アーム
アーム
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
ロボットアーム
robot arm
産業用ロボットで、人の腕にあたる部分。複数の関節をつないだ機構で、先端のハンド(把持具)を目的の位置・姿勢へ動かし、組立・搬送・溶接などを行う。ロボットの形式は、このアームの関節の並べ方(垂直多関節、水平多関節など)で呼び分けることが多い。
このラインはアームの可動範囲が足りず、部品の置き場所を手前に寄せた。
トーンアーム
tonearm
アナログレコードプレーヤーで、先端にカートリッジ(針を含む部品)を付けて支える可動の腕。針が溝をなぞるために必要な圧力(針圧)は、アーム後端のカウンターウェイトを回して、カートリッジごとの適正値に合わせる。単に「アーム」と略して呼ぶことが多い。
カートリッジを交換したので、アームのカウンターウェイトを回して針圧を合わせ直した。
アーム(油圧ショベル)
arm (stick)
油圧ショベルの作業装置で、機体側の腕であるブームの先に付く腕部。さらにその先端にバケットなどの作業具を取り付け、ブーム・アーム・バケットを油圧シリンダで動かして掘削する。ブームとは別の部位を指すので、現場では呼び分ける。
アームの先をバケットから破砕機に付け替えて解体作業に入った。
アーム(治験の群)
arm
治験・臨床試験で、同じ治療(または無治療)を割り当てられた被験者の集まり。試験薬を投与する群、標準治療やプラセボ(有効成分を含まない偽薬)を投与する対照群などがそれぞれ1つのアームになる。全員が試験治療を受ける試験は単アーム試験と呼び、第1相・第2相で多く使われる。
この試験は試験薬群とプラセボ群の2アームで、被験者をランダムに割り付ける。
サスペンションアーム
suspension arm
自動車のサスペンションで、車体側とタイヤを支える部品(アップライト)をつなぐ腕状の部品。ダブルウィッシュボーン式では上下2組のアーム(アッパーアーム・ロワアーム)が車体から横方向にほぼ水平に伸び、車軸まわりを上下から挟んで支える。アームの長さや取り付け位置が、車輪の動き方を決める。
段差で縁石に当てたあと、ロワアームが曲がっていないか点検に出した。
腕の先に付くものと、付かないもの
油圧ショベルの運転席から見て、機体にいちばん近い太い腕は「アーム」ではない。ブームである。Wikipedia日本語版『油圧ショベル』には、腕状の構造は機体の基部から順に「ブーム」「アーム」と呼び分けられる、とある。アームはブームの先にある一節で、その先にバケットが付く。
ロボットアームなら、指す範囲が変わる。土台から先端のハンドまで、関節をつないだ機構の全体を言う。ショベルでは一節、ロボットでは全体。同じ語でも、現場の人が頭に描いている長さは違う。
レコードプレーヤーのトーンアームは、節のない一本の腕だ。先にはカートリッジが付く。単に「アーム」と呼ぶことが多い。
ここまでの三つは、どれも先に別の名前の道具をぶら下げている。ハンド、バケット、カートリッジ。腕は道具を目的の位置へ運ぶ側で、仕事をするのは先端のほうだ。だから先端が替わっても、腕は同じ名前で呼ばれ続ける。
自動車のサスペンションアームも、そうなのだろうと思った。ところが少し違う。ダブルウィッシュボーン式では、上下2組のアームが車体側から横方向にほぼ水平に伸びて、アップライト(車軸やハブを含む部品)を上下から挟んで支える。アッパーアームとロワアームの2本で一つのものを受けるので、先端に付くのは道具というより、タイヤを支える部品そのものだ。 もっと遠いのが治験のアームだ。Friends of Cancer Research の用語集は、臨床試験のアームを「特定の治療(または無治療)を受ける患者の群」と書いている。腕のように伸びるものは何もなく、先に付く道具もない。あるのは、同じ扱いを受ける人の集まりだけだ。試験薬を投与する群と、プラセボ(有効成分を含まない偽薬)を投与する群なら、2アームの試験になる。なぜ群を「腕」と呼ぶのか、その由来は確かめられていない。枝分かれした先、という見立てかもしれないが、推測にとどまる。
機械の腕は先に付くものを運び、治験の腕は何を受けるかで決まる。向きが逆だ。
ショベルのブームとアームは、バケットから根元へ数えれば見分けがつく。治験の2アームには、数える先端がない。見分ける手がかりは、各群が何を受けるかだけである。