略語

EP

イーピー

5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

音楽ビジネス・興行

EP(ミニアルバム)

Extended Play

シングルより曲数が多く、アルバムより少ない音源のリリース形態。基準は国や団体で異なるが、おおむね3〜6曲程度・30分未満のものを指す。レーベルやアーティストが、フルアルバムの前後に新曲をまとめて出す企画として使う。日本ではミニアルバムと呼ばれることも多く、配信ではリリース区分としてEPと表示される。

フルアルバムの前に、先行して5曲入りのEPを配信リリースする。

映画・映像・アニメ

エグゼクティブ・プロデューサー

Executive Producer

映画・テレビ・配信作品のクレジットに載る、制作全体の責任や出資・権利を担う上位のプロデューサー。現場の進行を担う通常のプロデューサーより上の立場とされる。制作会社の社長や権利者が名義で入ることもあれば、資金調達や企画・人選まで実務を担うこともあり、役割は作品ごとに幅が大きい。

この作品はEPが出資元の社長で、現場の実務はラインプロデューサーが回している。

素材・化学

エポキシ樹脂/極圧(添加剤)

Epoxide (epoxy resin) / Extreme Pressure

素材・化学の現場では2つの意味がある。ひとつはプラスチックの材料記号(ISO 1043-1)でのEPで、エポキシ樹脂を表す。もうひとつは潤滑油・グリースの「EP添加剤」のEPで、Extreme Pressure(極圧)の略。硫黄・リン・塩素系などの化合物で、高い面圧で金属同士が接触する部分の焼付きや摩耗を防ぐ。語源は別。

ギヤ油にはEP添加剤入りを選び、封止材はEP系の材料に切り替えた。

製薬・創薬

欧州薬局方

European Pharmacopoeia

欧州評議会のEDQMが編纂する、医薬品とその原料の公的な品質規格集。正式な略称はPh. Eur.だが、規格書や試験成績書では「EP」「EP適合」と書かれることも多い。医薬品原料や添加剤の取引で、日本薬局方(JP)・米国薬局方(USP)と並べて、どの規格に適合するかを示すために使う。

この添加剤はEPとUSPの両方に適合した品質グレードで供給されている。

医療・医学

電気生理学(EP検査)

electrophysiology

循環器の診療で、心臓の電気信号の流れを調べて不整脈の原因を突き止める分野、またはその検査(EP検査)。足の付け根などの血管からカテーテルを心臓に入れて電気活動を記録し、必要なら電気刺激で不整脈を誘発して異常な回路の位置を特定する。結果にもとづいてカテーテルアブレーション(異常部位の焼灼)へ進むことが多い。

動悸の原因を調べるため、来週EP検査を入れてアブレーションの適応を判断する。

5曲20分の作品は、EPかアルバムか

5曲入りで、合計20分の作品がある。EPだろうか、アルバムだろうか。

配信アプリのリリース区分は「EP」かもしれない。ところがイギリスのオフィシャル・チャート・カンパニーは、4曲を超える作品、または25分を超える作品をアルバムとして集計する(同じ曲の別バージョンは数えない)。5曲なら、20分でもチャートではアルバムである。グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーの規定も、5曲以上かつ15分以上、または30分以上をアルバムとしている。こちらでもアルバムだ。一方、Wikipedia英語版によれば、アメリカレコード協会(RIAA)は「30分未満で3〜5曲」をEPとしている。同じ5曲20分が、数える団体によってEPにもアルバムにもなる。

EPの名は、1952年にRCAビクターが45回転のシングル盤に付けたExtended Playに始まる。溝を細くして、片面に最長7分半まで入れた盤の呼び名だった。盤の形という物差しがなくなったあと、曲数と分数で境目を決め直したのが各団体、という順序だったのではないか。これは推測で、確かめられた話ではない。

同じ二文字でも、境目が動かないEPがある。プラスチックの材料記号(ISO 1043-1)のEPはエポキシ樹脂で、何曲かで揺れる余地はない。医薬品原料の試験成績書にある「EP適合」は、欧州評議会のEDQMが編纂する欧州薬局方の規格に合っているかどうかを言っている。ギヤ油のEP添加剤はExtreme Pressure、高い面圧で金属同士が触れる部分の焼付きを防ぐ働きで選ぶ。心臓のEP検査では、カテーテルで電気活動を記録して不整脈の回路を探す。どれも、EPかどうかは規格か測定で決まる。

音楽のほかに、もうひとつ境目が動くものがある。映画やドラマのクレジットのExecutive Producerだ。出資元の社長が名義で入る作品もあれば、資金調達から企画、人選まで担う作品もある。EPと書いてあっても、その人が何をしたかはクレジットからは読めない。

冒頭の5曲20分の作品は、アプリでは「EP」と出ている。チャートの集計ではアルバムになり、グラミーの規定でもアルバムになる。表示は配信するときのリリース区分で、よその団体が同じ作品を何と数えるかとは別に決まっている。