用語

ブランク

ブランク

5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

アウトドア・釣り・キャンプ

ブランク(ブランクス)

rod blank

ブランクスとは、後述のガイドやリールシートなどのパーツを除いた芯となる部分、まさに釣り竿本体のことを指します。

出典:BE-PAL(小学館)「いまさら聞けないという人必読!釣り竿各部の名称とその役割」

釣り竿からガイドやリールシートなどの付属パーツを除いた、竿の芯になる筒状の本体。主な素材はカーボンファイバーで、ほかにグラスファイバーや竹も使われ、竿の調子や感度を大きく左右する。自作や改造では、ブランクだけを買ってパーツを組み付ける。語源は blank(未加工の素材)だが、釣りでは複数形のブランクスと呼ぶことも多い。

ガイドを付け替えるついでに、ブランクの塗装も剥がして仕立て直した。

機械・生産

ブランク(素板)

blank

プレス加工で、金型にかける前の平らな板材、またはそこから打ち抜かれた素材のこと。深絞り加工では、1枚のブランクから継ぎ目のない容器を成形する。ブランクの形や大きさは完成品の展開形状から逆算して決めるため、材料の歩留まりに直結する。

深絞りで割れるので、ブランクの外形を少し小さくして試してみる。

半導体・電子部品

マスクブランク(フォトマスクブランクス)

mask blank

半導体の回路パターンを転写するフォトマスクの元になる基板。石英ガラスに遮光膜などの薄膜を付けた状態で、ここに電子線などで回路パターンを描き、現像・エッチングして完成品のマスクにする。ブランクの欠陥や平坦度がそのままマスクの品質を左右する。

次世代露光用のマスクブランクは、欠陥の検査基準がいっそう厳しくなる。

分析・計測

ブランク(空試験・ブランク値)

blank

分析で、測定対象の成分(分析対象物)を含まない状態で、試料と同じ試薬・溶媒・手順にかけたもの、またはその測定。試薬や器具、操作そのものから出るバックグラウンドの信号や汚染を知るために行い、得た値(ブランク値)を試料の測定値から差し引いて補正する。試薬だけの試薬ブランク、前処理を含む全工程を通す操作ブランクなどに分かれる。

微量分析なので、毎回ブランクを測ってから試料の値を補正している。

冠婚葬祭・生活サービス

ブランクキー(合鍵の元になる未加工の鍵)

key blank

ブランクとは空白という意味。これにカギ山を削ることで、自分の家だけの鍵ができるのです。

出典:ALSOK「鍵ものがたり vol.16」

合鍵づくりで、鍵山(鍵の刃の凹凸)をまだ削っていない鍵の素材。鍵屋は複製元の鍵の溝の位置・形・幅・深さを見て、店に並んだ数多くのブランクキーから合うものを選び、鍵山を削り込んで合鍵に仕上げる。ブランクキーは鍵メーカーではなく専門のメーカーが作り、流通が多く複製の注文が見込まれる鍵を選んで作られている。

この鍵はブランクが合うものを店に置いているので、その場で合鍵を作れます。

白を意味した語が、後工程の品質を握る素材になった

釣具店に、ガイドもリールシートも付いていない、筒だけの竿が並んでいることがある。ブランクス。自作や改造をする人向けに、これだけで売られている。

未完成品なのに、値段がつく。しかも竿の調子や感度は、この筒の段階で大きく決まるという。何も付いていない状態が、なぜ商品として成り立つのだろうか。

同じ語は、プレス工場では平らな板を指す。金型にかける前の板材、あるいはそこから打ち抜かれた素材のことだ。半導体の分野には、フォトマスクの元になる基板がある。石英ガラスに遮光膜を付けただけの状態で、マスクブランクと呼ぶ。鍵屋の棚には、鍵山をまだ削っていない鍵、ブランクキーが並ぶ。四つとも英語の blank で、四つとも「手を加える前」の素材である。

blank はもともと「白い」という意味だった。英語では13世紀の例があり、古フランス語の blanc(白)から入ったとされる。のちに「何も書かれていない」へ広がり、辞書には「未加工品」の語義も並ぶ。白から、何も書かれていない状態へ、そして加工前の素材へ。そうたどれるのだろう、とは思う。ただ、これは語義の並びから私が組んだ筋である。「白い素材」がまず呼ばれた、という記録を確かめたわけではない。

鍵の側は、もっと素直に言う。ALSOK の「鍵ものがたり」は「ブランクとは空白という意味。これにカギ山を削ることで、自分の家だけの鍵ができるのです。」と書いている。

実物は、少なくとも白くない。釣り竿の主な素材はカーボンファイバーで、プレスの板は金属、マスクの基板は石英ガラスだ。語源の白は、色としては残らなかった。「まだ何も起きていない」という状態だけが残った。

ところが、その「何も起きていない」素材が、後の出来を先に決めてしまう。

プレスでは、ブランクの外形を完成品の展開形状から逆算して決める。大きく取れば材料が余り、歩留まりが落ちる。小さく取れば深絞りで割れることがある。割れたら外形を少し小さくして試す、という調整が現場にはある。マスクブランクでは、欠陥の少なさと平坦度が、そのままマスクの品質になる。あとから回路を描いても、基板の欠陥は消えない。竿も同じで、ガイドをどれだけ丁寧に付けても、筒の調子は変わらない。合鍵では、鍵屋が複製元の溝の位置・形・幅・深さを見て、数多くのブランクキーから合うものを選ぶ。選ぶのが先で、削るのは後になる。

加工の向きはそれぞれ違う。竿は部品を足していく。プレスは板を変形させ、必要なら打ち抜く。マスクは膜に回路を描いて、現像とエッチングで削る。合鍵は鍵山を削る。足すのも、曲げるのも、削るのも、ブランクの出来を引き継ぐ点では変わらない。

分析の現場には、素材ではないブランクがある。測りたい成分を入れず、試料と同じ試薬・同じ手順にかけたもの、またはその測定だ。空試験とも呼ぶ。何も入れていないのだから、値はゼロになりそうに思える。ところが、試薬や器具、操作そのものから出る信号や汚染が拾われる。この値を試料の測定値から差し引いて補正する。空白に見えるものが、手順の側に最初から入っていたものを教えてくれる。

ブランクは白紙に見えて、白紙ではない。後からいくら手を加えても取り返せない部分が、すでに入っている。

ガイドを付ける前の筒を前に、買う人はもう竿の性格を選んでいる。