略語

FX

エフエックス

5つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

証券・投資

外国為替証拠金取引

Foreign Exchange

外国為替を英語で"Foreign Exchange"と表すことに由来して、外国為替証拠金取引は、通称、「FX」などと言われます。

出典:金融庁「外国為替証拠金取引」

証拠金を預け、円とドルのような2通貨の為替レートの上げ下げを予想して売買する取引の通称。預けた額より大きな金額を動かせるため、証拠金を超える損失が出ることもある。2通貨の金利差に応じて、スワップポイントという金利差調整分を日々受け払いする。

FXは証拠金の何倍もの取引ができる分、ロスカットの水準を先に確認しておく。

映画・映像・アニメ

特殊効果・視覚効果

effects(special effects / visual effects)

映像制作で、SFX(特殊効果)やVFX(視覚効果)の末尾にある語。「effects」の発音を字にしたもので、為替のFXとは語源が別。撮影現場で火薬や特殊メイクなどを使って実際に起こす効果がSFX、撮影後に合成やCGで加える効果がVFXと分けて呼ばれる。

この爆発はSFXで実際に撮るので、VFXでは背景の合成だけ頼みたい。

音響・レコーディング

エフェクト(効果)

effects

ミキサーで、音の加工(エフェクト)を指す表記。ミキサーの「FXセンド」は各チャンネルの音を外部のエフェクターへ送る出力で、チャンネルごとに送る量を変えられる。語源は為替のFXとは別で、effectsの発音を字にしたもの。

ボーカルのFXセンドを少し上げて、エフェクトを深めにかけてください。

防衛・安全保障

次期戦闘機

Fighter-eXperimental(F-X)

航空自衛隊が将来の主力戦闘機を選ぶ、または開発する計画につけてきた呼び名。「F」は戦闘機(Fighter)、「X」は実験的(eXperimental)の意で、F-104やF-15、F-35Aの選定もF-Xと呼ばれた。現在はF-2の後継として日英伊が共同開発する次期戦闘機(GCAP)も、F-Xとも呼ばれる。

F-Xの機種選定では、輸入と国内開発のどちらが運用や産業基盤に合うかが論点になった。

ゲーム・eスポーツ

エフェクト(視覚効果)

effects(visual effects)

ゲーム開発で、爆発・炎・煙・魔法といった画面上の演出をまとめて呼ぶ略記。パーティクル(多数の小さな粒子で火や煙を表す仕組み)などで作る。担当者は「FXアーティスト」と呼ばれ、見た目に加えて処理負荷の最適化も仕事に含まれる。語源は為替のFXとは別で、effectsの発音を字にしたもの。

必殺技のFXは派手にしたいが、スマホでは描画負荷が高すぎるので粒子数を減らそう。

FXは、縮めた語と聞こえた音だった

ミキサーのつまみに「FX」と書いてある。証券会社の口座画面にも「FX」と出ている。片方は音にエフェクトをかける回路で、もう片方は証拠金を預けて通貨を売り買いする取引だ。同じ二文字なのだから、どこかでつながっているに違いない、と思いたくなる。

つながっていなかった。為替のほうは、金融庁の説明によると、外国為替の英語 Foreign Exchange に由来する通称である。映像と音響のほうは、辞書の説明では effects の発音を字にしたものだ。F は「エフ」、X は「エックス」で、続けて読めば「エフェクツ」になる。語を縮めたのではなく、聞こえた音に字を当てている。

ところが、為替の側にも引っかかるところがある。Foreign Exchange の頭文字をつなげれば FE のはずで、FX にはならない。X は Exchange の ex を一字で書いたのだろうとは思う。ただ、その点を説明した資料は確認できていない。

では、どちらが先にあった二文字なのか。

音の当て字のほうは古い。英語の辞書には、SFX という語が1965〜70年ごろの記録として載っていて、sound か special に、effects の発音綴りである FX をつけた形だと説明されている。

為替のほうは、日本の個人にとっては新しい。1998年4月に改正外国為替及び外国貿易法が施行されて、為替取引を銀行に限る仕組みが外れた。同じ年の10月8日、ダイワフューチャーズが「マージンFX」の名前で証拠金取引を売り出し、個人の最初の注文が入った。この日は今、「FXの日」という記念日になっている。つまり、日本の個人投資家が口座画面で「FX」を見るようになったとき、映画やレコーディングの現場では、その二文字はすでに別の意味で使われていた可能性が高い。銀行間の取引で FX という呼び方がいつからあったかは、確認できていない。

取り違えは、起きてもおかしくない。「FXを上げて」と言われてミキサーの前で証拠金の話を始める人はいないだろうが、検索窓に二文字だけ打てば、両方が同じ画面に並ぶ。

ボーカルにだけエフェクトを送る FX センドのつまみと、円とドルを売り買いする注文のボタンは、同じ二文字を別々の道で手に入れている。一方は Foreign Exchange から縮めて、もう一方は effects を耳で聞いて。