用語

チップ

チップ

8つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

半導体・電子部品

半導体チップ

chip

集積回路を作りつけた半導体基板の小片。

出典:デジタル大辞泉(小学館)/コトバンク

ウエハー上に作り込んだ多数の回路を、ダイシングで一つずつ切り分けた小片。ダイ(die)とも呼ばれ、このあとリードフレームなどへの固定(ダイボンディング)やワイヤボンディングといった後工程を経てパッケージに収められる。

ダイシングが終わったチップをピックアップして、リードフレームにマウントする。

遊技・公営競技・盤上遊戯

賭け札(ゲームチップ)

chip

カジノのルーレットやポーカーで、現金をそのまま賭ける代わりにテーブルで使う小さな札。最初に現金と交換し、勝ち負けの精算もこの札のやり取りで行う。材質はプラスチックなどが使われる。

ポーカーのテーブルに着く前に、現金をチップに替えた。

農業・畜産・林業

木材チップ

wood chip

製紙用(*120)には主に切削チップが、チップボイラー等の燃料には主に破砕チップが、木質ボードの原料には両方が用いられる。

出典:林野庁『森林・林業白書』平成29年度 第4章

木材を切削または破砕して作る小片。原木や工場残材から作る切削チップは主に製紙用、解体材や廃パレットから作る破砕チップは主にボイラー燃料用で、木質ボードには両方が使われる。林業・木材産業では、原料の違いでこの二種類を区別して扱う。

間伐材を切削チップにして、製紙工場へ出荷する。

機械・生産

切削チップ(スローアウェイチップ)

insert / throw-away tip

旋盤やフライス盤などの切削工具で、専用のホルダーに固定して使う刃先部品。刃先交換チップとも呼ぶ。材質はサーメットや多結晶ダイヤモンド焼結体などから被削材に合わせて選び、使ううちに刃先が摩耗するため、多くは使い捨てで交換する。

刃先が欠けたので、ホルダーのチップを新しいものに交換した。

スポーツ・フィットネス

チップ(ゴルフ:チップショット)

chip shot

ゴルフで、グリーン周りからボールを短く打ち出し、着地後の転がりでピンに寄せるアプローチ。高く上げて止めるピッチショットと対比される。

ラフからグリーンエッジまでが近いので、チップで転がして寄せた。

生命科学・バイオ

ピペットチップ

pipette tip

マイクロピペットの先端に取り付ける、細い管状の消耗品。少量の液体を正確に分注するための構成要素で、実験室では単に「チップ」と呼ぶことが多い。試料どうしの持ち込み(キャリーオーバー)を抑える低残留型や、ピペット内部への汚染を防ぐフィルター付きの製品もある。

サンプルを替えるたびに、ピペットのチップを新しいものに付け替えた。

ペット・動物

マイクロチップ(犬猫の個体識別)

microchip

犬や猫の皮下に装着する、直径1.4mm・長さ8.2mm程度の円筒形の電子標識器具。15桁の番号が記録され、専用の読取器で読み取って登録された飼い主の情報と照合する。2022年6月1日から、ブリーダーやペットショップなどで販売される犬猫への装着と登録が義務になった。

迎えた子犬にはチップが入っていたので、飼い主の変更登録を済ませた。

美容・ウェルネス

ネイルチップ(付け爪)

nail tip

自分の爪の上に貼って使う付け爪。両面テープかネイルグルー(接着剤)で装着し、付け外しが簡単なのが特徴。貼る前に、爪の根元のカーブや横幅に合わせてファイル(やすり)で削って形を整える。

結婚式の日だけ、ネイルチップで指先を華やかにした。

「チップを替えた」が指すもの、八つの現場で違う

実験室で「チップを替えて」と言われたら、扱うサンプルが変わったということだ。機械加工の現場で「チップを替えた」と言えば、刃先が欠けたか、すり減ったということになる。どちらも使い捨ての部品なのに、替える理由が違う。

ピペットチップは、マイクロピペットの先端に付ける細い管である。Thermo Fisher Scientific のブログによると、試料どうしの持ち込み(キャリーオーバー)を抑える低残留型や、ピペット内部への汚染を防ぐフィルター付きの製品がある。サンプルを替えるたびに付け替えるのは、そのためだ。切削チップは旋盤やフライス盤のホルダーに固定する刃先部品で、MonotaRO のカテゴリページでは「刃先交換チップ」の名で並び、使ううちに刃先が摩耗するので多くは使い捨てで交換する。試料が変わるから替えるものと、刃が減るから替えるものである。

ネイルチップの替えどきは、また別にある。爪の上に両面テープかネイルグルーで貼る付け爪で、付け外しが簡単なのが特徴だと All About は書く。貼る前に爪の根元のカーブや横幅に合わせて、ファイルで削る。替えるのは、その日の用事に合わせたいときだ。

替えないチップもある。半導体のチップは、ウエハーからダイシングで切り分けられ、リードフレームなどに固定されたあとパッケージに収められる。Monoist の解説にあるとおり、ここから先は後工程で、製品の中身として組み込まれていく。犬や猫の皮下に入れるマイクロチップは、直径1.4mm・長さ8.2mm程度の円筒形で、15桁の番号を専用の読取器で読み、登録された飼い主の情報と照合する。2022年6月1日から、ブリーダーやペットショップなどで販売される犬猫には装着と登録が義務になった。

カジノの賭け札は、最初に現金と交換し、勝ち負けの精算もその札のやり取りで行う。ゴルフのチップショットは、グリーン周りから短く打ち出して、転がしてピンに寄せる打ち方で、部品ですらない。

ここで、冒頭の「切削」に戻る。林野庁の『森林・林業白書』(平成29年度)には、「製紙用には主に切削チップが、チップボイラー等の燃料には主に破砕チップが」用いられるとある。木材を切削して作る小片も、工具の刃先部品も、「切削チップ」と呼ばれる。前者は切られてできた側、後者は切る側である。ただし、この二つの呼び名に語の由来のつながりがあるのかは、確かめられていない。

迎えた子犬には、替えなくてよいチップがすでに入っている。飼い主が変わったときに手続きで書き換えるのは、チップではなく、登録された情報のほうだ。