用語

ブーム

ブーム

6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

建設・建築

クレーンのブーム

boom

移動式クレーンや建設機械で、荷を吊る先端を支える腕の部分。起伏(腕を上げ下げする動き)の角度と伸ばした長さに応じて、負荷させられる最大の荷重である定格荷重(つり上げ能力)が決まる。

ブームを全伸長にすると定格荷重が下がるので、吊り荷の重さを先に確認してください。

音響・レコーディング

ブームスタンド・ブームアーム

boom arm

マイクを横や斜めに張り出して支えるマイクスタンドの腕、またはその形式のスタンド。デスクの縁に取り付けて使うものは、配信やポッドキャストの卓上用(ブームアーム)として使われる。

配信用にデスクの縁へブームアームを付けて、マイクを口元へ寄せた。

映画・映像・アニメ

ブーム(ブームポール)・ブームマイク

boom pole

ブームは、画面に映り込まない位置を保ちながら、マイクを被写体の近くに配置できる、一般的に使用される音響機器です。

出典:RODE(ブームポールの使い方とベストプラクティス)

撮影現場でマイクを先端に付け、画面に映らない出演者の頭上から差し出して収音するための長い竿。台詞を雑音の少ない状態で録るために、画角の外でマイクを演者へ近づけ続ける。

このカットは広角で撮るから、ブームがフレームに入らないよう上から差し込んでください。

スポーツ・フィットネス

ブーム(ヨット:帆の下辺を支える棒)

boom

ヨットやディンギーで、メインセイル(主帆)の下辺を支え、広げる水平の棒。ジャイブ(風下へ船を回し、片側に開いていた帆を反対側へ開く方向転換)では、帆を反対側へ移すのに合わせて動く。

ジャイブするときはブームが反対側へ移るので、頭を低くしてください。

自然・環境

ブーム(オイルフェンス)

oil boom

石油類などが事故等によって河川、湖沼、海などの水面上に漏洩・流出した場合にその拡散を防止する目的で水域に展張する浮体。ブーム(boom)とも呼ばれる。

出典:Wikipedia日本語版『オイルフェンス』

タンカーの事故などで水面に油が流れ出たとき、油を囲んで外へ広がらないようにするために張りめぐらす浮き。オイルフェンスとも呼び、英語の boom からブームとも呼ぶ。浮力の部分にウレタンや発泡スチロールを使う固形式、空気や窒素を入れてふくらませる充気式などがある。

港の入口にブームを展張して、流れ出た油が外洋へ広がらないよう囲い込んだ。

防衛・安全保障

フライングブーム(空中給油用の給油管)

flying boom

空中給油機の機体後部から伸ばす給油用の管。操作員が管を動かして、給油を受ける航空機の受油口に差し込む。航空自衛隊のKC-767は現状この方式だけに対応し、空自の戦闘機もこの方式の受油装置を備える。F-35Bなどが使う、ホースの先のかご状の部品に受油機側の管を差し込むプローブ・アンド・ドローグ方式とは別の方式。

KC-767のブーム操作員は、機体底部のカメラが捉えた映像を見ながら給油管を動かす。

張り出す棒は、みなブームと呼ばれる

ヨットがジャイブすると、帆とともにブームが反対舷へ移る。乗っている人は頭を低くする。同じ「ブーム」という名前の棒が、撮影現場では出演者の頭上に差し出され、配信用のデスクではマイクを口元へ寄せる。クレーンの腕も、同じ名前で呼ばれる。

帆の下辺を支える棒と、吊り荷を支える腕と、マイクを付けた竿。使う人も目的もまるで違うのに、なぜ同じ名前なのか。

答えは、語の出どころにある。英語の boom は、オランダ語の boom(木、梁、棒)から来たとされる。Merriam-Webster は、帆を張る棒の意味で1663年の用例を挙げている。帆の下辺を張る長い棒を指したのが、古い用法のひとつだ。

もとの意味は「木」なので、特別な形を指しているわけではない。長い一本の棒で、一端を固定し、先を横へ張り出す。その性質さえ満たせば、別の道具にも使える。

マイクやクレーンの意味がいつから英語にあるのか、日付までは確認できなかった。ただ、英語の辞書は水平に張り出した部材としてクレーンの腕もマイクを支える腕も同じ項目に載せている。

三つの現場を並べると、重なるところがもう一つある。棒の先に載るものが、固定された根元より遠くまで届く。ヨットでは帆の下辺、クレーンでは吊り荷、撮影ではマイクだ。しかも棒は人の頭の高さか、その上を通る。ジャイブで頭を下げる理由と、撮影で「ブームがフレームに入らないよう上から差し込んで」と指示する理由は、どちらも棒が頭上を通るからだ。

ただし、棒の動かし方は同じではない。ヨットのブームは帆とともに風を受けて動く。クレーンは腕の起伏の角度と伸ばした長さに応じて、定格荷重が決まる。撮影では、竿を持つ人が演者に合わせて動かし続ける。名前が同じでも、動かしているのは風と機械と人の腕だ。

空の上にもブームがある。空中給油機の後部から伸ばす給油用の管で、操作員が動かして、給油を受ける航空機の受油口に差し込む。航空自衛隊のKC-767は、現状この方式だけに対応している。根元を固定して先を張り出す、という棒の性質はここでも同じで、先が届く相手は、飛んでいる航空機だ。

水の上のブームは、棒ではない。タンカーの事故などで油が流れ出たとき、油を囲んで広がらないように張りめぐらす浮きを、オイルフェンスとも、ブームとも呼ぶ。浮力の部分にウレタンや発泡スチロールを使うものと、空気や窒素でふくらませるものがある。張り出す棒という性質はないのに同じ名前で呼ばれる理由は、確かめられていない。Merriam-Webster は、丸太をつないだ浮きの障壁も boom の意味に挙げている。木を意味する語だったことと、つながるのかもしれない。

「ブームが起きる」のブームは、また別の語だ。Merriam-Webster では、勢いや轟音を表す boom は、オランダ語由来の棒の boom とは別の項目として扱われている。

ヨットのコックピットで、ジャイブの前に「ブーム行きます」と声がかかる。頭を下げたまま見上げると、帆の下辺を支える棒が、マイクの竿やクレーンの腕と同じ名前を持っている。