ドライバー
ドライバー
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
デバイスドライバー
device driver
プリンターやディスプレイなどの周辺機器を、OSから操作できるようにする仲介ソフト。機器ごと・OSごとに作られ、アプリ側は機器の違いを意識せずに済む。新しい機器をつないだら入れる、不具合が出たらドライバーを更新する、という場面で使う。
プリンターが認識されないので、最新版のドライバーを入れ直してみてください。
ドライバー(ゴルフ:1番ウッド)
driver
ゴルフでティーショットに使う、最も飛距離の出るクラブ。1番ウッドとも呼ばれ、ヘッドが大きくシャフトが長い。飛ぶぶん曲がりやすく、ヘッド体積や重量、シャフトの長さや硬さを自分のスイングに合わせて選ぶのが一般的。
今日はドライバーが曲がらず、ティーショットで何度もOBを打ってしまった。
ドライバー(駆動回路・ドライバIC)
driver (driver IC)
LED・モーター・パワートランジスタなど、制御信号だけでは動かせない素子を駆動するための回路、またはそれを1チップにしたIC。LEDドライバは定電流制御や調光、モータードライバは回転の制御、ゲートドライバはMOSFETやIGBTのスイッチングを担う。
LEDが暗いので、ドライバICの出力電流の設定値を見直そう。
ドライバー(スピーカーユニット)
speaker driver
スピーカー内で実際に振動して音を出す部品で、アンプやプレーヤーからの電気信号を空気の振動に変える。低音担当のウーファー、高音担当のツイーターなど、帯域ごとに大きさの違う複数のドライバーを組み合わせるスピーカーが多い。
このスピーカーは、ツイーターのドライバーだけ口径が小さい。
ドライバーは牛飼いから、ゴルフ場まで来た
「ドライバーを替えたら飛距離が伸びた」と「ドライバーを入れ直したら音が出た」。前者はゴルフクラブの話で、後者はソフトウェアか、スピーカーの部品の話である。手元にあるものを聞き返さないかぎり、どちらも文として成り立ってしまう。
この食い違いは日本語だけの事情ではない。英語でもクラブ、ソフト、電子部品、スピーカーの部品は、すべて同じ綴りの driver で呼ばれる。別々の道具に同じ名前が付いたのだとすると、偶然の一致だろうか。
車より先に、牛を追う人がいた
語源辞典 Online Etymology Dictionary の driver の項によると、この語は14世紀後期に「one who or that which drives」の意味で使われはじめた。いちばん古い意味は、家畜を追う牧童や牛飼いである。車両を運転する人の意味は15世紀半ばからなので、車の driver より家畜の driver のほうが先にいたことになる。
同じ項に、ゴルフの意味は1892年とある。遠くへ飛ばすためのクラブ、という説明だ。ゴルフ場で「ドライバー」と言えば、人ではなくクラブを指す。日本では1番ウッドの別名としても通じる。
日付が確かめられなかった三つ
デバイスドライバーは、OSの指示を受けて周辺機器を動かすソフトである。LEDやモーター、MOSFETを動かす駆動回路も、ドライバICと呼ばれる。スピーカーのドライバーは、電気信号を受けて振動板を動かし、空気を震わせる。三つとも「相手を動かす側」の役目で、drive の「追い立てる、動かす」という感覚と筋が通る。ただし、それぞれの業界でこの呼び名がいつ定着したのかは、今回の確認では日付を出せなかった。
日本語はここにさらに別の語を重ねている。運転手のドライバー、ねじ回しのドライバーである。Etymonline は screwdriver を別項で扱い、道具の語として1779年の用例を挙げている。ねじを回し入れる道具が drive の系統に連なるのかは、この項からは読み取れない。
冒頭の二つの文に戻ると、飛距離を伸ばしたい人の手にはクラブがあり、音を出したい人の手にはソフトか部品がある。どちらも元をたどれば、先に立って相手を動かす役のことだったのかもしれない。