ゲート
ゲート
9つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
ターミナルゲート
gate
コンテナターミナルの出入口。船名や目的地、コンテナの外観やコンテナナンバー、シールナンバーを確認する。
コンテナターミナルの出入口にある関門。トレーラーが搬出入するとき、受付をして、コンテナの番号やシール、外観の損傷を確認する。ゲートが開く時間(ゲートオープン)と閉まる時間(ゲートクローズ)が貨物の搬入期限を決めるため、荷主や運送会社の段取りに直結する。
ゲートクローズに間に合わないので、搬入は明日のゲートオープンを待つことになった。
ゲート(射出成形金型)
gate
射出成形で、溶けた樹脂が金型の空洞(キャビティ)に流れ込む入口の部分。位置や大きさによって、樹脂の流れる距離や、流れが合流してできる線(ウェルドライン)の出方が変わる。成形後は製品から切り離すため、ゲート跡の処理も設計で考える。
ウェルドラインが目立つので、ゲートの位置を中央寄りに変えて金型を直した。
ゲート(電極)
gate
MOSFET(金属酸化膜半導体の電界効果トランジスタ)で、電流を入り切りする制御用の端子と電極。絶縁膜で基板から隔てられており、ゲートに加えた電圧によってソースとドレインの間を流れる電流が変わる。水道管の弁にたとえられる。
ゲート電圧がしきい値を超えると、ドレイン電流が流れ始める。
ゲート(競馬の発馬機)
starting gate
競馬で出走馬をそろってスタートさせるための発馬機。スターターが管理し、馬を1頭ずつ枠に入れてから一斉に扉を開く。デビュー前の馬は、ゲート内でおとなしく待ち、まっすぐ飛び出せるかを見るゲート試験に合格しないと出走できない。
あの馬はゲートが遅いので、出遅れが心配だ。
ゲート(プラモデル)
gate
プラモデルで、部品を枠(ランナー)につないでいる細い接続部。ニッパーで切り離すが、一度ランナー側を少し残して切り、あとで部品側に残った分を切ると、切り口が白くなりにくい。切り跡を削って整える作業をゲート処理と呼ぶ。
ゲート跡が白く残ったので、ヤスリで整えてから塗装した。
搭乗ゲート(搭乗口)
boarding gate
空港で旅客が航空機に乗り込む搭乗口。便ごとにゲート番号が割り当てられる。航空会社は出発時刻の30分前ごろまでに来るよう案内しており、締切(JALの国際線では出発10分前)を過ぎてゲートに着くと、その便には乗れないことがある。
出発10分前を過ぎて搭乗ゲートに着いたため、その便には乗れなかった。
ゲート(ノイズゲート)
noise gate
設定した音量(スレッショルド)を下回った信号をカットして、小さなノイズを取り除くエフェクター。アタックで開く速さ、リリースで閉じる速さを決め、音の切れ目を自然に聞かせる。レコーディングやライブで、ギターのハム音やドラムの他の音の被りを抑えるときに使う。
ギターが鳴っていない間のノイズが気になるので、ゲートのスレッショルドを少し上げた。
ゲート(アルペンスキーの旗門)
gate
アルペンスキーの回転・大回転で、コース上に立てたポールの組。選手はこの間を通って滑り、順にくぐり抜けながらタイムを競う。旗門の並べ方(セット)で競技の難しさが変わる。
2本目は旗門の間隔が詰まったセットで、ゲートを外さないようにリズムを刻んで滑った。
プラモを切るゲートは、樹脂が入ってきた入口
プラモデルの部品をランナーから切り離すとき、ニッパーを入れる細い接続部を「ゲート」と呼ぶ。門である。切って外す場所なのに、なぜ門なのか。出口と呼ぶほうが自然な気がする。
答えは工場にある。その細い部分は、樹脂が部品の形の空洞に流れ込んだ入口そのものだ。射出成形では、溶かした樹脂が機械のノズルから流路(ランナー)を通り、ゲートを抜けて金型の空洞(キャビティ)に入る。冷えて固まると、部品は流路ごと枠の形で出てくる。模型店の棚にあるランナーは、樹脂が通った道筋をそのまま残している。
金型設計の解説(MONOist「金型設計屋2代目が教える『金型設計の基本』」)には、ゲートは流路のなかで最も狭い部分に設定する、とある。狭いのは樹脂の流れを整えるためだ。切り離しやすくなるのも、そのおかげなのだろうとは思う。ただ、そこまで書いた資料は確認できていない。
確かなのは、同じ場所の後始末を、立場の違う二者がしていることだ。金型を設計する人は、成形後に製品から切り離すゲートの跡をどこに残すかまで考える。模型を作る人は、タミヤの解説のように、ランナー側を少し残して一度切り、部品側に残った分をあとで切る。切り口が白くなりにくいからだ。時間も道具も違うのに、手をかけているのは同じ一点である。
ほかの業界のゲートは、通すか止めるかの話になる。コンテナターミナルのゲートは、開く時間と閉まる時間が貨物の搬入期限を決める。空港の搭乗ゲートも、締切を過ぎると乗れないことがある。競馬の発馬機は、馬を枠に入れてから一斉に扉を開ける。MOSFETのゲートは、加えた電圧でソースとドレインの間の電流を変える。音響のノイズゲートは、設定した音量を下回った信号をカットして、ギターが鳴っていない間のハム音を消す。
水の側にもゲートはある。ダムや水路の扉と開閉設備で、国土交通省の「川なび」は「水の出入り口になっているところを『ゲート』といいます」と書いている。入口とも出口とも決めず、出入り口と呼んでいるのが目を引く。アルペンスキーの旗門は、扉さえない。コース上に立てたポールの組で、選手はその間をくぐって滑る。塞ぐものは何もなく、並べ方(セット)で難しさが変わるだけだ。入れるか、待たせるか、流すか、削るか、くぐらせるか。どれも出入りを仕切る場所だ。
すると、プラモのゲートはどちらなのか。樹脂が流れているあいだは通路で、固まったあとは切断の点になる。通路だった場所が、役目を終えて切り口になる。出口と入口が同じ場所を指しているのは、見る時点が違うからだ。ダムの扉を「出入り口」と呼ぶのも、同じ理屈なのだろう。
ゲート跡をヤスリで整えるとき、削っているのは、樹脂が最初に流れ込んだ場所である。