BL
ビーエル
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
船荷証券(B/L)
Bill of Lading
船で貨物を運ぶとき、船会社が荷主に発行する書類。貨物を受け取った証明、運送契約の証拠、貨物の引換証という3つの役割を持つ。輸入者はこの書類と引き換えに貨物を受け取るため、貿易実務では「B/L」と表記して原本の到着や発行を管理する。
B/Lの原本が届かないと、貨物を引き取れません。
ボーイズラブ
Boys' Love
男性同性愛を題材とした小説や漫画などのジャンル名。1991年創刊の雑誌『イマージュ』がキャッチコピーに「BOY'S LOVE COMIC」を掲げたのが確認できる初出とされ、1990年代には小説のレーベルが次々に生まれた。当初は「耽美」や「JUNE」に置き換わる語と受け取られた。
BLレーベルの新刊は、書店で専用の棚にまとめて並べられる。
BL認定(優良住宅部品)
Better Living
一般財団法人ベターリビングが実施する優良住宅部品認定制度、またはその認定を受けた部品(BL部品)。1974年に建設大臣の認定制度として創設された。品質・性能・アフターサービスに優れた住宅部品に「BLマーク証紙」を貼り、瑕疵保証や損害賠償を扱うBL保険が付く。
この浴室ユニットはBL認定品なので、仕様書にBL部品と記載してください。
ビジネスロジック(業務ロジック)
business logic
業務システムの層構造のうち、ユーザーの入力情報を、データベースにアクセスできる形に変換する役割の層。「業務ロジック」とも呼ばれ、business logic を略して BL と書く。入力を処理する層やデータベースにアクセスする層の一部を BL として扱うこともある。
入力値の変換はBLにまとめて、画面側には書かないでください。
境界層
boundary layer
流体力学で、物体の表面に沿って流れる流体のうち、粘性(流体の粘りけ)の影響を強く受けて速度が壁面に向かって変化する薄い層。1904年にプラントルが見いだした考え方で、層の外側は粘性を無視した比較的単純な解析で扱えるため、計算を分けて進められる。英語の講義資料や論文では「laminar BL」「turbulent BL」のように略記される。
平板に沿う流れでは、前縁付近は層流BLで、下流で乱流BLに遷移します。
BLの意味は、年代がそれぞれ違う
輸入者は、B/Lの原本を手にしないと貨物を引き取れない。船の上にある荷物の代わりを、紙一枚が務めているわけだ。
B/Lは Bill of Lading の略である。ところで、この「lading」は何だろう。loading の打ち間違いに見える。
実は打ち間違いではなく、古い形が残ったものだ。語源辞典 Online Etymology Dictionary によると、lade は古英語の hladan(積む、山と盛る)にさかのぼり、lading は15世紀初めに「船に積む行為」の意味で現れ、1520年代には積まれた貨物そのものも指すようになった。同じ辞典は、lade の過去分詞 laden が20世紀に入って、一部の句を除き loaded に取って代わられたとも記している。古い動詞の形が、貿易実務の書類名に残っていることになる。
では、同じ二文字がほかの業界に現れたのはいつか。
建設の BL は、一般財団法人ベターリビングの優良住宅部品認定である。財団の前身である住宅部品開発センターが建設省の許可で設立されたのは1973年で、認定制度は翌1974年に建設大臣の認定制度として始まった。財団が制度を建設省から引き継いだのは1987年である。「Better Living」の頭文字をとったBLマーク証紙を部品に貼ると、BL部品であることが示され、瑕疵保証などを扱うBL保険が付く。ここにも、貼られた紙が品質の保証を運ぶ構造がある。ただし船荷証券は貨物の引換証で、証紙は認定の表示だ。紙の働きは同じではない。
ボーイズラブの BL が出版で使われたのは、さらに新しい。1991年に雑誌『イマージュ』がキャッチコピーに使ったのが確認できる初出とされ、1990年代には小説のレーベルが次々に生まれた。当初は「耽美」や「JUNE」に置き換わる語と受け取られた。
流体力学の BL は、境界層(boundary layer)である。物体の表面に沿って流れる流体のうち、粘性の影響を強く受ける薄い層で、1904年にプラントルが見いだした考え方だ。英語の講義資料や論文では「laminar BL」のように略記される。
IT の business logic がいつから「BL」と略されたかは、確かめられる資料が見つからなかった。
並べると、15世紀の船、1904年の流体の考え方、1974年の住宅部品、1991年の漫画と小説のジャンルになる。1904年は考え方が見いだされた年で、BLという略記がいつからあるのかは確かめられていない。住宅部品と漫画は、すでに別の意味で使われていた二文字を、あとから使ったことになる。建設の関係者が1974年に「BL」と書いたとき、その二文字を先に使っていた船の書類を知っていたかどうかは、わからない。
貿易会社の机には B/L の原本が置かれ、住宅設備の仕様書には「BL部品」と書かれ、書店には BL の棚があり、流体力学の講義資料には laminar BL の文字が並ぶ。どれも、スラッシュが入るか、前後の語が変わるかだけで、見分けがついている。