用語

コア

コア

6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

エネルギー

炉心(原子炉コア)

reactor core

原子力発電で、原子炉圧力容器の中にあって核分裂が起きる中心部分。燃料集合体と制御棒が入り、冷却材が流れる。PWR(加圧水型)では燃料集合体・制御棒・炉内計装などで構成され、BWR(沸騰水型)では炉心シュラウドという円筒の内側に燃料集合体が並ぶ。事故報道でいう「炉心損傷」「炉心溶融」もこの部分の話。

炉心損傷を防ぐため、非常用炉心冷却系(ECCS)でコアに水を注ぐ。

半導体・電子部品

磁心(フェライトコアなど)

magnetic core

トランスやインダクタ(コイル)の巻線の中心に置き、磁束の通り道にする磁性材料。透磁率が高く電気を通しにくいフェライトがよく使われる。電源のスイッチングトランスでは電力変換の要になり、ケーブルに付けるクランプ型は高周波ノイズ(EMI)の抑制に使う。形状はリング型・EI型などがある。

ノイズ対策としてケーブルにフェライトコアを取り付けた。

建設・建築

コア(建物の中心部)

core (service core)

オフィスビルなどで、エレベーター・階段・トイレ・機械室・電気室・配管などの縦のシャフトをまとめた部分。構造的にも耐震壁として働くことが多い。床面積に対する貸室の割合(レンタブル比)を左右するため、中央コア・片寄せコア・分離コアといった配置が設計の要点になる。

このビルは片寄せコアにして、執務室の連続した大空間を確保した。

土木・測量

コア(コンクリートの採取試料)、コア抜き

concrete core

既存の構造物から、円筒状の刃(コアドリル)で穿孔して抜き取った円柱状の試料。圧縮強度試験や中性化深さの調査に使い、構造物の耐久性診断・耐震診断や、打設したコンクリートの品質確認で行う。採取の作業そのものを「コア抜き」とも呼び、採取方法と圧縮強度試験の方法は JIS A 1107 に定められている。

橋脚の健全度を確認するため、3か所でコアを採取して圧縮強度を測った。

機械・生産

中子(鋳造のコア)

core (casting)

鋳造で、製品の内部の空洞や穴の形をつくるために、鋳型の中へ置く砂などの成形体。主型に木型で型を取ったあと、中子を所定の位置にセットして鋳型を完成させる。エンジンブロックの水路のように、外から削れない中空部をつくるのに欠かせない。砂に粘結剤を混ぜて成形し、3Dプリンターで造形する方法もある。

中子の寸法がずれると、鋳物の肉厚が偏って不良になる。

スポーツ・フィットネス

体幹(コアトレーニング)

core

フィットネスやトレーニングの分野で、頭と腕・脚を除いた胴体部分と、そこを支える表層・深層の筋肉をまとめて指す言い方。体の軸を安定させ、姿勢の保持や動作のパフォーマンスにつながるとされる。鍛えるトレーニングを「コアトレ」と呼び、腹横筋を刺激するドローインが基本の種目として挙げられる。体幹トレーニングとほぼ同義で使われる。

オフシーズンはコアトレを中心に、フォームの安定を狙う。

穴をつくる中子と、穴から出てくるコア

林檎や梨の芯を指す英語の core は、14世紀初めの記録にすでにある。Etymonline によれば、古フランス語で「果実の芯」「レタスの心」を意味した語を経て、元はラテン語の cor(心臓)にいきつく。中心という意味は、語の出発点から入っていた。

そうなると、「コア」はどの業界でも中心にあるものを同じ向きに指していそうに思える。土木の「コア」と鋳造の「中子」を並べると、その予想は外れる。

穴から出てくる円柱と、穴をつくる円柱

土木の「コア抜き」は、コンクリート構造物にコアドリルという円筒状の刃を当て、円柱状の試料を抜き取る作業である。採取と圧縮強度試験の方法は JIS A 1107 に定められている。手元に残るのは円柱の試料で、構造物の側には穴があく。

鋳造の中子は、鋳型の中に置く砂などの成形体である。主型に中子を所定の位置へセットして鋳型を完成させ、溶けた金属を流す。固まったあとで中子を取り除くと、そこが製品の空洞や穴になる。エンジンブロックの水路のように、外から削れない中空部をつくるための部品だ。

どちらも中身の詰まった円柱である。一方は穴から取り出されて調べられ、他方は穴の形を保ったまま金属に囲まれ、最後に取り除かれる。

切り取った芯という古い意味

Etymonline には、土や木などから切り取って取り出した中心部分という意味の core が、1640年代から記録されているとある。取り出して調べる土木のコアの使い方と、よく重なる。果実の芯をくり抜く動詞の用法も、15世紀半ばに出ている。

中子は漢字では「なかご」と読む。カタカナで「コア」と呼ぶ現場もあるが、漢字で書くかぎり、土木のコアと取り違える人は少ない。取り違えが起きやすいのは、現場の会話や、カタカナだけで書かれた発注書のほうだろう(これは推測で、確認した事例ではない)。

原子炉の炉心、ビルのコア、磁心、体幹も、中心にあるという点は共通している。その中で、取り出されて穴を残すもの(土木)と、先に入れて穴をつくるもの(鋳造)だけが、同じ円柱の形で向かい合っている。