バス
バス
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
バス(信号線)
bus
CPUとメモリー、I/Oの間で信号をやり取りする信号線(バスライン)。データをやり取りするデータバス、メモリーやI/Oの場所を指定するアドレスバス、読み出しか書き込みかを指示するコントロールバスの3種類があり、連携して働く。
このメモリーとは16ビット幅のデータバスでつないでいます。
バス(ミキサーの信号経路)
bus (buss)
ミキサーやDAWで、複数のチャンネルの信号を1つにまとめる経路。リードボーカルとコーラスのように関連するトラックを1つのバスにまとめ、1台のコンプレッサーなどで一括して処理できる。サブグループにまとめた信号は、最終的にメインのミックスバスへ送る。
ドラムの各トラックをドラムバスにまとめて、コンプレッサーを一括でかけた。
母線(バスバー)
bus / busbar
発電所や変電所で、電源から全電流を受け、外線に供給する幹線。
発電所や変電所で、電源から全電流を受け、外線に供給する幹線となる導体。変電所内では、入ってくる電力線や変圧器が配線を介してここに接続され、電力を分配する主回路になる。「母線」のほか、英語busbarから「バスバー」とも呼ぶ。
点検のため、母線を停止して区分ごとに切り離す。
バス(男声の最低音域)
bass
声楽で男声の最も低い音域、またはその声域の歌手。混声合唱ではソプラノ・アルト・テノール・バスの4声部の最低声部を担う。語源は「低い」を意味するラテン語の bassus で、電子回路のbusとは別の語。
合唱のバスが足りないので、バリトンの人にも入ってもらった。
バス(ブラックバス)
bass (black bass)
釣りでは、北米大陸原産のブラックバスを釣る釣りを「バス釣り」「バスフィッシング」と呼ぶ。ルアーを使う釣りとして知られる。語源は魚のbassで、電子回路のbusとは別の語。
週末は湖にバス釣りに行く。
乗合馬車の名が、変電所の導体になった
変電所の図面には、太い横線が一本引いてあり、電力線も変圧器もそこにつながる。これを電力の現場では「母線」と呼び、英語からの「バスバー」とも呼ぶ。
バスバーと聞いて、道を走るバスを思い浮かべる人は少ないだろう。ところが英語の辞書は、この二つを同じ語に結びつけている。Dictionary.com は、乗り物の bus を「omnibus の短縮」とし、電気の意味の bus は「omnibus bar の短縮」と記す。bus が乗り物として記録されるのは1825〜35年ごろだという。
omnibus はラテン語で「すべての人のために」を意味する形で、Etymonline によれば、フランス語の乗合馬車の名として1819年か20年にパリで導入され、ロンドンでは1829年から使われた。誰でも乗れる共通の車の名が、後半を落として bus になった。
では、その名が電気に渡ったのはなぜか。辞書が示すのは「omnibus bar の短縮」というところまでで、命名の事情は書かれていない。ここからは推測になる。母線は、電源から受けた電流を外線へ供給する、共通の導体である。乗り手を選ばない車と、つなぐ相手を選ばない棒。この見立ては、おそらく外れていない。
電子回路の bus はどうか。CPUとメモリーを結ぶデータバスは、複数の部品が一本の配線を共用する。形は母線とそっくりだが、コンピューターの bus が電気の母線から来たのかどうかは、調べた範囲では確かめられなかった。
残る二つのバスは、つづりからして別の語だ。
合唱の最低声部の「バス」は bass で、「低い」を意味するラテン語 bassus に遡る。釣りのバスも魚の bass で、omnibus とは縁がない。bus と bass は、カタカナに写すと同じ「バス」の二文字になった。
録音の現場には、この二つが同じ画面に並ぶ。ミキサーのバスは、複数のトラックを一本にまとめる経路だ。たとえば、ベースの録音をほかの楽器と一緒にバスへ送る作業を考えてみてほしい。「ベース」と「バス」が一つの文に出てくるが、前者は低音の楽器、後者は信号の通り道で、語の出どころが違う。
変電所の太い横線に戻る。あの一本は、乗合馬車と同じ名を持っている。点検のために「母線を停止する」と言うとき、止まるのは、すべての回線を乗せていた車のほうなのだ。