略語

EC

イーシー

7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

EC・通販

電子商取引

electronic commerce

インターネット上で受発注を行う取引の総称。経済産業省の市場調査では、決済がネット上で完結するかにかかわらず、コンピュータネットワーク上で受発注した取引を数える。BtoC・BtoB・CtoC などに分けて市場規模を集計し、自社サイトやモールでの販売を「EC」「EC化」と呼ぶ。

店舗販売に加えて自社 EC サイトを立ち上げ、受注から出荷までの流れを整える。

農業・畜産・林業

電気伝導度(EC値)

electrical conductivity

土や培養液中の電気の通りやすさを表す数値で、溶けているイオン、つまり肥料分や塩類の濃度の目安になる。土壌診断では pH とともに基本の分析項目で、土と水を1対5で混ぜた液を測るのが一般的。養液栽培では培養液の濃度管理に使う。単位は mS/cm や dS/m。

ハウスの土の EC が高いので、次の作付け前に施肥を控えて塩類を抜く。

生命科学・バイオ

酵素番号(EC番号)

Enzyme Commission number

酵素を、触媒する反応の種類によって分類した番号。「EC」に続けて4つの数字をピリオドでつなぎ、最初の数字が大分類(酸化還元酵素、転移酵素など)を表す。同じ反応を触媒する酵素は、由来する生物が違っても同じ番号になる。国際生化学分子生物学連合(IUBMB)が管理している。

論文には、この酵素の EC 番号が EC 3.1.1.3 と記されていた。

医療・医学

緊急避妊(法)

emergency contraception

避妊をしなかった性交や避妊の失敗のあとに、妊娠を防ぐために行う方法。婦人科の診療では、緊急避妊薬(ECP、emergency contraceptive pill)の処方などを「EC」と略して記す。日本では2011年にレボノルゲストレル単剤の緊急避妊薬が承認された。

婦人科外来で EC の相談を受け、服用のタイミングを説明した。

行政・公的機関

欧州委員会

European Commission

EU の政策執行機関。法案の提案や決定の実施、基本条約の運用を担う。EC は、EU の前身である欧州共同体(European Community)の略としても使われてきたため、文脈によってどちらを指すかを見分ける必要がある。

EC は新しい規制案を公表し、加盟国との協議に入った。

素材・化学

エチレンカーボネート

ethylene carbonate

環状カーボネートに分類される有機溶媒で、リチウムイオン電池の電解液の主成分として使われる。誘電率が高く電解質のリチウム塩をよく溶かすため、粘度の低い鎖状カーボネート(ジメチルカーボネートなど)と混ぜて用いる。融点は約36℃で、室温では固体のため単独では使いにくい。初回充電時に負極で分解し、保護被膜(SEI)をつくる役割も持つ。

電解液の配合は EC と鎖状カーボネートを体積比で混ぜ、リチウム塩を溶かして調整する。

製薬・創薬

エチルセルロース

ethylcellulose

セルロースをエチル化した水に溶けない高分子で、医薬品添加剤として使われる。錠剤・顆粒の結合剤のほか、有効成分を時間をかけて放出させる徐放性製剤のコーティングやマトリックス、苦味のマスキング、マイクロカプセル化に用いる。各国の薬局方に収載されている。

徐放顆粒の放出速度は、EC の粘度グレードとコーティング量で調整する。

溶かす EC、溶けない EC、測る EC

ハウスの土に電極を挿すと、表示窓に EC の値が出る。目安は 0.5 dS/m 前後で、大きく超えれば肥料が効きすぎている。測っているのは電気の通りやすさだが、土が電気を運ぶわけではない。運ぶのは水に溶けたイオンで、だから値が肥料分や塩類の濃度の目安になる。

同じ二文字が、リチウムイオン電池の中では別の仕事をしている。電解液の主成分のエチレンカーボネートである。誘電率が高く、電解質のリチウム塩をイオンにほぐして溶かす。農家の EC が「イオンがどれだけ溶けているか」を読む数字なら、電池の EC は、イオンを溶かして電気の通る液をつくる側にいる。

ところが、この物質の融点は約36℃で、室温では固体である。固体の溶媒が、なぜ電解液の主成分になれるのか。塩をよく溶かす性質と、充電の初回に負極で分解して保護被膜(SEI)をつくる性質が、それだけ手放しがたいからだ。使いにくさのほうは、粘度の低い鎖状カーボネートと混ぜて液にすることで逃げる。

化学の棚には、もう一つ EC がある。薬の添加剤のエチルセルロースで、こちらは水に溶けない。溶けないことが仕事で、顆粒や錠剤の表面を覆い、有効成分が出ていく速さを遅らせる。溶かす EC と、溶けない EC である。綴りはどちらも eth- で始まるが、エチレンとエチルは別の原子団だ。

残る四つの EC は、実験室の外にいる。酵素の論文に出てくる EC 3.1.1.3 は Enzyme Commission、酵素委員会の頭文字で、番号は国際生化学分子生物学連合(IUBMB)が管理している。欧州委員会は European Commission で、EC はかつての欧州共同体(European Community)の略でもあったから、ニュースでは文脈で見分けることになる。通販の話なら電子商取引、婦人科の診療記録なら緊急避妊を指す。

温室の表示窓に出ている EC は、エチレンカーボネートともエチルセルロースとも無関係である。ただ、数字が上がるのは水にイオンが増えたからで、電池の電解液が電気を通すのも、EC が塩をイオンにして溶かしているからだ。同じ二文字の下で、イオンという一つの現象が、測る側と溶かす側に分かれて働いている。