略語

DP

ディーピー

9つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

映画・映像・アニメ

撮影監督

Director of Photography

映画・映像の「画づくり」(ルック)の総責任者。監督が撮りたい画を表現するため、照明や美術などの部門と打ち合わせて具体化する。欧米式では撮影チームと照明チームの両方を統括して照明技師に指示を出すが、日本では両者が分かれ、照明技師と対等な立場の現場が多い。

DPと相談して、このシーンは逆光で撮ることにした。

海運・貿易

自動船位保持(DP船)

Dynamic Positioning

船がスラスターの推力だけで、自動的に位置(定点または予定した航跡)を保つ制御方式、またはそれを備えた船(DP船)。IMOの指針は、位置を失ったときの影響に応じて求める信頼性を3つの機器クラスに分け、クラス1は単一故障で位置を失うおそれがあり、クラス2は単一故障で位置を失わないとする。

この作業にはDPクラス2以上の船が求められている。

商社

支払渡し

Documents against Payment

信用状を使わない荷為替手形(代金取立て手形)の取引条件。輸入者が手形代金を支払うのと引き換えに船積書類が渡される。手形の引受けと引き換えに書類を渡すD/A(引受渡し)と並ぶ。信用状取引と違って銀行の支払確約がなく、不払いのリスクがある。信用状を開設する費用や手間を避けたい買主との取引で使う。表記はD/Pと斜線が入る。

この取引先とは信用状を付けず、D/Pで決済している。

素材・化学

重合度

Degree of Polymerization

高分子(ポリマー)の1分子にモノマー単位がいくつつながっているかを示す数。合成高分子は重合度の違う分子の混合物なので平均値で表し、数平均(数平均分子量Mnをモノマー単位の分子量M0で割ったDPn=Mn/M0)と重量平均がおもに使われる。

重合度が上がると、樹脂の機械的強度や融点も上がる。

学術・研究

動的計画法

Dynamic Programming

大きな問題を小さな部分問題に分け、その解を記録して再利用しながら全体の答えを組み立てる設計の考え方。特定のアルゴリズムの名前ではなく、同種のアルゴリズムの総称。ナップサック問題や最短経路などの最適化問題で使い、計算の重複を省いて効率を上げる。

この最適化問題はDPで多項式時間に解ける。

スポーツ・フィットネス

併殺(野球:ダブルプレー)

Double Play

A double play occurs when two offensive players are ruled out within the same play.

出典:MLB Glossary「Double Play (DP)」・MLB.com

野球の守備側が1つのプレーで攻撃側の2人をアウトにすること。最も多いのは、一塁に走者がいる場面のゴロで、二塁でまず1つ目のアウトを取り、一塁に転送して2つ目を取る形。記録上はDPと略す。日本では「ゲッツー」とも呼ぶ。

ショートゴロでDPが完成し、ピンチを切り抜けた。

半導体・電子部品

ディスプレイポート

DisplayPort

VESA(映像電子規格協会)が策定した、PC などの映像出力元とモニターなどの表示機器をつなぐデジタル映像インターフェース。1本のケーブルで音声や USB などのデータも送れる。端子や規格の版を「DP 1.4」「DP 2.0」のように略記する。

このモニターは HDMI のほかに DP 端子を備えている。

AI・データ

差分プライバシー

Differential Privacy

データセットの統計情報を公開する際、計算に適切な量のノイズを加えて、特定の個人のデータが含まれているかどうかを外部から判別しにくくする数学的な枠組み。機械学習では、学習時に勾配へノイズを加える DP-SGD のように、モデルの学習へ応用される。

学習データの漏えいを防ぐため、DP を適用して学習した。

医療・医学

足背動脈(の拍動)

Dorsalis Pedis (pulse)

足の甲にある足背動脈、またはその拍動を指す略記。足の甲の第1中足骨間で、母趾の伸筋腱のすぐ外側に触れる。後脛骨動脈(PT)の拍動と並べて触知し、末梢動脈疾患の診察で足の血流を確かめる。論文や記録では DP・PT と略す。

両側ともDPを触知でき、足先の血流は保たれている。

動的計画法の「動的」は、議員が反対しない語だった

競技プログラミングの解説に「DPで解く」と書いてあると、プログラムを書く話のように見える。動的、という語も、処理が動くことを指すように読める。ところが、これは特定のアルゴリズムの名前ではなく、同種の解き方の総称である。それならなぜ、この考え方は「動的」で「プログラミング」なのか。

命名者の答えが、リチャード・ベルマン自身の自伝『Eye of the Hurricane』(1984年)に残っている。1950年の秋、ベルマンは RAND で働いていた。最初の仕事は、多段階の意思決定の過程に名前を付けることだった。

理由は、研究という語にあった。ベルマンは当時の国防長官について、“he actually had a pathological fear and hatred of the word, research."(研究という語に病的な恐れと憎しみを持っていた)と書いている。数学の研究をしているとは、書類に書きたくなかった。

そこで選んだのが programming である。関心は計画、意思決定、思考にあった。ただ “planning, is not a good word for various reasons."(planning は、いくつかの理由でよい語ではない)ので、programming を使うことにした。込めたかったのは、“dynamic, this was multistage, this was time-varying”(動的で、多段階で、時間とともに変わる)という感じだったという。

では、dynamic のほうは。ベルマンは、この語は “not even a Congressman could object to”(議員でさえ文句を付けられない)と書いている。

つまり、この名前には、手法の特徴を言い表す以前に、反対を避けるという事情があった。ただし、その理由を述べているのは本人の回想だけで、ここでは他の資料と突き合わせていない。

同じ DP の頭文字は、ほかの現場では別の語を背負っている。海事の DP は Dynamic Positioning で、船がスラスターの推力だけで位置を保つ制御方式だ。IMO の指針は、位置を失った場合の影響に応じて、機器を3つのクラスに分けている。こちらの dynamic は、その場に留まるために絶えず推力を調整し続ける、という実際の動きを指している。

動いている船と、名前だけ動いている計算手法。手元の講義資料に「DP」と書かれていたら、その dynamic が議員向けなのか、スラスター向けなのかを、まず見分けたくなる。