ジョイント
ジョイント
3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
共同企業体(JV)
joint venture
大規模な工事を同業の数社が共同で一括して請け負う形、またはそのために組む共同企業体(JV)を指す。代表となる1社を「表ジョイント」、ほかの参加企業を「裏ジョイント」と呼び分ける。
この案件は3社のジョイントで受注し、うちが表ジョイントを務める。
伸縮装置(橋の継ぎ目)
expansion joint
道路橋で、橋桁と橋桁、または橋桁と橋台の継ぎ目に設ける伸縮装置の通称。温度変化で桁が伸び縮みしても桁どうしがぶつからないよう隙間を確保し、その上を車が走れるように塞ぐ。鋼製やゴムジョイント、埋設ジョイントなどの型式があり、車が通るときの「ゴツン」という音の原因にもなる。
この橋は桁端のジョイントが傷んでいるので、次の点検で交換を検討する。
関節・可動部の接続パーツ
joint
プラモデルやフィギュアの工作・改造で、パーツどうしをつなぎ、曲げやひねりの動きを持たせる可動用の接続パーツ。模型メーカーが改造用に種類をそろえたセットで売っており、軸と穴を3mm径に統一して自由に組み合わせられるもの、連結して長くできるもの、ボールジョイント、T字・L字の形のものなどがある。手首などの関節に使ったり、ポリキャップと組み合わせて使ったりする。
腕の可動範囲を広げたくて、肘をジョイントパーツに置き換えた。
隙間を残す橋、束ねる工事、動かす模型のジョイント
橋を車で渡ると、桁の端でゴツンと音がする。あの継ぎ目が、土木の現場で「ジョイント」と呼ばれるものだ。継ぎ目という名でありながら、やっていることは隙間を残すことである。つなぐための部品が、つなぎきらないのはなぜか。
理由は温度にある。乗りものニュースの解説によると、橋に使う鋼や鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリートは温度変化で伸び縮みする。桁と桁、桁と橋台をぴったり付けておけば、夏に伸びたときに互いを押し合う。だから、ぶつからない分の隙間を最初から空けておく。ただ、空いたままではタイヤや歩く人の足が落ち込む。そこで伸び縮みに追従する装置で塞ぐ。これが伸縮装置で、現場の通称がジョイントというわけだ。
音の出どころも同じ記事に書かれている。タイヤが乗ると、舗装とは材質が違うために音が変わる。大型車が通れば、鋼の桁そのものが鳴ることもあるという。隙間を塞ぐ部品は、道路の中でいちばん弱い場所でもある。同じ記事は、設計上の交換の目安を20年、点検を5年ごととしている。
ところが建設会社の営業や現場代理人が「ジョイントで取る」と言うとき、指しているのは橋の部品ではない。土木用語辞典(Weblio掲載)は、大規模な工事を同業の数社が共同で一括して請け負う方法を「ジェーブイまたはジョイントという」と書く。共同企業体、JVのことだ。代表となる1社は「表ジョイント」、ほかの参加企業は「裏ジョイント」と呼ばれる。
橋のジョイントは、桁が伸びても壊れないように、つながる二つのあいだに余白を残す。JVのジョイントは、数社が組んで一つの工事を受ける。発注者から見れば請負は一件だが、その中身は複数の会社に分かれたままだ。一方は離れる余地をつくり、もう一方は離れていたものを束ねる。
三つめは、机の上にある。コトブキヤが売る改造用の「ジョイントセット」は、プラモデルやフィギュアのパーツどうしをつなぎ、曲げやひねりの動きを持たせる部品だ。商品ページには3mm径のジョイントセットとあり、軸と穴の径をそろえてあるから、手持ちのパーツに差して組み合わせられる。ここでは隙間を残すのでも束ねるのでもなく、つないだ先が動くことが目的になる。ただし、軸と穴がはまる以上、はまった軸のまわりで回る余地しかない。動く範囲は、つなぐ側が決めている。
橋の継ぎ目も、動く範囲を決めている。伸び縮みする分だけを許し、車の重さは受ける。同じ語でも、離れる余地、束ねる約束、動く範囲と、つなぎ方の何を決めるかが違う。
なぜ同じ語になったのか、英語の joint がどの現場にどう入ったのかは、確かめられていない。確かなのは、同じ橋の工事に、部品のジョイントとJVのジョイントが同時に現れうることだ。数社のJVが受注した橋の点検調書に「桁端のジョイントが傷んでいる」と書かれても、書いた人も読む人も取り違えない。
次に橋を渡ってゴツンと鳴ったら、その真下には、温度が変わっても桁が互いを押さないように空けられた隙間がある。