用語

引当

ひきあて

2つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

会計・税務・監査

引当金(ひきあてきん)

provision / allowance

将来の特定の費用又は損失であつて、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、(中略)引当金に繰入れ

出典:企業会計審議会「企業会計原則注解」注18

将来に発生する費用や損失を、原因が生じた期のうちに見積もって費用に計上し、貸借対照表に残高を載せる会計処理。企業会計原則注解18は、将来の特定の費用・損失であること、当期以前の事象に起因すること、発生の可能性が高いこと、金額を合理的に見積れることの4要件を求める。貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、製品保証引当金などがある。

決算で売掛金の回収見込みを見直し、貸倒引当金を積み増した。

物流

在庫引当

inventory allocation

受注や出荷指示が入った時点で、その注文分の在庫を帳簿上で取り置き、ほかの注文に回せないようにすること。倉庫の実在庫は出荷まで動かず、実在庫から引当数を引いた有効在庫(引当可能数)が「今売れる数」になる。WMS(倉庫管理システム)や基幹システムが受注データと連動して自動で行い、ピッキング・出荷の前段になる。JIS Z 8141(生産管理用語)も在庫管理の用語として定義しており、工場で製造指示に部品・材料を割り当てる場面でも同じ意味で使う。

受注データを取り込んだらWMSで自動引当され、有効在庫が0になった商品は欠品表示になる。

帳簿の上で先に取り置く「引当」の条件

会計の現場では「今期は引当を積む」と言い、倉庫の現場では「この注文には引当がかかっている」と言う。同じ二文字なのだから、同じ仕組みの別名だろうと思いたくなる。確かに、帳簿の上で先に取り置くという骨格は似ている。ただ、何を根拠に取り置くのかを比べると、二つは別のものになる。

取り置く根拠が、見積りか注文か

会計の引当(正式には引当金)は、将来に発生する費用や損失を、原因が生じた期のうちに見積もって費用に計上し、貸借対照表に残高を載せる処理である。企業会計原則注解18は4つの要件を求める。将来の特定の費用・損失であること、当期以前の事象に起因すること、発生の可能性が高いこと、金額を合理的に見積れること。貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、製品保証引当金がこの枠に入る。支出はまだ起きていない。起きる確率と金額を見積もって先に費用にするのだから、積んだ額と実際の支出額が食い違う余地は残る。

物流の在庫引当は、受けた注文を根拠にしていて、見積りに基づくものではない。受注や出荷指示が入った時点で、その注文分の在庫を帳簿上で取り置き、ほかの注文に回せないようにする。倉庫の実在庫は出荷まで動かない。実在庫から引当数を引いた有効在庫(引当可能数)が「今売れる数」になる。ベンダーの解説では、WMS(倉庫管理システム)や基幹システムが受注データと連動して自動で行うとされている。

会計は起きそうなことを、物流は受けた注文を根拠にして、実物や支出が動く前に帳簿だけを先に動かしている。

一つの定義に収まる範囲

物流側には、範囲の広さで迷う点がある。工場の所要量計画(MRP)で部品を製造指示に割り当てる引当は、受注への引当とは別の意味と考えたくなる。ところが JIS Z 8141(生産管理用語)は、両方を同じ「在庫引当」の定義に含めている。番号7310の定義は「注文又は出庫要求に対して、在庫台帳の在庫残高にその量を割り当て引き落とす行為」で、「注文」にも「出庫要求」にも当てはまる書き方になっている。別の意味に分けず、物流の一つの意味として扱えるのは、このためである。

同じ JIS Z 8141 には「非常備品(引当品とも呼ぶ)」という語もある。在庫を持たず、必要になるたびに調達する資材のことだ。見出し語は「引当品」なので、「引当」の別の意味にはならない。

では、二つの引当は同じ語源から来たのか。今回は確認できていない。書けるのは、帳簿上で先に取り置く処理の形が似ているところまでで、由来は不明のままである。「今期は引当を積む」と「この注文には引当がかかっている」が同じ二文字で呼ばれる理由は、まだわからない。