IP
アイピー
7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
知的財産
Intellectual Property
この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの
発明・デザイン・著作物など、人間の創造的活動から生まれたものや、商標・営業秘密のような事業上の情報をまとめて呼ぶ言葉。特許権・著作権・商標権などの「知的財産権」として法的に守られる。契約書や知財部の実務では、権利の帰属やライセンスの範囲を決める対象になる。
共同開発で生まれたIPの帰属を、契約書でどう定めるかが交渉の焦点になった。
インターネットプロトコル
Internet Protocol
ネットワーク上で機器どうしがデータを届け合うための通信規約。機器を見分ける番号が「IPアドレス」で、ネットワーク設計やサーバー運用、アクセス制限の設定で日常的に出てくる。IPv4の在庫が尽きたことから、後継のIPv6への移行も運用の課題になっている。
社外からの接続は、許可したIPアドレスだけをファイアウォールで通すことにした。
半導体IP(設計資産)
Intellectual Property core
チップ設計に組み込める回路ブロックの設計データで、プロセッサやインターフェース回路などをライセンスの形で提供する。チップ設計者は自前で一から作らず、IPを買って組み合わせる。提供元は、ライセンス料や製造数に応じたロイヤルティで収益を得る。
このSoCは、プロセッサのIPを外部から調達し、通信回路だけ自社で設計した。
投球回(野球)
Innings Pitched
投手が試合で何イニング投げたかを表す記録。アウト1つが3分の1回にあたり、端数は「.1」「.2」と書く。5回2アウトで降板すれば「5.2」(5回3分の2)になる。先発投手がどれだけ長く投げたかを見る基本の数字。
先発は7回無失点で、IPが今季最長になった。
免疫沈降法/腹腔内投与
Immunoprecipitation / Intraperitoneal
実験室では二つの意味で使う。ひとつは免疫沈降法(Immunoprecipitation)で、目的のタンパク質に結合する抗体を担体に固定し、細胞抽出液などのサンプルから目的のタンパク質を捕捉して取り出す手法。もうひとつは腹腔内投与(intraperitoneal)で、動物実験などで薬液を腹腔内に注射すること。文脈で見分ける。
抗体を加えてIPを行い、ウェスタンブロットで結合タンパク質を調べた。
間質性肺炎
Interstitial Pneumonia
肺胞の壁(間質)に炎症や線維化が起きる疾患の総称。呼吸器の臨床や呼吸リハビリの文献では「IP」と略し、特発性肺線維症(IPF)などを含む。IP患者の運動療法や急性増悪といった文脈で使う。IPF・IIPなど似た略語があるので、文字数に注意して読む。
急性増悪で入院したIP患者に、呼吸リハビリをいつ始めるかを検討した。
ゲームIP(タイトル・キャラクターの権利)
Intellectual Property
ゲーム会社が権利を持つタイトルやキャラクターを、事業の資産として1つずつ数える呼び方。バンダイナムコエンターテインメントは『パックマン』『鉄拳』などを「27IP」と数え、ライセンシー(使用する企業)を募って展開を広げている。権利を持つ側はIPホルダーと呼ばれる。
新作の開発と並行して、既存IPのライセンス先を海外にも広げることにした。
「27IP」と数えるとき、何を一つと数えているか
バンダイナムコエンターテインメントは、『パックマン』『鉄拳』などを「27IP」と数えている。27件の特許、ではない。数えているのは、タイトルやキャラクターだ。
法律の側から見ると、これは少し変わった数え方に映る。知的財産基本法の第2条は、知的財産を「発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの」と定めている。法律のIPは、こうした種類のものをまとめて呼ぶ言葉で、特許権や著作権として守られる。契約書で揉めるのは、共同開発で生まれたIPの帰属と、ライセンスの範囲である。ゲームのIPは、その権利を持つ側、つまりIPホルダーが、タイトルやキャラクターを事業の資産として一つずつ数える単位になっている。綴りはどちらも Intellectual Property なのに、一をどこで切るかが違う。
半導体のIPは、また別の切り方をする。一つは、プロセッサやインターフェース回路といった回路ブロックの設計データだ。チップの設計者は一から作らず、これを買って組み合わせる。提供元の収入は、ライセンス料と、製造数に応じたロイヤルティである。ゲームでは権利を持つ側がライセンシーを募って広げ、半導体では使う側が買って組み込む。
この三つは、言葉の中身が近い。残りの四つは、同じ二文字が別の語の頭文字として立っているだけだ。
野球の投球回は、アウト1つを3分の1回と数える。5回2アウトで降板すれば「5.2」で、次のアウトで「5.3」にはならず「6.0」になる。ネットワークのIPは、通信規約のことで、機器を見分ける番号がIPアドレスだ。その在庫が尽きたために、後継のIPv6への移行が運用の課題になっている。
実験室には、一語のなかに二つの意味がある。抗体で目的のタンパク質を捕まえる免疫沈降法と、動物の腹腔内に薬液を注射する腹腔内投与が、どちらも「IP」と書かれる。「抗体を加えてIPを行い」と書いてあれば前者だと読めるが、見分けるのは文脈でしかない。呼吸器の臨床では、間質性肺炎を「IP」と略し、特発性肺線維症の「IPF」や、似た略語の「IIP」と並べて論じる。ここでは一字の違いで病名が変わる。
権利の種類で束ねる法律、名札で一つずつ数えるゲーム、ブロックを買う半導体は、同じ言葉を別の単位で数えている。投球回は、アウトが3つで一巡する野球の都合で桁が上がる。免疫沈降と腹腔内投与、間質性肺炎は、数える以前に、まず読み分けなければならない。
IPを27と数える会社があり、IPを5.2と数える投手がいる。