用語

ブレード

ブレード

7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

インフラ・クラウド・セキュリティ

ブレードサーバー(のサーバー基板)

blade server

データセンターで、共有の筐体(シャーシ)に抜き差しして並べる薄い板状のサーバーモジュール。1枚にCPUとメモリが載り、電源や冷却などは筐体側で共有するため、同じ面積に多くのサーバーを置ける。単に「ブレード」と呼ぶと、この1枚を指すことが多い。

障害が出たブレードを抜いて予備のブレードに差し替え、筐体の電源は落とさずに復旧した。

エネルギー

風車の羽根

blade (wind turbine rotor blade)

風力発電の風車で、風を受けて回転する羽根。風車のロータ(風からエネルギーを吸収して回転する部分)はブレード、ハブ、シャフトなどでできていて、ハブがブレードをロータ・シャフトに取り付ける。回転するブレードからの風切り音は、風車の騒音の一つに数えられる。

落雷でブレードの先端が損傷したため、風車を停止して点検に入った。

自動車・輸送機器

ワイパーブレード

wiper blade

ワイパーのうち、アームとゴムをつなぎ、ワイパーゴムを支えてガラス面に押し付ける骨組みの部分。ワイパーはアーム、ブレード、ゴムの3部品で構成される。ゴムだけ替える場合と、ブレードごと替える場合があり、ゴムと一体になっていて個別に替えられない製品もある。

ゴムが切れていたので、ブレードごと新品に交換した。

スポーツ・フィットネス

ブレード(卓球:ラケットの板、ゴルフ:ブレードアイアン)

blade (table tennis racket / golf iron)

競技によって指す物が異なる。卓球では、ラバーを貼る前のラケット本体の板を指す。ルール上、厚さの85%以上は天然の木材でなければならず、合板の枚数や特殊素材の有無で打球感が変わる。ゴルフでは、ヘッドが小さくソールの薄い伝統的な形のアイアン(マッスルバック)を指し、操作性が高いがミスに弱い。

ブレードは木材の5枚合板を選び、ラバーは裏ソフトを貼った。

半導体・電子部品

ダイシングブレード

dicing blade

半導体の製造で、ウェーハを個々のチップに切り分けるダイシング装置の、高速で回転するスピンドルに取り付ける円板状の薄い刃。ダイヤモンド砥粒をニッケルなどの結合材で固めた電鋳のほか、樹脂・金属の結合材のものがあり、被削材に応じて使い分ける。ノリタケのカタログでは厚み0.05〜0.4mmの製品が載っている。切断ではチッピング(欠け)やクラックが問題になる。

ブレードの摩耗でチッピングが増えたため、交換周期を短くした。

航空

回転翼(ローターブレード)

rotor blade

ヘリコプターのメインローターやテールローターを構成する、回転して揚力や推力を生む翼。1つのローターに通常2枚以上が付き、各ブレードのピッチ角(迎え角)を変えて機体を操縦する。全ブレードを同時に同量変えるのがコレクティブ、1回転ごとに周期的に変えるのがサイクリックである。

着陸後の点検で、メインローターのブレード前縁に小さな傷が見つかった。

土木・測量

排土板

blade (dozer blade)

ブルドーザーなど、トラクターの前面に取り付ける鋼製の湾曲した板。土砂や岩石の掘削、押土、敷きならしに使う。油圧シリンダーで姿勢を制御し、車体の進行方向に直角なストレート型、斜めのアングル型、溝掘り向きのチルト型などがある。モーターグレーダー(路面を平滑に整地する建設機械)の、上下・左右に動く作業板もブレードと呼ぶ。

造成地の盛土を、ブレードで薄く敷きならしてから転圧した。

刃を名乗って切らないブレードたち

ブレードは「刃」と訳される。ところが、この語が使われている現場を並べると、刃物らしく切るのはダイシングブレードと排土板くらいだった。風車のブレードは風を受け、ヘリコプターのローターブレードは回って揚力を生み、ワイパーのブレードはゴムを支え、卓球のブレードは球を弾く。ゴルフのブレードアイアンはボールを打ち、サーバーのブレードに至っては、刃のかけらもない一枚の基板である。八つの物のうち、切るのは二つ。切らないものが、なぜ刃を名乗っているのか。

英語の blade は、もともと刃ではない。古英語の blæd は「葉」の意味で、スペードやオールの平たい部分もこの語で呼ばれた(Etymonline)。ナイフや剣の刃の部分を指す意味が加わったのは14世紀の初めごろである(Etymonline)。順序が逆だったのである。葉のように平たい部分を指す語が先にあり、刃物の意味は後から広がった。

そう聞いて見直すと、サーバーを除く七つは葉の仲間として並ぶ。風車の羽根は、ハブに取り付けられて回る。卓球のブレードは、ラバーを貼る前の板。ゴルフのブレードアイアンは、ヘッドが小さく、ソールの薄い形をしている。ワイパーのブレードは、ガラスに沿ってゴムを支える骨組みだ。ダイシングブレードも、薄い円板である。ヘリコプターのローターブレードは、回って揚力を生む細長い翼だ。ブルドーザーの排土板は、車体の前に付けた鋼製の湾曲した板である。

サーバーはどうか。ブレードサーバーを売り出した初期の一社に、RLX Technologiesがある。2001年5月の記事によると、同社のSystem 324はすでに出荷されており、42Uの標準ラックに最大336枚のブレードを収められるという(同社の主張、Computerworld)。縦に差し込む薄い基板の形から付いた名前、と考えたくなる。ただ、命名の理由を書いた資料は見つけられていない。

ここで、ワイパーの交換の場面を思い出してほしい。「ゴムが切れていたので、ブレードごと新品に交換した」と言うとき、切れたのはゴムで、替えるのは骨組みのほうである。刃という訳語で聞くとちぐはぐだが、葉と、それを付け根ごと替える話だと思えば、不思議はない。