略語

CM

シーエム

7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

広告(マス・屋外・販促)

コマーシャルメッセージ(CM)

commercial message

民放テレビ・ラジオで番組の前後や途中に流す広告、またはその広告素材。放送局は広告収入で成り立つため、広告主・代理店・局の間では枠の購入や素材の納品といった取引の単位としても使われる。なお英語圏では commercial や ad と言うのが一般的で、commercial message を和製英語とする辞書もある。

来週の新商品のCMは、15秒版と30秒版を同時に納品します。

建設・建築

コンストラクション・マネジメント

construction management

発注者の側に立つ専門家(CMR)が、技術的な中立性を保ちながら、設計の検討や工事の発注方式の検討、工程・コストの管理などを行う建設生産・管理の方式。国土交通省は、技術職員が不足する地方公共団体が発注体制を補う手法として、ピュア型CM方式の活用ガイドラインを公表している。

市の庁舎改築では、ピュア型のCM方式を採用して工程と工事費を管理する。

会計・税務・監査

貢献利益

contribution margin

売上高から変動費を引いた利益で、固定費をまかない利益を生む力を見る管理会計の指標。限界利益と同じ意味で使う場合と、限界利益からさらに部門や製品に直接かかる固定費を引いたものを指す場合があり、後者は部門別・事業別の採算判断に使われる。CMという略記は主に英語圏の管理会計(CVP分析など)で使われ、売上高に対する比率はCM比率と呼ばれる。

製品別の損益表で、CM(貢献利益)がマイナスの製品は販売の継続を見直す。

IT・システム開発

構成管理

configuration management

ソフトウェアやハードウェア、文書などの構成要素(構成アイテム)を識別し、版や変更履歴を記録・統制して、システムが想定どおりの状態にあることを保つ活動。開発ではソースコードやドキュメントの版管理、運用では機器・設定情報の管理を含む。

リリース前にCMの担当者がビルド対象のバージョンを確定させた。

機械・生産

改良保全

corrective maintenance

TPM(全員参加の生産保全)で整理される保全方式の一つ。故障した箇所を直すだけでなく、設備の構造や材料を改良して故障の再発を防ぎ、信頼性や保全のしやすさを高める活動を指す。事後保全(BM)、予防保全(PM)、保全予防(MP)と並べて呼ばれ、改良で得た知見は新しい設備の設計(MP)に生かされる。

同じ軸受の焼き付きが続いたので、給油経路を見直すCMとして設備を改造した。

医療・医学

造影剤

contrast medium

CTやX線撮影、MRIで血管や臓器、病変を見えやすくするために体内へ投与する薬剤。英語の医学論文やガイドライン、読影レポートでは contrast medium(複数形 contrast media)を CM と略して書くことが多く、造影剤による腎障害などの文脈でも使われる。日本語の現場では「造影剤」と呼ぶのがふつう。

腎機能を確認してから、CMを使った造影CTの予約を入れた。

半導体・電子部品

コモンモード

common mode

2本の信号線や電源線に同じ向きで同時に乗るノイズの伝わり方で、逆向きに流れる信号成分(ディファレンシャルモード、DM)と対比して使う。CMノイズの対策には、信号を損なわずにこのノイズだけを減衰させるコモンモードチョークコイル(CMCC)が使われる。USBやHDMI、車載のCANなどの差動伝送で問題になる。

このUSBラインはCMノイズが大きいので、コモンモードチョークを入れて抑える。

49年の差で並んだ、二つのCM

日本のテレビに最初のCMが流れたのは、1953年8月28日のことだ。日本テレビの放送で、精工舎(服部時計店。現在のセイコーホールディングス)の時報スポット「精工舎の時計が正午をお知らせします」がそれだったとされる。日本民間放送連盟は、この日付にちなんで2005年に8月28日を「テレビCMの日」と定めた。

それから半世紀近く、「CM」といえばまず広告のことだった。ところが建設の世界にも、同じ二文字の略語がある。コンストラクション・マネジメントは1960年代に米国で始まった建設生産・管理の方式で、国土交通省は2000年12月に「CM方式研究会」を設け、2002年2月6日に「CM方式活用ガイドライン」をまとめた。ガイドラインは米国の方式を参考にしながら、日本型のCM方式を検討したものだ。民間工事ではすでに、外資系企業や大手デベロッパーを中心に活用が始まっていたという。

1953年と2002年

二つの日付の差は49年になる。広告のCMがテレビの前で日常語になって久しい頃に、建設では行政が初めて公式の手引きを出した。建設の関係者がこの略語を会議で口にすれば、聞き手の頭には先に広告が浮かんだに違いない、とは思う。ただ、これは日付からの推測にすぎず、実際にそうした取り違えがあったかどうかは確認できていない。

成り立ちも違う。広告のCMの元になった commercial message は、辞書によっては和製英語とされ、英語圏では commercial や ad と言うのが一般的だ。日本で育った略語ということになる。建設のCMは、英語の construction management を縮めたもので、手法とともに輸入された名前だ。広告のCMは国内で定着したあとに他の業界の略語とぶつかり、建設のCMは日本に入った時点で、すでに広告という先行する意味と並ぶことになった。

二つだけではない。会計には、貢献利益(contribution margin)をCMと略す慣行が英語圏にある。ITには構成管理(configuration management)がある。広告も建設も、出自の違う略語が同じ二文字に収まった例のひとつにすぎない。

正午を告げる時報スポットが流れた1953年から49年後、国土交通省が手引きをまとめた二文字は、時報スポットのCMとは別のものだった。