F1
エフワン
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
フォーミュラ・ワン(F1世界選手権)
Formula One
国際自動車連盟(FIA)が公認する、単座式の競技専用車による自動車レースの最高峰カテゴリー。世界選手権は1950年に始まり、世界各地のサーキットで開かれるグランプリ(GP)の成績をもとに、ドライバーズとコンストラクターズ(製造者)の2つの年間王者を決める。
今季のF1では、このドライバーが全戦で表彰台に上がり、年間王者争いの先頭に立っている。
F1層(20〜34歳の女性)
Female 1
視聴率や広告の出稿先を性別と年齢で切り分けるときの区分で、20〜34歳の女性を指す。Fは女性(Female)で、35〜49歳がF2、50歳以上がF3と続き、男性はM1、M2、M3と数える。番組の視聴者層の分析や、CM枠の買い付けの目安に使われる。
このドラマはF1層の個人視聴率が高いので、化粧品のCMが入りやすい。
F1品種(一代雑種)
first filial generation
性質の異なる親品種を交配して得る雑種第一代の種子と、その品種。雑種強勢によって生育がそろって旺盛になるため、野菜や花の種苗の多くはF1で、流通する野菜の大半を占めるとされる。ただしF1から採った種では親と同じ性質にならず、農家は毎作、種苗会社から種子を買う。
このトマトはF1品種なので、自分で採った種をまいても同じ実はならない。
F1スコア(F値)
F1 score
分類モデルの性能を測る指標で、適合率(陽性と予測したもののうち正解だった割合)と再現率(正解のうち見つけられた割合)の調和平均。2×適合率×再現率÷(適合率+再現率)で求め、両方が高いときだけ高くなる。正例と負例の数に大きな偏りがあるデータの評価によく使われる。
正解率は高いが、F1スコアが低いので不正検知の見逃しが多いとわかった。
F1の次は、どの業界でもF2が来る
放送局の編成会議で「F1層が弱い」と言えば、20〜34歳の女性の視聴者が少ないという意味になる。種苗店の店先で「これはF1です」と言えば、そこから採った種をまいても同じ実はならないという注意になる。モデルを評価している人にとってのF1は、性能を測る指標の名前である。サーキットのF1は、言うまでもない。同じ記号が四つの業界で別々のものを指していて、しかもどの業界にも、その隣にF2がある。
放送・広告のF2層は35〜49歳の女性で、50歳以上がF3層になる。Fは女性(Female)の頭文字で、男性はM1、M2、M3と数える。数字が大きいほど年齢が上というだけの、単純な並びである。
農業のF2は、F1どうしを掛け合わせてできる第二代を指す。F1は形質がそろうので種苗として流通するが、F2では親の性質がさまざまに分かれて出てくる。自家採種した種がF1と同じにならないのは、このためである。「P、F1、F2」という書き方は、英国の生物学者ウィリアム・ベイトソンが広めたものとされる。Fはラテン語で息子・娘を意味する filius に由来する filial(子としての)の頭文字で、世代の「子」を数えている。
スポーツでは向きが変わる。F1は Formula One、自動車レースの最高峰で、その下にFIAのF2、F3という育成カテゴリーが続く。数字が小さいほど上位なので、放送や農業とは逆に、1が頂点にあたる。Formula(規定)という名は、参戦車両が満たすべき規則から来ている。
AIの分野のF1スコアでは、数字は順番ですらない。適合率と再現率のどちらをどれだけ重く見るかを係数βで決めるF値の一種で、β=1のときがF1、β=2にして再現率を重く見るとF2になる。つまり1は、二つの指標を同じ重さで扱うという設定値である。F値の名は、情報検索の研究者ファン・レイスバーゲンが1979年の著書で示した別のF関数にちなみ、1992年のMUC-4会議で採用されたときに名づけられたと考えられている。ただし記録ははっきりせず、諸説あるようだ。
並べると、Fは女性、子としての世代、規定、F値とすべて別のものである。年齢の段階、世代、カテゴリーの格、重みの設定と、数字の意味も揃っていない。それでも各業界にはF2まで用意されている。1の次に2を置くのが、どの業界でも手近な数え方だったのだろう。ただしこれは推測で、各業界の命名の経緯からは裏づけられない。
冒頭の編成会議でF2層の話が出れば、それは35〜49歳の女性のことだ。同じ会議室に種苗会社の人がいたら、おそらく別のF2を思い浮かべている。