用語

レイヤー

レイヤー

7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

美容・ウェルネス

レイヤーカット(段差をつけるカット)

layer cut

髪の長さを部分的に変えて段差をつけるカット技法。毛束を引き出して上側を短く、下側を長く切るため、髪が軽くなり動きが出る。頭の高い位置から段を入れるものをハイレイヤー、毛先だけに入れるものをローレイヤーと呼び分ける。

毛先が重いので、顔まわりだけローレイヤーを入れてください。

印刷・DTP・デザイン

レイヤー(画像・レイアウトの層)

layer

Photoshop、Illustrator、InDesign などのDTPソフトで、画像・文字・図形を透明なシートのように重ねて管理する仕組み。線画と着色、写真と文字などを別の層に分けておけば、他の要素に触れずに個別に修正できる。入稿時はレイヤーを統合するか残すかを印刷会社の指定に合わせる。

文字修正に備えて、入稿データはレイヤーを残したまま渡してください。

インフラ・クラウド・セキュリティ

レイヤー(OSI参照モデルの階層)

layer (OSI reference model)

ネットワーク通信の機能を、物理層からアプリケーション層までの7階層に分けて整理したOSI参照モデルの「層」。現場では番号で呼び、レイヤー2はMACアドレスで転送するデータリンク層、レイヤー3はIPアドレスで経路を選ぶネットワーク層を指す。L2スイッチ、L3スイッチといった機器の区別にも使う。

このスイッチはレイヤー3対応なので、VLAN間ルーティングも任せられる。

趣味・ホビー・玩具

レイヤー(コスプレイヤーの略)

cosplayer(語源は別)

アニメ・ゲーム・漫画のキャラクターに扮装する人「コスプレイヤー」の略称。コスプレ(costume play)とプレイヤーを組み合わせた和製の造語を縮めたもので、層を意味する layer とは語源が別。イベントや SNS で「レイヤーさん」のように使う。

撮影会場には人気作品のレイヤーが大勢集まっていた。

半導体・電子部品

レイヤー(多層基板の層)

layer (PCB)

プリント基板で、銅箔の配線層を数えた単位。4層基板、6層基板のように呼び、表裏の外層と、基板の内部にある内層から成る。層を重ねると1枚に多くの回路を載せて高密度にでき、内層に電源やグランドのプレーン層を置くと、電源の安定やノイズ対策に役立つ。

ノイズ対策のため、2層基板を4層基板に変えて内層をグランドにした。

AI・データ

レイヤー(ニューラルネットワークの層・ブロックチェーンの階層)

layer (neural network / blockchain)

機械学習では、ニューラルネットワークを構成する層。入力層・隠れ層・出力層に分かれ、各層が前の層の出力を変換して次へ渡し、層を深く重ねるほど複雑な特徴を学べる。ブロックチェーンでは、ビットコインやイーサリアムなどの基盤をレイヤー1、その上で処理を肩代わりして混雑や手数料を抑える仕組みをレイヤー2と呼び分ける。

精度が伸びないので、隠れレイヤーを1つ増やして学習し直した。

アウトドア・釣り・キャンプ

レイヤー(重ね着の層)

layering

気温や運動量の変化に対応するため、機能の違う衣服を重ねて着る考え方での一枚一枚。肌に近い順にベースレイヤー(汗を吸って発散する肌着)、ミドルレイヤー(保温する中間着)、アウターレイヤー(風雨や火の粉を防ぐ上着)と呼び、暑さ寒さに合わせて脱ぎ着して調節する。

冬キャンプはミドルレイヤーを厚手にして、焚き火のときだけ難燃素材のアウターレイヤーを重ねた。

外せる層と、外せない層

「レイヤーを一枚外してください」と言われたら、何が起きるか。

Photoshopを使う人は、レイヤーパネルの目のアイコンを消す。その層は画面から消え、押し直せば戻る。冬キャンプの人は、焚き火のそばで上着を脱ぐ。基板の設計者は、困った顔をする。美容師は、鋏を持つ手を止める。

同じ「層」という言葉なのに、外せる層と外せない層がある。分かれ目はどこにあるのか。

重ねたあとで一体になるかどうか、というのが私の見立てだ。多層基板は、内層の銅箔と、樹脂を染み込ませた絶縁シート(プリプレグ)を交互に重ね、熱と圧力をかけて一枚に固めて作る。固めたあとで、4層のうち内層だけを抜くことはできない。電源やグランドをどの層に回すかは、固める前の設計で決まっている。

美容室のレイヤーカットも、切った長さは戻らない。顔まわりだけにローレイヤーを入れるのか、頭の高い位置からハイレイヤーにするのか。選べるのは、毛束を引き出して鋏を入れる前だけだ。

画像のレイヤーは、この二つの逆に立っている。Photoshopに層の仕組みが入ったのは、1994年の3.0である。文字だけ直したい、線画と着色を別々に触りたい、という作業は、層を分けたまま持っていられるから成り立つ。ところが、その画像も統合すれば外せなくなる。入稿のとき、レイヤーを残すか統合するかを印刷会社の指定に合わせるのは、外せる状態で渡すか、固めた状態で渡すかの選択だ。

重ね着は、最初から脱ぎ着が前提である。肌に近い順にベース、ミドル、アウターと呼ぶのは、気温と運動量に合わせて、どれを足してどれを脱ぐかを決めるための名前だ。

では、ネットワークやAIの層はどちらなのか。どちらでもない、というのが答えに近い。OSI参照モデルの層は、固まってもいないし、脱げもしない。層どうしが決まった約束だけで接していて、IPアドレスで経路を選ぶ層は、その下がイーサネットのケーブルでもWi-Fiでも同じ形で動く。外すのではなく、下を差し替える。ニューラルネットワークは、隠れ層を一つ足せば学習し直しになる。層のあいだで受け渡す値が、全体を通して決まっているからだ。ブロックチェーンのレイヤー1は動かさず、混雑や手数料を抑える仕組みをその上に重ねてレイヤー2と呼ぶ。足すだけで、下は触らない。

コスプレイヤーの略の「レイヤー」だけは、そもそも層ではない。語源が別で、重ねるものも外すものもない。

入稿前のレイヤーパネルには、目のアイコンが縦に並んでいる。統合のコマンドを押すまでは、どの層もまだ外せる。