CE
シーイー
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
CEマーク(CEマーキング)
Conformité Européenne
製品がEEA(欧州経済領域)の安全・健康・環境の要件を満たしていることを、製造者が自らの責任で表明する表示。医療機器ではEU規則2017/745(MDR)に基づく適合性評価を経て表示し、通知機関(第三者の認証機関)が関わることもある。欧州で販売するための前提で、品質を保証するマークではない。
欧州向けに出荷するため、新型の血圧計でCEマークの取得を進めている。
臨床工学技士
Clinical Engineer
医師の指示のもとで、人工呼吸器や人工心肺、血液透析装置などの生命維持管理装置を操作し、保守点検する医療職(国家資格)。病院では医師・看護師と連携し、手術室、集中治療室、心臓カテーテル検査室などで機器を扱う。工学の知識を持つ医療従事者として位置づけられている。
透析室のCEが、始業前に装置の点検を済ませた。
カスタマーエンジニア
Customer Engineer
顧客先に常駐または訪問し、IT機器やシステムの設置、導入時の初期設定、保守・点検、障害対応を担う技術職。開発ではなく運用・保守側の職種で、プリンターなどの周辺機器やATMのような大型機械の保守を担う職場もある。企業によって業務範囲は異なる。
サーバーが止まったので、CEに現地対応を依頼した。
キャピラリー電気泳動
capillary electrophoresis
内径100μm以下の細い管(キャピラリー)に緩衝液を満たし、両端に高電圧をかけて、試料成分を電荷・大きさ・形の違いによる移動速度の差で分ける分析法。吸光度などで検出し、医薬品、核酸、タンパク質の分析に使われる。日本薬局方の一般試験法にも収載されている。
不純物の確認のため、CEで分離条件を検討した。
チップイネーブル
Chip Enable
半導体メモリなどのICで、そのチップを動作させるかどうかを切り替える制御入力ピン。LOWで有効(アクティブロー)のものが多く、無効にすると出力がハイインピーダンスになって読み書きできなくなり、消費電力を抑える待機状態に入る製品もある。複数のチップをつないでメモリを増やすときの選択にも使う。
SRAMのCEをLOWにしてから、アドレスを与えて読み出した。
五つのCEのうち、機械を動かす四つ
病院の透析室に、欧州製の装置が一台ある。銘板にはCEマークがある。始業前にその装置を点検するのは、現場でCEと呼ばれる臨床工学技士だ。
同じ二文字が、機械と、機械を見る人の両方に付いている。語源でつながっているのだろうか。
つながっていない。マークのCEはフランス語の Conformité Européenne、技士のCEは Clinical Engineer で、頭文字が重なっただけである。重なりはこの二つで終わらない。ITの現場では Customer Engineer が顧客先でサーバーやプリンターの設置と保守にあたる。半導体メモリには Chip Enable というピンがある。分析室には capillary electrophoresis、細い管の両端に高電圧をかけて成分を分ける手法がある。すべてCEだ。
五つ並べると、四つまでが「機械が動いてよいか、動き続けるか」に関わっている。残る一つ、キャピラリー電気泳動だけは機械の話ではなく、試料の成分を移動速度の差で分ける方法である。
では四つは、それぞれいつ動いてよいかを決めているのか。
CEマークは、製造者が出荷の前に、EEA(欧州経済領域)の安全・健康・環境の要件を満たしていると自分の責任で表明する印だ。欧州で売るための前提であって、品質を保証するマークではない。判断は一度きりで、銘板に刻まれて残る。
臨床工学技士は、医師の指示のもとで人工呼吸器や人工心肺、血液透析装置を操作し、保守点検する国家資格の職である。判断は毎日、始業前にやってくる。
カスタマーエンジニアの判断は、サーバーが止まったときに呼ばれる。設置や初期設定のほかに、障害対応が仕事に含まれるからだ。
そしてチップイネーブルは、判断の間隔がいちばん短い。多くのICでLOWのときだけチップが有効になり、無効にすれば出力がハイインピーダンスになって読み書きできなくなる。メモリを読むたびに、このピンが「いま動いてよい」を決めている。
出荷前に一度、毎朝、止まったとき、アクセスのたびに。四つのCEは、同じ「動いてよいか」を、まるで違う時間の刻みで受け持っている。
透析室に戻ると、銘板のCEマークは出荷前の一度の申告で、点検するCEは今朝の目である。もしその装置の基板にSRAMが載っているなら、そこではピンのCEが、いまこの瞬間も応答の可否を切り替えているはずだ。