーと呼ぶこともあるが、現場ではAEと略す。
AEがクライアントに次の企画を提案した。
有害事象
Adverse Event
治験などで薬を投与された被験者に起きた好ましくない、意図しない徴候・症状・疾患。臨床検査値の異常も含み、薬との因果関係の有無は問わない。
被験者に発熱が出たため、AEとして記録し因果関係を評価した。
アコースティック・エミッション
Acoustic Emission
固体材料にき裂の発生・成長が起きたとき、材料から弾性波が放出される現象。これをセンサーで検出して発生源の状態を探る手法をAE法と呼び、非破壊検査に使う。
AE法で構造物のき裂の進展を監視した。
アフターエフェクツ(映像合成ソフト)
Adobe After Effects
アドビの映像合成・モーショングラフィックス・タイトル制作用ソフトの略称で、「AE」「Ae」と書く。タイトルやロゴ、背景のアニメーション化や、映像への合成に使う。
テロップの動きはAEで作って編集ソフトに戻した。
自動露出
Auto Exposure
カメラが被写体の明るさを測り、絞り値やシャッター速度を自動で決めて適正な明るさに撮る機能。カメラのボタンや設定にもAEの表記が出る。「AEロック」は測った時点の露出を固定する操作で、逆光の人物など、構図を変えると露出が狂いやすい場面で、ピントと露出を別々に決めたいときに使う。
逆光だったのでAEロックで顔の明るさに合わせてから構図を直した。
急性増悪
Acute Exacerbation
呼吸器内科で、特発性肺線維症など間質性肺炎の経過中に、呼吸困難が急速に悪化し、両肺に新たな浸潤影が出て呼吸不全が進む状態。予後を大きく左右する。治療にはステロイドパルス療法(大量のステロイドを短期間点滴する方法)などが用いられる。
IPFの患者さんが急性増悪を起こし、ステロイドパルスを始めた。
AEの隣にある動詞で、意味が分かれる
治験の記録に「AE」と書くとき、その発熱が薬のせいかどうかは、まだ誰にも分からない。分からないのに書く。なぜか。
有害事象(Adverse Event)の定義は、薬との関係の有無を問わない。投与された被験者に起きた好ましくない、意図しない医学的な出来事は、薬との因果関係の判断より前に、まず有害事象として拾う。仕分けは、書いたあとの仕事になる。
先に拾い、あとで分ける。有害事象のAEは、そういう網の張り方をしている。
同じ二文字でも、アコースティック・エミッション(Acoustic Emission)のAEは、網の張り方が逆に見える。こちらは材料のほうが音を出す。き裂が生まれて伸びるとき、材料から弾性波が放たれ、センサーがそれを拾う。構造物のき裂の進展を、音で聞き取るのに使う。
耳を澄ませているのだから、鳴るものは何でも拾うのだろう。そう思っていると、カイザー効果と呼ばれる性質に裏切られる。金属では、前にかけた最大の荷重を下回るあいだ、AEはほとんど出ないとされる。材料は、これまでに受けた最大の荷重を覚えていて、それを超えるまで黙っている。
つまり、試験で音がしないことは、何も起きていないという意味ではない。「まだ過去の最大を超えていない」という情報になる。
残る四つのAEは、音も出さず、因果も問わない。広告代理店のアカウントエグゼクティブは、広告主の窓口として、企画提案から実施後のフォローまでを受け持つ人である。映像制作のAE、Adobe After Effectsは、タイトルやロゴのアニメーションや、映像への合成を作るソフトである。カメラのAEは自動露出(Auto Exposure)で、被写体の明るさを測り、絞りとシャッター速度を決める。逆光の人物なら、AEロックで顔の明るさを測ってから構図を直す。呼吸器内科のAEは急性増悪(Acute Exacerbation)で、間質性肺炎の経過中に呼吸困難が急速に悪化する状態を指す。
取り違えそうだが、取り違えにくい。AEの隣にある動詞が違うからだ。「記録する」「評価する」なら有害事象、「監視する」なら音を拾うほう、「提案する」なら営業担当、「作る」ならソフト、「ロックする」なら自動露出、「起こす」なら急性増悪になる。
冒頭の発熱に戻ると、記録には「AEとして記録し、因果関係を評価した」と、この順で書かれる。記録が先で、評価があと。熱が薬のせいだったのか、ただの風邪だったのかは、AEの二文字を書いた時点では空欄のままである。