ヒット
ヒット
3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
安打(野球)
hit
野球で、打者が打った球がフェア地域に落ちるなどして、野手のエラーや走者の封殺などによらず塁に生きた場合に記録される打撃成績。打率や安打数の元になる数字で、記録員が公認野球規則にもとづき、エラーかヒットかを判定する。同じ当たりでも判定次第で打者の成績が変わる。
記録員は打球を見て、ヒットかエラーかを判定した。
ヒット数(アクセス解析)
hit
アクセス解析におけるヒット数とは、ページのデータがリクエストされた回数です。
Webサーバーがファイルを返した回数を数えたアクセス解析の指標。1ページを開くだけでHTML・画像・CSSなど複数のファイルが要求されるため、ヒット数は閲覧数(ページビュー)よりずっと大きくなる。訪問者の多さを測る指標としては使いにくく、サーバーの負荷を見る目安として使われる。
ヒット数ではなくページビューとセッションで効果を報告します。
ヒット化合物
hit (compound)
創薬の初期段階で、ハイスループットスクリーニング(HTS、多数の化合物を一括で試験する手法)により標的への作用が見つかった化合物。初期のヒットは親和性が弱いことが多く、構造を少し変えた類縁体を作って性質を確かめ、有望なものを絞り込んで、より薬らしいリード化合物へ育てる。この工程を「ヒット・トゥ・リード」と呼ぶ。
HTSで得たヒット化合物の中から、リード化合物の候補を数系統に絞った。
「当たり」を誰が数えるかで、ヒットの運命が分かれる
2014年5月9日、レンジャーズのダルビッシュ有はレッドソックス戦で、9回2死までノーヒットノーランを続けた。ところが5月14日、同じ試合の7回2死にオルティーズが打った飛球が、当初の失策から安打に訂正された。野手が誰も触れなかった打球だとして、オルティーズが試合後に安打だと抗議したことがきっかけと報じられている(J-CAST ニュース、2014年5月19日)。訂正の結果、試合は「あと1人」ではなくなった。
試合の5日後に、数字のほうが動いたことになる。野球、アクセス解析、創薬の三つの業界は、どれも何かに「当たった」ことをヒットと呼ぶ。しかし、誰がいつ当たりと決めるのかは、業界ごとにまるで違う。
野球は人が決める
野球の安打は、公式記録員が決める。公認野球規則9.05は安打にあたる場合を挙げていて、一塁に生きたのが安打か失策かを決めることが記録員のおもな仕事になる。同じ打球でも判定次第で打者の成績が変わるため、ダルビッシュの試合のように、あとから記録が改まることもある。
Webは機械が数え、創薬は機械が拾う
Webサーバーのヒット数には、人の判定が入る余地がない。ITトレンドの解説は「アクセス解析におけるヒット数とは、ページのデータがリクエストされた回数です。」と書く。HTML1つ、CSS1つ、画像3つのページなら、1回開かれるだけで5ヒットになる。サーバーが要求を一つずつ機械的に数えるので、画像の多いページを1人が開くだけで数が膨らむ。いまの解析ツールが見るのはヒットではなく、ページビューやセッションだ。判定を挟まない数え方が、そのまま水増しにつながった。
創薬のヒットは、機械で拾う点ではサーバーの数え方に近い。ハイスループットスクリーニングで多数の化合物を一括で試験し、標的に作用したものを拾い上げる。ただし、拾ったものをそのまま使うわけではない。化合物開発会社のSygnature Discoveryは、性質の違う複数の試験を組み合わせて、偽陽性(本当は効いていないのに当たりに見えるもの)の危険を減らすと説明している。その先に、リード化合物を目指す「ヒット・トゥ・リード」の工程がある。
オルティーズの打球は、試合中は失策で、5日後に安打になった。創薬のヒット化合物も、拾った時点では候補にすぎず、確かめ直す工程が続く。