略語

FC

エフシー

8つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

スポーツ・フィットネス

フットボールクラブ(サッカークラブ)

Football Club

サッカークラブの名称につける記号で、チーム名の頭や末尾に置いてクラブ名の一部として使う。日本ではFC東京やFC大阪のように、Jリーグのクラブ名にも多く見られる。

地元のFCがJ3への昇格を決めた。

小売・店舗

フランチャイズチェーン(加盟店)

franchise chain

本部が加盟店に商標の使用権や経営ノウハウを与え、加盟店が加盟金やロイヤリティを払って同じ看板で営業する仕組み。コンビニ各社は直営店とFC加盟店の両方を持ち、FC店のオーナーは本部とは別の独立事業者として扱われる。

この店舗は直営ではなくFC加盟店として運営されている。

芸能・タレント

ファンクラブ

fan club

タレント・声優・アーティストなどの公式ファンクラブの略。会員は月額や年額の会費を払い、限定の記事・動画、会員価格のグッズ、ライブやイベントのチケット先行販売を受ける。運営側は会員管理、コンテンツ更新、収益管理をまとめて担う。

ファンクラブ限定のチケット先行抽選に申し込んだ。

エネルギー

燃料電池

Fuel Cell

水素と酸素を電気化学反応させて電気を取り出す発電装置で、同時に出る熱も給湯に使える。家庭用のエネファームには固体高分子形(PEFC)や固体酸化物形(SOFC)が使われ、2009年に市場投入された。

家庭用FCで発電した熱をお湯として使う。

インフラ・クラウド・セキュリティ

ファイバチャネル

Fibre Channel

サーバーとストレージを結ぶSAN(ストレージエリアネットワーク)用の高速データ転送方式。主に光ファイバーで接続し、8・16・32Gbpsなどの速度がある。LANとは別の専用ネットワークを組むことが多く、LAN上に載せるFCoEという方式もある。

ストレージとはFCスイッチ経由で接続している。

ゲーム・eスポーツ

ファミリーコンピュータ(ファミコン)

Family Computer

1983年に任天堂が発売した家庭用ゲーム機の略称。ゲーム周辺では「ファミコン」と並んで「FC」と書かれ、後続機のSFC(スーパーファミコン)と区別するときにも使う。海外版はNES(Nintendo Entertainment System)。

FC版とSFC版で、同じソフトの内容が違う。

生命科学・バイオ

Fc領域(抗体の尾部)

Fragment crystallizable region

抗体のY字の脚にあたる部分で、Fc受容体や補体の一部のタンパク質と結合する。抗体が免疫系を働かせる窓口になり、オプソニン化した粒子の認識や細胞溶解、肥満細胞などの脱顆粒を引き起こす。IgGでは重鎖の定常領域(CH2、CH3)からなり、表記は小文字の「Fc」。

抗体のFc領域に結合する二次抗体を使って検出した。

医療・医学

熱性けいれん

febrile convulsion

小児科の診療で、発熱に伴って乳幼児に起こるけいれんをカルテや申し送りで短く書くときの略語。既往歴などの記載に使われ、英語圏の医学略語集にも febrile convulsion の略として載っている。同じ病態は febrile seizure(FS)とも呼ばれる。

既往にFCがあり、今回も38度台の発熱でけいれんを起こして受診した。

結晶になったから、Fcと呼ばれた

FCの八つの意味を並べると、六つまでは役割を名乗っている。クラブ、加盟店の連鎖、ファンの会、発電装置、サーバーとストレージを結ぶ回線、家庭用ゲーム機。何をするものか、何のためのものかが、そのまま名前になっている。

残る二つは毛色が違う。生命科学のFcと、医療のFCである。

まずFcから。Fragment crystallizable、直訳すれば「結晶化しうる断片」である。抗体のうち、免疫系を動かす窓口にあたる部分が、働きではなく結晶になるという性質で呼ばれている。重要な部分ほど、それらしい名前を持っていそうなものなのに。

きっかけは1959年、ロドニー・ポーターの実験にある。ウサギのIgG抗体を酵素パパインで切ると、同じくらいの大きさの断片が三つできた。二つは抗原に結合する力を保っていて、Fab(抗原と結合する断片)と呼ばれた。三つめは抗原に結合せず、しかも実験室の条件で容易に結晶になった。この三つめがFcである。

手元にあったのは、「抗原に結合しない」という否定の情報と、結晶になるという手触りだけだったのだろう。働きの名前をつけようにも、働きがまだわからない。だから、わかっていることで呼んだ。そう考えれば、この名前の付き方は不自然ではない。ただし、ポーター自身の命名の事情までは確かめていない。

のちにFcは、Fc受容体や補体の一部と結合することがわかった。異物に目印をつけて食細胞に認識させる、細胞を溶かす、肥満細胞から中身を放出させる、といった反応の入り口である。名前がつけられたときには、誰もその役割を知らなかった。名前は変わらず、役割だけが追いついた。

医療のFCは、小児科のカルテや申し送りに出てくる。熱性けいれん、febrile convulsion の略で、発熱に伴って乳幼児に起こるけいれんを指す。既往歴の欄に「FCあり」と一行で済ませるための書き方だ。こちらも役割の名前ではない。熱が出て、けいれんが起きた。目の前で起きたことを、二語並べて呼んでいる。同じ病態は febrile seizure、略してFSとも呼ばれる。ただ、Fcと違って、この名前に追いつくべき「働き」は見当たらない。名前は、起きていることをそのまま言い当てている。

役割を名乗るほうのFCは、また事情が違う。FC東京やFC大阪の「FC」は、最初からクラブだと名乗るための記号である。ファミコンは1983年7月15日に任天堂が発売した本体で、のちのスーパーファミコン(SFC)と区別するときに、FCとも書かれる。どちらも、名づける側が対象をわかったうえで付けた名前だ。Fcだけが、対象をまだ知らないうちに付けた名前である。

表記を見ると、抗体のFcは小文字のcで書く。ほかの七つは大文字が二つ並ぶ。ファンクラブの先行抽選を待つ人と、ゲームの版を見分ける人と、既往歴の欄にFCと書き込む人と、結晶になった断片を扱う研究者は、同じ二文字を見て、別々のものを思い浮かべている。