AR
エーアール
6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
売掛金
Accounts Receivable
商品やサービスを掛け(後払い)で売り、まだ代金を受け取っていない分を記録する勘定科目。貸借対照表では流動資産に載り、支払う側の買掛金(AP)と対になる。経理では請求書の入金消込や滞留(回収が遅れた残高)の管理が日常の作業で、外資系や英語の会計ソフトではこの略称で呼ばれる。
月末のAR残高を確認して、60日を超えた滞留分を営業に共有した。
大動脈弁逆流症(大動脈弁閉鎖不全症)
Aortic Regurgitation
大動脈弁逆流症(AR)は,大動脈弁の閉鎖不全により,拡張期に大動脈から左室に向かって逆流が生じる病態である。
心臓の大動脈弁がきちんと閉じず、拡張期(心臓が広がって血液を受け入れる時期)に血液が大動脈から左心室へ逆流する弁膜症。循環器の診療や心エコー(超音波検査)の所見記載で、カルテや報告書の略語として使われる。大動脈弁狭窄症(AS)と並べて「AS/AR」と書かれることも多い。
心エコーでARは中等度、経過観察とした。
拡張現実
Augmented Reality
スマートフォンやグラスのカメラ越しに見える現実の景色へ、コンピューターで作った案内や3Dモデルなどの情報を重ねて表示する技術。完全に仮想空間へ入るVR(仮想現実)とは違い、現実が土台になる点が特徴。開発の現場では、位置や平面の認識(トラッキング)、端末ごとの対応可否が仕様の中心になる。
家具を部屋に置いた様子をARで確認できる機能を、アプリの次期リリースに入れる。
全危険担保
All Risks
海上保険(貨物保険)で、免責として列挙された事由以外の原因による損害をすべて補償する条件。協会貨物約款(ICC)のA条件に相当し、保険証券や貿易書類では「AR」と略されることがある。補償される危険を個別に挙げる限定列挙型の条件と対比される。
輸出貨物の保険はAR条件で手配した。
アンドロゲン受容体
Androgen Receptor
テストステロンなどの男性ホルモン(アンドロゲン)が結合すると活性化し、核内で特定の遺伝子の転写を促す核内受容体型の転写因子、またはそれをコードする遺伝子。研究室では抗体を使ったウエスタンブロットや免疫染色の標的として、遺伝子名は斜体の AR で扱われる。前立腺や筋肉の研究でよく登場する。
前立腺がん細胞株でAR の発現量をウエスタンブロットで比較した。
分析用試薬(AR級)
Analytical Reagent
分析室で使う化学試薬の等級表示で、工業用や化学的純度(CP)級より不純物を厳しく管理した、一般的な分析用の品質を示す。ロットごとに成績表(CoA)が付くのが通例。ただし全世界共通の規格ではなく、各メーカーが自社の基準で定める。ACS 規格などへの適合は別に表示され、メーカーによっては「AR (ACS)」のように併記する。
滴定の標準液は、AR級の試薬を使って調製した。
「AR」の二つの名は、除外項目から決まった
1990年、ボーイング社の研究者トム・コーデル(Tom Caudell)は、777型機の配線を組む作業員に、板の上のどこへ線を通すかを示す方法を探していた。同僚のデビッド・ミゼル(David Mizell)と出したのは、透過型のディスプレイで配線位置を現実の板に重ねて見せる案である。MIT Technology Reviewなどの解説によれば、提案書を書く際にコーデルは「仮想現実」という語を退けた。完全に人工の世界をつくるものではなく、現実に情報を足すものだったからだ。この仕組みに付いた名が拡張現実(Augmented Reality)で、作ったのはコーデルだとされる。二人の論文が出たのは1992年のハワイ国際システム科学会議である。
先にあったVRとの違いを言うために生まれた語、ということになる。いま「ARとVR」と並べて呼ぶ順序も、この成り立ちに合っている。
「すべての危険」の直後に付く例外
ARには六つの業界の意味があり、海上保険の全危険担保(All Risks)も、名前の付き方に特徴がある。名前だけ見ると何でも補償するように読めるが、協会貨物約款(Institute Cargo Clauses)のA条件、1982年版の本文は「all risks of loss of or damage to the subject-matter insured except as provided in Clauses 4, 5, 6 and 7」(Institute Cargo Clauses (A) 1982、第1条)と始まる。「すべての危険」の直後に、第4条から第7条までの除外を指す例外が付いている。
この条件は現在、AR条件というより「(A)条件」「A約款」と呼ばれることが多い。ただし、保険証券や貿易書類にはARの略記が残る。海上保険の現場では、名前よりも除外条項の読み込みが実務の中心になる。
隣に書かれる相手で決まる意味
会計のARは、買掛金のAPと対にして書かれる。循環器のARは、大動脈弁狭窄症のASと並べて「AS/AR」と書かれる。この二つは、語の成り立ちを持ち出さなくても、隣の二文字を見れば何の話かが決まる。