略語

EV

イーブイ

5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

自動車・輸送機器

電気自動車

Electric Vehicle

自動車に搭載したバッテリーに充電された電気のみで走行します。

出典:国土交通省 報道発表資料「電動車の特性を理解して運転しましょう」(EV の説明)

電気を動力に走る自動車の呼び名。国土交通省の資料では、搭載バッテリーに充電した電気だけで走る車を EV と呼び、HV・PHV・FCV と並べて「電動車」に含めている。一方、東京電力の解説は、EV を電気で動く車両全般とし、HV・PHV・FCV も含め、バッテリーだけで走る車を BEV(Battery Electric Vehicle)と区別する。資料によって範囲が違うので、BEV のみを指すのか、HV や PHV を含むのかを文脈で確かめる必要がある。

この補助金の対象は EV と PHV で、HV は含まれません。

写真・カメラ

露出値(EV値)

Exposure Value

1EVは、シャッター速度や絞り値の1段に相当する光量変化です。

出典:パナソニック「露出補正とオートブラケット撮影(第九回)」

露出の量を、絞り値とシャッター速度の組み合わせで1つの数値にまとめたもの。被写体の明るさと感度で決まり、光量が2倍変わるごとに1ずつ変わる。同じ EV になる絞りとシャッター速度の組み合わせは何通りもあり、撮影者がボケや動きの写り方で選ぶ。カメラの露出補正も EV 単位で設定する。1EV は絞りやシャッター速度の1段に相当し、+1EV の補正で露光量が2倍、-1EV で半分になる。

逆光で顔が暗いので、露出補正を +1EV にして撮り直した。

証券・投資

企業価値(事業価値)

Enterprise Value

EV=株式時価総額+有利子負債-現預金

出典:M&Aキャピタルパートナーズ「EV(Enterprise Value)とは?」

企業全体の価値を測る指標。簡易的には、株式時価総額に有利子負債を足し、現預金を引いて求める。買収する側から見た実質的な買収額の目安になる。株主分の価値だけを示す時価総額と違い、借入の負担も含めて比べられる。EV を EBITDA(利払い・税・償却前の利益)で割った EV/EBITDA 倍率は「簡易買収倍率」とも呼ばれ、買収額の目安や、国をまたいだ企業どうしの株価比較に使う。

A社の EV は時価総額より大きく、有利子負債が重い。

生命科学・バイオ

細胞外小胞

Extracellular Vesicle

細胞が放出する、脂質二重膜に包まれた粒子の総称。機能する核を持たないため、自分では複製できない。エクソソームなどを含み、タンパク質や核酸などを運んで細胞間の情報伝達を担う。病気の診断に使うバイオマーカー(病気の目印になる物質)、薬物送達、再生医療への応用研究が進んでいる。国際細胞外小胞学会(ISEV)のガイドライン MISEV2023 は、どの経路でできたかを実験で示せない場合、エクソソームなどの語ではなく EV を総称として使うよう勧めている。

血液から EV を回収し、含まれる microRNA を解析した。

インフラ・クラウド・セキュリティ

EV証明書(EV SSLサーバ証明書)

Extended Validation

EV証明書とは、Extended Validation証明書の略で、SSLサーバ証明書の一種です。

出典:JPNIC「インターネット用語1分解説~EV(Extended Validation)証明書とは~」

SSL/TLS サーバ証明書の認証レベルの一つ。EV 証明書ガイドラインに従い、サイトを運営する組織が実在するかを厳格に審査したうえで発行される。ドメインの管理権だけを確認する DV、組織の実在を確認する OV より審査が厳しいが、暗号の強さは同じ。以前は対応ブラウザのアドレスバーに組織名が表示されていた。2019年の Chrome 77 などでこの表示は廃止され、現在は鍵アイコンから開くサイト情報で確認する。

ネットバンキングのサイトには EV 証明書を導入している。

EVは数値にも粒子にも証明書にもなる

EV という2文字が指すものは、業界ごとに種類そのものが違う。自動車では乗り物、写真と金融では数値、生命科学では細胞が放出する粒子、IT インフラでは SSL/TLS サーバ証明書の認証レベルになる。

同じ「数値」でも数え方が違う

数値の EV は写真と金融の2つある。同じ数値なら読み方も同じだろうと思うが、数え方はまったく違う。

写真の Exposure Value(露出値)は、絞り値とシャッター速度の組み合わせを1つの数にまとめたもので、光量が2倍変わるごとに1ずつ変わる(富士フイルム)。+1EV の補正で露光量は2倍、-1EV で半分になる(パナソニック)。EV が3上がれば、掛け算で 2×2×2=8倍である。1目盛りは「2倍」という比率で、対数の目盛りといえる。同じ EV になる絞りとシャッター速度の組み合わせは何通りもあり、ボケや動きの写り方に合わせて撮影者が選ぶ。

金融の Enterprise Value(企業価値)は、株式時価総額に有利子負債を足し、現預金を引いて求める(野村證券)。こちらは金額の足し算と引き算で、1目盛りという考え方はない。EV を EBITDA(利払い・税・償却前の利益)で割れば EV/EBITDA 倍率になり、「簡易買収倍率」とも呼ばれる。

写真の EV は「何倍か」を段で数え、金融の EV は「いくらか」を金額で数える。EV の値だけを聞いても、単位の見当がつかない。

意味が揺れる、変わる EV

3つの業界では、EV の指す範囲が資料や時期によって動いている。範囲の広い語は混乱のもとになりそうだが、実際の収め方は業界ごとに違う。

自動車では、国土交通省が搭載バッテリーに充電した電気だけで走る車を EV と呼び、HV・PHV・FCV と並べて「電動車」に含める。東京電力の解説は、EV を電気で動く車両全般とし、HV・PHV・FCV も含めたうえで、バッテリーだけで走る車を BEV(Battery Electric Vehicle)と区別する。同じ EV でも、HV を含むかどうかが資料で異なる。

生命科学の Extracellular Vesicle(細胞外小胞)では、広い語のほうを勧める方向に動いた。国際細胞外小胞学会(ISEV)のガイドライン MISEV2023 は、エクソソームなど、どの経路でできたかを示す語は、その経路を実験で示せないなら使わず、EV を総称として使うよう勧めている。細かい語より、広い語のほうが安全だという扱いである。

自動車は BEV という別の語を足して EV を狭め、生命科学は EV を広い総称として推した。IT インフラの Extended Validation では、動いたのは語の範囲ではなく画面上の見え方である。EV 証明書は組織の実在を厳格に審査して発行され、以前は対応ブラウザのアドレスバーに組織名が表示されていた。2019年の Chrome 77 などでこの表示は廃止され、現在は鍵アイコンから開くサイト情報で確認する。審査の厳しさは変わらず、暗号の強さも DV・OV と同じである。