略語

BP

ビーピー

7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

医療・医学

血圧

blood pressure

血管の壁にかかる血液の圧力で、体温・脈拍・呼吸数と並ぶ基本のバイタルサイン(生命徴候)の一つ。カルテや申し送り、看護記録では「BP 120/80」のように、収縮期(上)と拡張期(下)の値を mmHg 単位で続けて書く。

術後はBPが下がりやすいので、30分ごとに測って記録してください。

生命科学・バイオ

塩基対

base pair

DNA の二重らせんで向かい合う2つの塩基(A-T、G-C)の組。DNA の長さを数える単位としても使われ、遺伝子や PCR 産物、ゲノムの大きさを「500 bp」「3 Gb(ギガ塩基対)」のように小文字の bp、kb、Mb で表す。

電気泳動で、約800 bpのバンドが出ていることを確認した。

製薬・創薬

英国薬局方

British Pharmacopoeia

英国の医薬品の品質基準を集めた公定書で、毎年改訂される。医薬品の原薬・製剤の規格試験法の根拠として、英国だけでなく多くの国の製造・品質管理の現場で参照される。日本の日本薬局方(JP)、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(Ph. Eur.)と並べて語られる。

この原薬は、BP規格に適合する品質証明書が必要です。

証券・投資

ベーシスポイント

basis point

金利の表示単位で、0.01%のこと。

出典:金融・証券用語解説 [bp](大和証券)

金利や債券利回りの小さな変動を表す単位で、1bpは0.01%(1%の100分の1)。金利が2.50%から2.75%に上がれば25bpの上昇と言い、金融政策の利上げ幅や信用スプレッド、運用手数料の差を伝える場面で使う。

日銀の会合後、10年債利回りは5bp上昇した。

IT・システム開発

ビジネスパートナー(協力会社)

business partner

SES(技術者の技術力を提供する契約形態)の事業などで、自社だけでは手が届かない案件や技術者を補ってくれる協力会社のこと。提案できる人材や案件を持つ会社どうしが互いに紹介し合い、案件と人材の橋渡し役として営業活動に欠かせない存在になる。

この案件は自社の要員が足りないので、BPにも提案できる人を探してもらおう。

スポーツ・フィットネス

打撃練習(野球:バッティングプラクティス)

batting practice

野球で、打撃投手やコーチなどが投げる球を打って試合に備える練習。試合の1〜2時間ほど前にフィールドで行うのが通例で、日本でも実戦形式の打撃練習を「ライブBP」と呼ぶなど、略語のまま使われる。

試合前のBPで、主力打者が柵越えを連発した。

ゲーム・eスポーツ

バトルパス/ブループリント

Battle Pass / Blueprint

ゲームの運営と開発で別々の意味に使う。運営・プレイヤー側ではバトルパス(BP)で、シーズン中にタスクをこなしてティアを上げると報酬が得られる仕組みを指し、無料版と有料版がある。開発側では Unreal Engine のブループリント(Blueprint)の略で、ノードをつないでゲームの処理を組むビジュアルスクリプトを指し、そのアセット名には接頭辞「BP_」を付ける。

今季のBPは無料枠だけ進めておこう。/新キャラの挙動はBPで組んであるので、明日エンジニアに確認してもらおう。

金利の1bpは、ゲノムでは約30万bp

債券市場の記事に「利回りが5bp上昇」とあり、研究室のゲル写真の脇には「800 bp」とある。どちらも小文字の bp で、どちらも、全体の中のごく小さな一片を数えている。偶然にしては出来すぎている、と思った。

ただ、その一片の大きさは桁がまるで違う。ベーシスポイントは1%の100分の1で、1bp=0.01%。2.50%と2.51%のあいだが1bpである。一方、塩基対のほうは、ヒトゲノム全体でおよそ30億bpあるとされる。1bpは30億分の1だ。

それなら、二つの bp を同じ物差しに載せたらどうなるか。ゲノムの1万分の1、つまり金利でいう「1bp分」は、約30万塩基対になる。金融でいちばん小さい刻みが、ゲノムでは30万塩基対もある。電気泳動で見る800 bpのバンドは、その約375分の1にすぎない。

こうして並べると、他の bp も同じ側に入ってくる。英国薬局方(British Pharmacopoeia)の初版は1864年で、ロンドン、エディンバラ、ダブリンにそれぞれあった薬局方を一つにまとめたものだった。バラバラだった品質の基準を揃える本であり、これも物差しである。血圧の BP も、体温・脈拍・呼吸数と並ぶ基本の測定値で、mmHg という単位がついて初めて意味を持つ。

では、すべてが物差しなのかといえば、そうではない。SES の現場で「BPに声をかけて」と言えばビジネスパートナー(協力会社)という人や会社のことだし、野球の試合前に行う BP は打撃練習という行為だ。数値も基準も出てこない。

ゲームの BP はさらにややこしい。同じ二文字が、一つの業界の中で二つに割れている。運営やプレイヤーの側で BP といえばバトルパスで、シーズン中にタスクをこなしてティアを上げると報酬が出る仕組みのこと。ティアという段階はあるが、何かを測るための目盛りではなく、進めば何かがもらえる階段である。開発の側では、Unreal Engine のブループリント、つまりノードをつないでゲームの処理を組む設計図を指す。測るものではなく、作るものだ。

結局、bp が何を指すのかを決めているのは、綴りではなく隣に立つ言葉である。「5bp」の後ろには%が、「800 bp」の前にはバンドが、「120/80」の後ろには mmHg が控えている。ゲームなら、「今季の BP は無料枠だけ進めておこう」と言う人の隣にはシーズンがあり、「新キャラの挙動は BP で組んである」と言う人の隣にはアセット名の接頭辞「BP_」がある。冒頭の二つの記事を入れ替えて読むと、「800bp上昇」は金利が8%動く大事件になり、「5 bpのバンド」は、DNA が5塩基対しかない、ほとんど何も写っていない写真になる。