略語

FA

エフエー

6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

機械・生産

ファクトリーオートメーション(工場の自動化)

Factory Automation

工場の生産工程を、産業用ロボットや工作機械、制御機器で自動化する仕組みの総称。人手による作業ミスを減らし、生産性を上げるために導入する。制御機器メーカーでは、PLC(工場設備を動かす制御装置)などの製品群を「FA機器」「FA事業」と呼ぶ。

ラインのFA化を進めて、検査工程の人手を減らす。

スポーツ・フィットネス

フリーエージェント(プロ野球:FA権)

Free Agent

プロ野球で、所定の期間を一軍で過ごした選手が得る、他球団と自由に契約できる権利。NPBでは出場選手登録145日以上のシーズンを1シーズンと数え、8シーズン(2007年以降のドラフトで入団した大学・社会人出身は7シーズン)で国内FA、9シーズンで海外FAの資格を得る。

今季で国内FA権の取得条件を満たすので、オフに宣言するかが注目されている。

コンサルティング

ファイナンシャル・アドバイザー(M&Aの財務アドバイザー)

Financial Advisor

M&Aで売り手か買い手のどちらか一方と契約し、その依頼者の利益を最大にするよう助言する専門家。スキーム検討、企業価値の算定、資料作成、交渉支援、デューデリジェンス(買収前の調査)の支援まで担う。双方の間に立つ仲介とは立場が異なる。

買収側のFAに就いて、対象企業の価値算定と交渉方針を詰めた。

航空

客室乗務員

Flight Attendant

旅客機で乗客の安全確保と機内サービスを担う乗務員を指す英語の呼称、またはその略。日本の航空会社では「客室乗務員」「キャビンアテンダント」「キャビンクルー」など呼び方が分かれ、「フライトアテンダント」を使う会社もある。

FAは搭乗前のブリーフィングで、保安要員としての役割を確認する。

半導体・電子部品

故障解析・不良解析

Failure Analysis

半導体デバイスなどが仕様どおり動かなくなった原因を、電気的・物理的な証拠から突き止める作業。故障箇所をチップ上で特定し、観察して原因を明らかにし、再発防止につなげる。JEITAが手順と技術用語をまとめた技術資料を出している。

市場不良品のFAで、配線の断線箇所を特定した。

医療・医学

蛍光眼底造影

Fluorescein Angiography

眼科で、フルオレセインという蛍光色素を腕の静脈から注射し、眼底(目の奥)を連続撮影して網膜や脈絡膜の血流の様子を見る検査。糖尿病網膜症、網膜血管の閉塞や炎症、加齢黄斑変性などの診断と、治療方針や経過の判断に使う。検査後は尿が黄色くなったり、吐き気やかゆみが出たりすることがある。

黄斑浮腫の範囲を確かめるために、FAを予約した。

縛りが解けるFAと、縛られるFAがある

「買収側のFAに就く」と聞いて、プロ野球の選手がどこかの球団に移る話だと思う人は、まずいないだろう。ただ、FAを「自由になること」と覚えた頭には、「就く」という動詞が引っかかる。自由な身になった人が、なぜ誰かに就くのか。

野球のFAから見ていく。FA制度が日本のプロ野球に入ったのは1993年のオフだった。それまでは球団に選手の拘束権があり、選手は自由に移籍できなかった。FAとは、その拘束が解けることを意味した。初年度に最初の移籍を実現させたのは松永浩美で、前年にオリックスから阪神へ移っていた彼は、故障と不振で80試合の出場にとどまり、契約更改も難航していた。その彼が選んだ行き先は、地元の福岡だった。

縛りが解ければ、動くのは自分のためである。

M&Aのファイナンシャル・アドバイザー(FA)は逆に、縛りを引き受ける側にいる。売り手か買い手のどちらか一方と契約し、その依頼者の利益を最大にするために、企業価値の算定から交渉の支援までを担う。双方の間に立つ仲介とは立場が違う、とM&A業界の解説は書いている。野球のFAが球団との契約から離れる身分なのに対して、こちらは一社との契約で動きが決まる職業である。「就く」が引っかかった理由は、ここにあった。

では、航空のFAはどうか。JALは1996年10月に「スチュワーデス」をやめ、「フライトアテンダント」と呼ぶようになった。ANAは1987年までスチュワーデスを使い、翌年から「客室乗務員」に改めている。つまり日本の空でFAという呼び名が世に出たのは、野球にFA制度が入った3年後にあたる。この偶然は、さすがに出来すぎている気がする。ただし、2つのFAが互いに影響し合ったという証拠はない。Free AgentとFlight Attendantは、綴りが重なっただけの別の語である。

それでも並べてみると、3つの動きの向きは違う。野球のFAは自分の契約のために、M&AのFAは依頼者の利益のために、客室のFAは乗客の安全とサービスのために動く。同じ二文字が、自分、依頼者、乗客と、別々の相手を向いている。

残る3つのうち、工場のFAと半導体の故障解析のFAは、人でさえない。どちらも仕事の相手は、止まった設備や動かなくなったチップのほうだ。

最後の眼科のFAには、人が出てくる。ただし見られるのは、その人の目の奥である。蛍光眼底造影は、フルオレセインという蛍光色素を腕の静脈に注射して眼底を連続撮影し、網膜や脈絡膜の血流の様子を見る検査で、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性の診断、治療方針の判断に使われる。検査のあとは尿が黄色くなることがある。チップの断線箇所を突き止める解析と、血流の様子から目の異常を探る検査は、どちらも外からは見えない場所を撮って確かめる作業だ。ただ、後者では撮られる側に意思がある。「黄斑浮腫の範囲を確かめるために、FAを予約した」という一文の主語は、検査をする医師ではなく、予約を入れた本人になる。

1993年の冬、拘束から解かれた選手が最初にしたのは、地元に戻ることだった。誰のために動くかを自分で決められる立場は、FAのなかでも、1993年の野球にしかなかったのかもしれない。