ガード
ガード
3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
ガード(バスケットボール:後衛/アメリカンフットボール:オフェンスラインの選手)
guard
バスケットボールでは、ボールを運んで攻めを組み立てるポイントガードや、外角からの得点を担うシューティングガードなど、後衛の選手をいう。アメリカンフットボールでは、攻撃ラインの中央にいるセンターの左右に1人ずつ並び、相手の守備を押さえる選手をいう。ボクシングなどでは防御の構えを指す。
あのガードはパスもシュートも上手いので、コンボガードとして起用されている。
ガード(線路が道路の上を通る橋・高架橋)
girder(英語 guard とは別語)
道路をまたいで架け渡した、鉄道線路の通る橋。
鉄道線路を道路の上に通すための橋や、市街地の高架橋をいう。語源は橋桁を意味する英語の girder で、防御の guard とは別の語。高架の下の空間は「ガード下」と呼ばれ、店舗や倉庫に使われる。
駅の手前のガードをくぐると、商店街の入口に出る。
ガード(ガード節・ガード条件)
guard / guard clause
プログラミングで、処理を先へ進めてよいかを判定する真偽値の条件式をいう。関数の冒頭に置いて、条件を満たさない入力をその場で return や例外で打ち切る書き方はガード節(アーリーリターン)と呼ばれ、入れ子の if を減らすために使う。Haskell などの関数型言語では、パターンが一致しても条件が偽ならその分岐を飛ばすためにパターンマッチへ添える。
引数が null のときは最初のガード節で return し、本処理の if の入れ子を浅くした。
門番の語と桁の語が、同じ表記になっている
駅の手前の「ガード」をくぐると、商店街の入口に出る。頭上を電車が通る橋に、守るものがあるとは思えない。それでも「ガード」と呼ぶのはなぜだろうか。
答えは、守る語ではないからだ。デジタル大辞泉は語源を「girderから」とし、意味を「道路をまたいで架け渡した、鉄道線路の通る橋。」と書く。girder は橋桁や梁のことで、英語版Wiktionaryは gird に -er が付いた語と説明している。桁を指す語が、日本語では橋ぜんたいの呼び名になった。
一方、バスケットボールのガードは英語の guard で、本当に守る語だ。後衛からボールを運んで攻めを組み立てるのがポイントガード、外角から点を取るのがシューティングガードである。アメリカンフットボールでは、攻撃ラインの中央にいるセンターの左右に並び、相手の守備を押さえる選手を指す。英語版Wiktionaryは、フランス語の garder(守る、保つ)を経て、ゲルマン語の *wardāną(守る、保護する)までさかのぼれるとしている。
三つめのIT業界のガードも、この「守る」の側にいる。プログラムの関数の冒頭に、条件を満たさない入力をその場で return で追い返す文を置く。これがガード節で、アーリーリターンとも呼ばれる。ISSOHの解説によれば、これを使わないと条件が増えるたびにインデントが深くなるが、先に振り落としておけば処理の本筋が浅い位置に残る。英語版Wikipediaは、Haskell や Erlang など多くの言語で、分岐に添える真偽値の条件式を guard と呼ぶと整理している。入口に立って、通してよいものだけを通す。球技の守備とは場所が違うが、役目は門番に近い。
こうして並べると、守る語が二つ、桁の語が一つになる。girder が短くなって guard と同じ「ガード」の表記に重なったのだろう、とは思う。ただ、これは音からの推測だ。鉄道でこの呼び名が使われはじめた時期は確かめられていない。バスケットボールのガードがなぜ後衛の位置を指すのかも、確かめられていない。
精選版日本国語大辞典は、ガードの下の部分が「倉庫、車庫、飲食店などに利用される」と書く。電車の轟音の下に店が並ぶ「ガード下」は、屋根に守られた場所のようにも見える。だが、その頭上の橋は、門番ではなく桁の名で呼ばれている。
商店街に入る前にくぐるガードは、何も追い返さない。