DM
ディーエム
5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
ダイレクトメール
direct mail
特定の相手の住所や連絡先に宛てて、商品やサービスの案内を直接届ける広告手法。はがき・封書・カタログなどの郵便物が中心で、顧客名簿をもとに送る相手を絞れる。広告業界では、紙のDMの反響率や発送タイミングを企画・検証する対象として扱われる。
新商品の案内は、既存顧客向けにDMを発送して反応を見ます。
ダイレクトメッセージ
direct message
X・Instagram・TikTok・FacebookなどのSNSやアプリに備わる、相手を指定して送る非公開のメッセージ機能。誰でも読める投稿やリプライ(返信)と対比して使われ、「DMを送る」「DMで連絡する」のように言う。
詳細はDMでお送りしますので、プロフィールからご連絡ください。
糖尿病
diabetes mellitus
カルテや診療記録、論文で使われる糖尿病の略号。既往歴や併存疾患の欄に「DM」と書く。1型・2型などの病型や妊娠糖尿病も、IDDM・NIDDM・GDMのようにDMを含む略号で表す。
既往歴にDMがあり、内服薬を継続中です。
ダンジョンマスター(TRPGの進行役)
Dungeon Master
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』などのテーブルトークRPGで、世界の設定を語り、ルールを裁定してゲームを進める役。一般的なゲームマスター(GM)と同義で、ゲームによって呼び名が異なる中でDMはD&D系の呼称。プレイヤーが相談や質問を向ける相手になる。
今夜のセッションはDMを交代制にして回します。
デュエル・マスターズ(略称。デュエマ)
Duel Masters
タカラトミーが日本で展開するトレーディングカードゲーム『デュエル・マスターズ』の略称。商品の型番(DMEX-08 など)にも「DM」が使われる。「デュエマ」とも呼ばれる。
週末のDMの大会に向けて、新しいデッキを組んでいます。
二つのDMは、同じ会社の机から出てきた
ゲームの話でDMと言われたら、まず聞き返すことになる。ダンジョンマスターのことか、デュエル・マスターズのことか。どちらも頭文字がDとMで、どちらも「マスター」で終わる。同じ会社が関わっているなら、名前を揃えたのだろうと考えたくなる。
実際、二つの背後には同じ会社がいる。ただ、その会社が二つの名前に関わった順序は、揃えたという想像には合わない。
1974年の進行役
ダンジョンマスターは、1974年に出版された『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)で使われた呼称で、世界の設定を語り、ルールを裁定し、プレイヤーが相手にする怪物や住人を演じる役を指す。他のテーブルトークRPGでは別の言い方をするので、DMはD&D系の呼び名になる。遊び手のあいだで「DMを交代で回す」と言って通じるのは、その延長だ。
D&Dを最初に出したのはTSRという会社だった。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストがTSRの買収を発表したのは1997年4月で(英語版Wikipedia「Wizards of the Coast」による)、以来D&Dはこの会社の製品になっている。進行役の呼称は、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストが持ち主になるより前、TSRの時代からあった。
2002年のカードゲーム
デュエル・マスターズは、日本では2002年に発売されたカードゲームで、デュエマの愛称で知られる。ゲームのデザインはウィザーズ・オブ・ザ・コースト、日本での販売や運営はタカラトミーが担う、と説明されてきた(デュエル・マスターズWikiの「Wizards of the Coast」の項)。同じ項には、2019年以降はタカラトミーのほか小学館なども開発に関わっている状況が示されている。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは1993年に世界初のトレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』を出した会社で、その仕組みを子どもにも遊びやすい形にしたのがデュエマだという。
順に並べると、DMという略称で呼ばれる進行役が先にあり、その持ち主になった会社が、のちにDMと略されるカードゲームのデザインを手がけたことになる。名前の一致が意図されたものかどうかは、確認できた資料からはわからない。
進行役は人が人に語る役で、デュエマは紙のカードを手に向かい合う勝負だから、遊びとしての共通点はほとんどない。重なっているのは略称と、出版元の名前だけだ。
そして、聞き返される二文字には、ゲームの二つのほかに三つの意味がある。ダイレクトメールは、特定の相手に宛てて送る郵便の広告。ダイレクトメッセージは、SNSで相手を指定して送る非公開のメッセージ。医療のDMは、糖尿病(diabetes mellitus)のカルテ上の略号だ。前の二つはどちらも「直接」を意味するdirectで始まり、紙の郵便で届く案内と、画面のなかで届くメッセージが、同じ二文字で呼ばれている。広告のDMとSNSのDMが一つの投稿の中で入り混じることもありうる。ゲームの話で聞き返された「どっちのDM?」は、実は五通りの中から選ぶ質問だった。