用語

アンカー

アンカー

10つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

放送(テレビ・ラジオ)

ニュース番組のメインキャスター

anchor

ニュース番組で、記者のリポートや中継を次々につないで番組全体をまとめる司会者。原稿を読むだけでなく、コメントや構成にも関わる総合的な進行役として扱われる。米国の「アンカーマン」に由来し、リレーの最終走者になぞらえた呼び名とされる。

今夜はアンカーが現地の記者につないで、そのまま特集に入る。

スポーツ・フィットネス

リレー・駅伝の最終走者(登山:ザイル最後尾)

anchor

陸上や水泳のリレー、駅伝で最後を走る(泳ぐ)選手。前走者から受け取ったバトンやたすきで順位を決める役のため、勝負強い選手が置かれやすい。登山では、ザイルでつながった隊列の最後尾の人もアンカーと呼ぶ。語源は綱引きの最後尾の選手とする説もある。

アンカーに速い選手を置いて、逆転を狙う作戦にした。

建設・建築

アンカーボルト(基礎と柱・土台を固定する埋込みボルト)

anchor bolt

コンクリートの基礎に埋め込み、土台や鉄骨の柱脚を固定して、地震や風で建物がずれたり浮いたりするのを防ぐボルト。コンクリートを打つ前に据える「先付け」と、固まった後に穴をあけて入れる「後施工」がある。単に「アンカー」とも呼ぶ。

柱脚のアンカーは、コンクリートを打つ前に位置を出して据えておく。

海運・貿易

錨(いかり)

anchor

船を一定の場所にとどめるため、鎖や綱をつけて海底に沈める鉄製の道具。爪が海底に食い込んで船を止める。船を沖で止めることを投錨、錨地を変えることを転錨という。有かん(ストック付き)と無かん(ストックレス)に大別される。

沖待ちのため、指定された錨地で投錨した。

インターネット広告

アンカーテキスト(リンクの表示文字)

anchor text

アンカー テキスト(リンクテキストとも呼ばれます)は、テキストとして表示されるリンクです。

出典:Google 検索セントラル「Google のリンクに関するベスト プラクティス」(Google)

ハイパーリンクとして表示される文字部分。検索エンジンはリンク先ページの内容を判断する手がかりにするため、SEOではどんな語句でリンクを張るかが評価に影響する。キーワードを不自然に詰め込む設定は、ペナルティの対象になりうる。

内部リンクのアンカーテキストは、「こちら」ではなくページの主題がわかる語句にした。

不動産(開発・取引)

アンカーテナント(核店舗・核テナント)

anchor tenant

ショッピングセンターやモールで、集客の中心になる大型店。百貨店や大手スーパーなどが入り、その来店客が他の専門店にも回遊することが期待される。そのため賃料や建物費用で優遇条件が付くことがある。キーテナント、核店舗ともいう。

核となるアンカーテナントが決まってから、残りの区画のリーシングを進めた。

土木・測量

グラウンドアンカー(地盤アンカー)

ground anchor

斜面や擁壁、掘削壁の安定のために、PC鋼より線(高強度のより線)などの引張材を安定した地盤や岩盤に定着させ、その引張力で地山や構造物を押さえ込む工法、またはその部材。定着部(アンカー体)が地盤から抵抗を得る仕組みによって摩擦型・支圧型・複合型に分かれる。定着位置は想定すべり面より深い安定地盤に取るのが通例で、建築の基礎に埋め込むアンカーボルトとは別物。

法面の滑りを抑えるため、すべり面より深い岩盤にアンカー体を定着させた。

証券・投資

アンカー投資家

anchor investor

IPO(新規株式公開)で、一般向けの申込みが始まる前に株式を割り当てられる大口の機関投資家。インドの制度(SEBIの規則)では1社あたりの最低投資額が決められ、割当後は一定期間の売却を禁じるロックインが課される。先に大口が買うことで、上場直後の値動きが安定しやすいと期待される。

今回のIPOでは、アンカー投資家への割当が先に終わり、価格帯の上限で決まった。

Webサービス・SaaS・アプリ

アンカー(ページ内リンクの移動先)

anchor (page anchor)

長いページの中で、リンクをクリックしたときに画面が移動する先の位置。HTMLでは移動先の要素にid(古くはname)を付け、リンク側で「#名前」と指定して飛ばす。目次や「ページ上部へ戻る」ボタンの実装で使われる。リンクの表示文字を指すアンカーテキストとは別の意味で使われる。

目次の各項目から、見出しに付けたアンカーへジャンプできるようにした。

医療・医学

固定源(矯正用アンカースクリュー)

anchorage / orthodontic anchor screw

歯科矯正で、歯を動かすときに反作用で動いてしまわないよう、土台になる動かない支点。その支点として歯茎から顎の骨に埋める小さなチタン製のネジを、矯正用アンカースクリュー(ミニスクリュー)という。失った歯を補う歯科インプラントとは目的が違い、治療後に撤去する。患者の装置の使い方に頼らず強い固定が得られる点が利点とされる。

奥歯を動かしすぎないよう、アンカースクリューを固定源にして前歯を後ろへ引いた。

放送のアンカーは、錨ではなく綱引きの最後尾

「アンカー」を辞書で引くと、まず錨が出てくる。船を海底につなぎとめる道具だ。建設のアンカーボルトも、基礎に建物をつなぎとめる点では同じ発想に見える。ニュース番組のアンカーも、番組を支える人という意味で、この仲間だろうと思う。ところが語源を調べると、錨から来た言葉ではないらしい。

錨より先にあった綱引きとリレー

Online Etymology Dictionary の anchorman の項によると、この語は最初、綱引きの最後尾の人を指した。年代は1903年とされている。1934年には、リレーの最終走者の意味が記録される。放送の司会者の意味は、同辞典では1958年以降の用法として挙がっている。順番は、綱引き、リレー、放送である。

綱引きの最後尾の人は、綱が引かれても踏ん張って持ちこたえる役だ。リレーの最終走者は、前の走者から受け取ったものを最後にゴールまで届ける。どちらも最後に全体を受け止める人で、錨という道具より、錨にたとえられた人のほうが先に言葉になっている。スポーツの欄に「リレー・駅伝の最終走者」と登山の「ザイルの最後尾」が並んでいるのは、この系譜の名残とも読める。

1952年の大統領候補指名大会

Slate の記事によれば、テレビで newscaster を「anchor man」と呼んだ早い例は、1952年の米国の党大会報道だ。CBS はウォルター・クロンカイトをこの役に指名した。仕事は、現場の記者や中継地点への切り替えをまとめることだった。記事は、名づけ親として CBS ニュースの責任者だったシグ・ミケルソンと、制作担当のポール・レヴィタンの名を挙げ、どちらとも決めきれないとしている。

役割の向きは、リレーと逆になっている。最終走者は列の最後にいる。番組のアンカーは記者の中継を次々に受けてつなぐので、画面の中心にいて、最初にも最後にも顔を出す。「最後尾」という位置の意味は消え、「全体を支える人」という意味だけが残った。

年代にも食い違いがある。Slate は1952年に CBS が使ったとし、Online Etymology Dictionary は放送の意味を1958年以降に置く。前者は具体的な出来事の記録、後者は辞典が確認した用例の年代と思われるが、理由は確かめていない。

不動産の「アンカーテナント」や、SEO の「アンカーテキスト」は、それぞれ別の経路で入った語だと考えられる。今回、その由来までは確認できていない。船の錨のイメージで説明されることが多いが、それは後からの説明かもしれない。

辞書の最初に載っている錨と、ニュース番組の司会者のあいだには、辞典の上で直接のつながりを示す記述が見つからない。間にいるのは、1903年の綱引きの最後尾である。