略語

HR

エイチアール

4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

人事・人材

人事・人的資源

Human Resources

人的資源、つまり企業にとっての資産としての人材を指し、そこから採用・育成・評価などを担う機能や部門の呼び名にもなった。日本企業の人事部に最も近い機能を指すとされるが、経営戦略にもとづき人材全般を扱うHR部門と、採用や評価などの管理業務を担う人事部を区別する説明もある。HRテックのように複合語にもなる。

来期の採用計画は、HRと現場の部長で先に擦り合わせておきます。

医療・医学

心拍数・ハザード比

Heart Rate / Hazard Ratio

臨床の現場では、1分間の心拍の回数(bpm)を示す「心拍数」を指す。バイタルサインの一つで、体温・血圧・呼吸数とともに用いられ、HRと略記される。一方、臨床研究や論文では、2群の事象の起こりやすさを比べる統計指標のハザード比を指す。どちらかは文脈で判断する。

HR 120の頻脈が続いているので、医師に報告します。

スポーツ・フィットネス

本塁打(野球)

Home Run

野球で、本塁打(打者が一塁から三塁までの各塁を踏んで本塁に生還する安打)の記録上の略称。打撃成績の項目の一つで、HRと略される。本塁打1本あたりの打数を示すAB/HRや、フライに占める本塁打の割合を示すHR/FBのように、打者の長打力を測る指標にも使われる。

今季のHRは30本を超え、打撃タイトル争いに加わっている。

分析・計測

高分解能(HRMS:高分解能質量分析)

High Resolution

質量分析などの機器分析で、近い値のピークを分けて測れる性能が高いことを示す語。HRMSなどと書き、整数に丸めると同じ質量の化合物でも、小数点以下の精密質量の差で見分ける。精密質量から化合物の組成式(どの元素が何個か)を絞り込む場面で使われ、TOF型やOrbitrapの装置が代表になる。

合成した化合物の組成式を確かめるため、HRMSの測定を依頼した。

「HR」の欄に人が入るのは、人事のときだけ

病棟のモニターの横に「HR 120」と書いてある。野球の成績表には「HR 30」とある。論文の結果の表には「HR 0.72」と載っている。どれも、HRという欄に入っているのは数字だ。

同じ並びで「HR」と言われて、数字が返ってこないのが人事のHRである。ここだけ、欄に入るのは人だ。心拍数も本塁打もハザード比も、数えたり測ったりした結果なのに、Human Resourcesだけは、数えられる側の人間そのものを指している。人はいつから「資源」になったのか。

古い話ではある。英語版Wikipediaによると、経済学者ジョン・R・コモンズは1893年の著書で「human resource」という語に触れているが、詳しくは論じなかったという。ところが、企業の部署の名前になるのはずっとあとで、長いあいだその部署は「人事管理(personnel)」と呼ばれていた。

名前が替わるのは遅い。アメリカの人事担当者の団体は、1948年にAmerican Society for Personnel Administrationとして発足した。SHRMの記事によれば、この団体は理事会で8対1の票決をして、1989年9月1日付でSociety for Human Resource Managementに改称している。「personnel」が古くなり、人事の世界で「human resource management」という言い方が広まっていたからだという。1960年代と1970年代にも改称の案はあったが、いずれも退けられていた。語が書物に現れてから、団体の名前に入るまで、およそ一世紀かかったことになる。

日本語の記事には、経営戦略にもとづいて人材全般を扱うHR部門と、採用や評価などの管理業務を担う人事部を分けて説明するものがある。名前を替えた団体の側にも、同じ期待があったのだろうとは思う。ただ、Weblioの解説は、HRを日本企業の人事部に最も近い機能と説明している。二つを分けて呼んでいる会社がどれだけあるかは、確かめられていない。

医療のHRは単純だ。心拍数の略で、1分間の拍数(bpm)を書く。バイタルサインとして、体温や血圧と並んで扱われる。臨床研究の論文では、HRはhazard ratioになる。2群のあいだで事象の起こりやすさを比べる指標だ。どちらかは、置かれた表で決まる。

人事のHRには、決まる表がない。「来期の採用計画は、HRと現場の部長で先に擦り合わせておきます」という一文のHRは、数字ではなく、採用を決める部署を指している。モニターの横の「HR 120」を見て、報告する相手を探すのは看護師だが、会議室のHRは、報告を受ける側の名前である。