用語

後見

コウケン

2つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

法律・知的財産

後見(未成年後見・成年後見)

guardianship

民法上、本人に代わって財産管理や契約などの法律行為を行う保護の制度。親権者がいない未成年者に対する未成年後見と、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた人に対する成年後見がある。後見する人は後見人、保護される人は被後見人と呼ぶ。判断能力の程度が軽い場合は保佐・補助という別の類型になる。

認知症の母について、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てた。

演劇・舞台・伝統芸能

後見(舞台の介添え役)

kōken (stage assistant)

能・狂言・歌舞伎・舞踊などで、演技者の後方に控えて、装束の直し、小道具の受け渡し、その他演技の進行の介添えをする者

出典:デジタル大辞泉(小学館)/コトバンク

能・狂言・歌舞伎・日本舞踊で、舞台の奥に控えて上演を陰で支える役。演者の衣装が崩れれば舞台上で整え、扇などの小道具を手渡し、作り物の出し入れも受け持つ。能では後見座に座り、シテ(主役)が舞台で倒れるなどしたときは代わって舞い継ぐ責任を負うため、熟練の役者が務める。歌舞伎では黒衣(くろご)姿が多いが、舞踊では素顔に黒紋付・袴、様式性の強い演目では裃で務める。

後見が扇を手渡し、主役の衣装の乱れをさっと直した。

「うしろみ」の音読が法廷と能舞台に分かれた

家庭裁判所の審判書類に出てくる「後見」と、能楽堂の後見座に座る人。どちらも「うしろみ」という和語を音読みにした語で、背後から支えることを指した。それでも現代の暮らしで、この二つが同じ場所に並ぶことはまずない。コトバンクに収められた辞書の解説をたどると、分かれ目はかなり古いところにある。

先に広がったのは武家の「後見」

辞書の記述によると、この語はまず、幼い主君や家長の後ろだてをする役目に使われた。鎌倉幕府では執権や連署が将軍を補佐する立場として、室町幕府では関東管領がこの名で呼ばれたとある。戦国時代の武家には、幼い家督相続者を支える「陣代」「番代」といった後見人もいた。

補佐される側は、自分では立てない、または立ちきれない状態にある。幼い将軍も、家督を継いだ子どもも、自分の名で動くには後ろに誰かが要る。法律の後見はこの構図を制度にしたものと読める。親権者のいない未成年者を支える未成年後見が、いちばん原型に近い。

大人に使われたのは2000年から

成年後見制度は、1999年の民法改正を受けて2000年4月1日に始まった。それ以前、判断能力が十分でない大人を守る仕組みは「禁治産」「準禁治産」と呼ばれ、旧民法には「成年後見」という語自体がなかったとされる。改正で、後見・保佐・補助の三つの類型と、本人が元気なうちに契約で備える任意後見が整った。後見という語が法律の世界で大人にも使われるようになったのは、2000年以降のことになる。

能の後見は、字のとおり舞台の後方、後見座に座る。装束の直し、扇などの小道具の受け渡し、作り物の出し入れを受け持つ。辞書にはさらに、シテが舞台で倒れるなどの事故があれば、ただちに代わって演能を続ける責務があると書かれている。

補佐する人が、いざというときは本人に代わって務めを引き受ける。この形は法律の後見と同じである。見え方は逆になる。歌舞伎の黒衣は、黒をまとって観客の目に入らない約束事で成り立っている。法律の後見人は被後見人の名前で契約を結び、その記録が残る。

審判書類に名前が記される後見人と、後見座で観客に気づかれないまま扇を持つ後見。「うしろみ」という一つの和語から、記録に残る後ろだてと、見えないことが務めの後ろだてが出てきた。