用語

アタック

アタック

3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

スポーツ・フィットネス

攻撃(バレーボール)/登頂への挑戦(登山)

attack

スポーツでは攻撃すること。バレーボールでは、ボールを相手コートへ打ち返すことをいい、とくにスパイクをさすことが多い。登山では、山頂や困難な岩壁の登攀に挑むことをいう。競技によって攻撃と挑戦という別の意味になる。

明日は天候が安定するので、第一次アタック隊が朝4時に最終キャンプを出る。

音響・レコーディング

アタック(タイム)

attack time

アタック時間は、入力シグナルがスレッショルドを上回った後にどのくらいの速さでコンプレッサーを作用させるかを決定します。

出典:Native Instruments『About Compression』

コンプレッサーで、入力音がスレッショルド(圧縮を始める音量の基準)を超えてから、圧縮が効き始めるまでの速さを決めるつまみ。短すぎると音の出だし(トランジェント)がそげ落ちて鈍い音になり、長すぎるとコンプレッサーの反応が遅くなる。シンセサイザーのエンベロープ(音量の時間変化)では、音が鳴り始めて最大音量に達するまでの時間を指す。

ドラムのアタックを残したいので、コンプのアタックタイムは遅めにしておこう。

音楽(演奏・楽器)

音の出だし・アタック

attack

声楽や合奏などで、演奏の最初の出だしのこと。立ち上がりや出だしの意味では、もとは音楽用語とされる。

合奏の出だしのアタックがそろっていないので、指揮をよく見て入ろう。

アタックを遅くすると、尖る音と丸い音

スネアドラムにコンプレッサーをかけて、アタックを遅めに回す。スティックが当たった瞬間の鋭さが残って、音が前に出る。

同じ「アタックを遅く」を、シンセサイザーのつまみでやってみる。こちらは逆で、音は輪郭がぼやけ、ふわりと立ち上がる。名前が同じなら、遅い・速いの向きも同じ結果になるに違いない。そう思い込んでいると、手元で裏切られる。

同じ語、同じ「遅く」で、なぜ尖る音と丸い音に分かれるのか。

答えは、アタックが測っている相手の違いにある。シンセのエンベロープ(音量の時間変化)でのアタックは、音が鳴り始めてから最大音量に達するまでの時間だ。長ければ、立ち上がりはなだらかになる。音そのものの形を決めている。

コンプレッサーのほうは、音の形を直接いじらない。Native Instruments の解説は、アタック時間を「入力シグナルがスレッショルドを上回った後にどのくらいの速さでコンプレッサーを作用させるかを決定します。」と説明している。スレッショルドとは、圧縮を始める音量の基準である。つまりこのアタックは、音の立ち上がりではなく、音を抑える側の反応の速さだ。

私の見立てでは、抑える側が遅く動けば、その間、音の頭は素通りする。頭の鋭い部分が残るのは、そのためである。反対に最短まで速くすると、音が出た瞬間から抑えがかかり、頭まで押さえられておとなしくなる。アタックを速くすると、音のアタックが減る。

そこへ三つ目の意味が重なる。音楽では、アタックは声楽や合奏などの最初の出だしをいう(デジタル大辞泉)。

三つを並べると、役割が分かれる。音楽のアタックは、演奏者が出す音の頭。シンセのアタックは、その頭の形を機械で作る設定。コンプのアタックは、すでにできた頭を残すか削るかを決める設定。同じ音の出だしを、演奏する側と、作る側と、抑える側が、同じ語で呼んでいる。

コンプのつまみだけが、頭を作る向きではなく、頭を削る向きの時間を測っている。それで、遅いと尖り、速いと丸くなるという、一見あべこべな結果になる。

スネアを一発録って、コンプのアタックを最短にして聴いてみるとよい。スティックが当たる瞬間の鋭さが引っ込んでおとなしくなる。そこから少しずつ遅くしていくと、頭が戻ってくる。