略語

CI

シーアイ

7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

印刷・DTP・デザイン

コーポレート・アイデンティティ

Corporate Identity

企業の理念や個性を、ロゴ・シンボルマーク・色・書体などで一貫して見せるための考え方と、その制作作業。理念を言葉にするMI、行動指針のBI、視覚表現のVIの三つで構成され、デザイン・印刷の現場ではVIの設計と運用(ロゴの使用規定、名刺・封筒・パンフレットへの展開)を指すことが多い。

新しいロゴに合わせて、CIマニュアルどおりに名刺と封筒の版を作り直した。

IT・システム開発

継続的インテグレーション

Continuous Integration

開発者がコードの変更を共有リポジトリに頻繁にマージし、そのたびに自動でビルドとテストを走らせる開発手法。不具合やマージの衝突を早く見つけ、動くソフトを素早く出荷できる状態に保つのが狙い。リリースまで自動化するCD(継続的デリバリー)と合わせて「CI/CD」と呼ばれる。

プルリクエストを出すとCIが走り、テストが通らないとマージできない設定にしている。

学術・研究

信頼区間

Confidence Interval

標本から母集団の値(平均や比率など)を推定するときの不確実さを、範囲で表したもの。95%信頼区間は、同じ手順で標本を取り直して区間を作ることを繰り返すと、その95%が真の値を含むという意味で、「この区間に真の値が95%の確率である」という意味ではない。標本が大きいほど区間は狭くなる。

平均値の差は1.2で、95%CIは0.3〜2.1だった。

分析・計測

化学イオン化

Chemical Ionization

質量分析でメタンやアンモニアなどの反応ガスをイオン化し、そのイオンと試料分子を気相で反応させて試料をイオン化する方法。イオン源は電子イオン化(EI)より高い圧力で動かす。余分なエネルギーが少なく断片化しにくいので、分子量を示す(M+H)+などのイオンが得られやすい。1966年にMunsonとFieldが導入した。

EIでは分子イオンが出なかったので、CIで測定し直した。

医療・医学

心係数

Cardiac Index

心拍出量(1分間に心臓が送り出す血液量)を体表面積で割った値で、単位はL/min/m²。体格の違いを補正して心臓のはたらきを比べるために使う。健康な成人ではおよそ2.6〜4.2とされ、心筋梗塞や心不全による心原性ショックのように心臓のポンプ機能が落ちると低下する。

スワン・ガンツカテーテルの測定でCIが1.8まで下がり、強心薬を増量した。

マーケティング・CRM

競合情報(コンペティティブ・インテリジェンス)

Competitive Intelligence

競合他社・顧客・市場動向の情報を、公開情報から合法的に集めて分析し、戦略や施策に生かす活動。競合の広告やWebサイト、価格、製品、口コミなどを継続的に観察し、価格設定やキャンペーン、製品改善の判断材料にする。

競合のキャンペーン内容をCIとして毎月まとめ、営業会議で共有している。

素材・化学

カラーインデックス

Colour Index

染料・顔料などの色材を、用途や色相にもとづくC.I.名称と、化学構造にもとづく構造番号で整理した国際的な分類。英国の染料染色学会(SDC)と米国繊維化学技術・染色技術協会(AATCC)が共同で発行している。色材メーカーや塗料・インキの現場では「C.I. Pigment Blue 15:1」のように製品名が違っても同じ色材だと特定する共通の呼び名として使う。

仕様書には商品名ではなく、C.I. Pigment Blue 15:1 と指定してある。

「信用詐欺」と呼ばれた最初のCI

1934年、ロンドンの王立統計学会。ネイマンが標本調査の新しい考え方を報告し終えると、礼を述べる役のボウリーは、その道具に疑いを向けた。信頼区間は、confidence trick(信用詐欺)ではないのか。

ボウリーが知りたかったのは、母集団の比率がこの範囲に入っている確率だった。信頼区間はそれを教えてくれない、と彼は考えた。ネイマンの返答は、その問いはベイズ流の問いで、答えるには事前の確率法則が要る、というものだった。信頼区間が保証するのは別のことだ。同じ手順で標本を取り直して区間を作れば、そのうち95%が真の値を含む。

論文の「平均値の差は1.2、95%CIは0.3〜2.1」という一行も、この意味で読む。「真の値がこの中にある確率が95%」ではない。解説が念を押すほど、そう読みたくなる数字だ。ボウリーが欲しがった答えと、信頼区間が出せる答えのずれは、90年あまりたった今も論文の表の中に残っている。

では、CIという二文字はこの年に生まれたのか。そうではない。「信頼区間」の名は、ネイマンがポーランド語の przedział ufności を訳したものだ。一方、染料の世界には、1924年から Colour Index がある。染色染料学会(SDC)が出した初版は700ページを超え、1,230の合成有機色材を載せた。信頼区間の命名より10年早い。のちに米国の AATCC(米国繊維化学技術・染色技術協会)と共同の編集になり、今も「C.I. Pigment Blue 15:1」のように、商品名の違う色材を同じ名で呼ぶ共通語になっている。

1966年には、MunsonとFieldが質量分析の化学イオン化を導入した。ソフトウェアでは、continuous integration の語を1991年にブーチが提案したとされ、一日に何度も統合する習慣は、1990年代後半にケント・ベックらのエクストリーム・プログラミングで広まった。心係数、競合情報、コーポレート・アイデンティティが生まれた年は、今回は確かめられなかった。

それでも、七つをひらいて並べると形がそろう。Corporate Identity、Continuous Integration、Confidence Interval、Chemical Ionization、Cardiac Index、Competitive Intelligence、Colour Index。どれも頭が C の語に、I で始まる語が続く。Index は二つある。誰かが二文字を取り合ったのではなく、年代も分野もばらばらのまま、それぞれが自分の言葉の頭文字を取って重なった、というのが自然な見立てだ。ただし、これは推測である。

染料の分厚い索引が10年かけて整えた「C.I.」と、ボウリーに「詐欺では」と疑われた「CI」は、同じ二文字でも別の来歴を持つ。そして論文の 0.3〜2.1 の隣には、ボウリーが欲しがった「この範囲に真の値がある確率」は、どこにも書かれていない。