BT
ビーティー
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
ブルートゥース(近距離無線通信)
Bluetooth
機器どうしを短い距離で無線接続する規格。免許不要の2.4GHz帯(ISM帯)を使い、音声のストリーミングなどに使う Classic(BR/EDR)と、きわめて低い消費電力で動く LE の2種類の無線がある。イヤホンやキーボード、スマートフォンの接続に広く使われ、製品名や会話では「BT」と略されることがある。
このイヤホンは BT 接続なので、スマホ側の BT をオンにしてペアリングしてください。
Bt(バチルス・チューリンゲンシス)、Bt作物
Bacillus thuringiensis
特定の害虫にだけ毒性を示す土壌細菌バチルス・チューリンゲンシスの略称。この菌を散布する Bt 剤(微生物農薬)として使われてきたほか、殺虫タンパク質の遺伝子を組み込み、作物自身に害虫を防がせる Bt 作物(トウモロコシ・ワタ・ジャガイモなど)にも使われる。後者は「Bt コーン」「Bt ワタ」のように呼ばれる。
この畑のトウモロコシは Bt 品種なので、イモムシ類の食害が少ない。
体温
Body Temperature
診療記録や看護記録で体温を書くときの略記。血圧(BP)、心拍数(HR)、呼吸数(RR)とそろえて、基本のバイタルサイン(生命徴候)を並べる欄に使われる。単位は℃。
朝のバイタルは BT 36.8、BP 118/72 でした。
ビスマレイミド・トリアジン樹脂(BTレジン)
bismaleimide triazine resin
ビスマレイミドとトリアジンを主原料とする熱硬化性樹脂で、「BTレジン」とも呼ばれる。三菱ガス化学が1976年に開発し、耐熱性に優れるため、ガラスクロスに含浸して銅箔を張った積層板(BT積層板)として半導体パッケージ基板に使われる。
このパッケージ基板の材料は BT で、ハロゲンフリーの低熱膨張タイプだ。
三つは頭文字、一つは王のあだ名
イヤホンの箱には「BT対応」と書いてあり、種苗のカタログには「Bt」と載っている。同じ二文字なのに、農業だけ t が小文字なのはなぜか。
答えは学名にある。農業の Bt は Bacillus thuringiensis の略で、属名の B と、種小名の t を取ったものだ。学名では種小名を小文字で書くので、略しても t は小文字のまま残る。米国環境保護庁のページによれば、土壌に自然にいる細菌で、散布すると特定の害虫に毒性を示す。同じページには、その毒素をつくる遺伝子をトウモロコシ・ワタ・ジャガイモなどに組み込んだ作物が、1995年に米国で最初に登録されたとある。
電子部品の BT も、二語の頭文字だ。ビスマレイミド(Bismaleimide)とトリアジン(Triazine)という、樹脂の二つの主原料の名前から取っている。三菱ガス化学によれば、開発は1976年。1985年には、樹脂材料として初めて半導体パッケージ用の積層板に採用された。 医療の BT は、Body と Temperature。看護記録では、血圧の BP、心拍数の HR と並べて「BT 36.8」と書く。
三つとも、頭文字を並べた略語である。農業は菌の学名から、電子部品は原料の名前から、医療は英語の普通名詞から。
Bluetooth だけは、この型に収まらない。BT は、Bluetooth という名前を縮めたものだ。その名は、1996年に Intel・Ericsson・Nokia が近距離無線の標準化を話し合った会議で、Intel のジム・カーダック氏が暫定のコードネームとして出したものだと、Bluetooth SIG は書いている。由来は、デンマークとノルウェーを統一したハラール・ブルートゥース王。あだ名は、死んだ歯が青灰色だったことによる。
仮の名のはずだった。正式名の候補だった RadioWire は商標調査が間に合わず、本命だった PAN(Personal Area Networking)は、ネット上の検索結果がすでに数万件あった。そのまま残った名前が、いまロゴにもなっている。二つのルーン文字、Hagall と Bjarkan を重ねたもので、王のイニシャルだという。
年だけ並べると、BTレジンが1976年、Bt作物の登録が1995年、Bluetooth の名が出たのが1996年。遺伝子組換えの作物が初めて登録された翌年に、無線の名前が決まったことになる。
イヤホンの箱の「BT」は、王のあだ名を縮めた二文字である。種苗カタログの「Bt」は、菌の学名の頭文字にすぎない。