LB
エルビー
3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
ロードバランサー(負荷分散装置)
Load Balancer
ロードバランサー(Load Balancer=負荷分散装置)とは、サーバーにかかる負荷を複数のサーバーに分散するための装置。
Webサービスなどへのアクセスを複数台のサーバーに振り分け、1台に処理が集中しないようにする装置やサービス。ラウンドロビン(順番に割り当て)や最小接続数(接続の少ないサーバーを選ぶ)などの方式がある。死活監視(稼働状況の確認)で障害機を自動的に切り離すため、1台が止まってもサービスを続けられる。構成図ではLBと略して書かれる。
WebサーバーをLBの配下に3台並べて、障害時は自動で切り離す構成にした。
ラインバッカー(アメリカンフットボール)
linebacker
アメリカンフットボールの守備で、最前列のディフェンスラインの後ろ、スクリメージライン(攻防の境目)から3〜5ヤード下がった位置に構えるポジション。ランプレーを止め、パスプレーではレシーバーをマークし、ときにはブリッツ(突進)でクォーターバックに圧力をかける。ポジションの表記ではLBと略される。
守備ではLBが2人前に出て、ランを止めにいった。
LB培地
Lysogeny broth
大腸菌の培養に広く使われる液体・寒天の培地。トリプトン(タンパク質を分解した栄養源)10 g、酵母エキス5 g、塩化ナトリウム10 gを水1 Lに溶かし、オートクレーブ(高圧蒸気)で滅菌して作る。塩化ナトリウムを減らした低塩の処方(Lennox・Luria)もある。考案者のジュゼッペ・ベルターニはLBを lysogeny broth(溶原化の培地)の略としたが、Luria-Bertani medium や Luria broth と解されることも多い。
形質転換した大腸菌をアンピシリン入りのLB寒天培地にまいた。
LBの正式名を、考案者が53年後に訂正した
サーバーの構成図でも、アメフトの守備陣形図でも、培養室のボトルのラベルでも、書いてあるのは同じ「LB」の二文字だ。ロードバランサーも、ラインバッカーも、略さずに書けば誰も読み違えない。読み違えが起きて、しかも考案者本人が正すことになったのは、培地のLBだけである。
大腸菌を育てる培地LBは、1951年にジュゼッペ・ベルターニが発表した溶原性の研究論文で処方が公表された。赤痢菌(Shigella)の増殖とプラーク形成(ファージが菌を溶かして寒天上に残す透明な斑点)を最適にするために作った培地だった、と本人が書いている。
それから半世紀以上たった2004年、ベルターニは『Journal of Bacteriology』に載せた回想の追記で、こう記した。“For the historical record, the abbreviation LB was intended to stand for “lysogeny broth.”"(記録のために言えば、LBは「溶原化の培地」を意味するつもりだった)。1951年から数えて53年後の訂正である。
なぜ、そこまで放っておかれたのか。読み方がほかにいくつもあったからだろう。Wikipedia英語版によれば、1957年にはルリア(Luria)が、ベルターニの処方をそのまま踏襲した培地を「L broth」として書いている。二つの名前の頭文字を並べれば、LBは Luria-Bertani と読める。実際、Luria broth、Lennox broth、Luria–Bertani medium、さらには life broth まで、口頭ではそれぞれの読みが使われているという。ルリア説とベルターニ説が広まった経緯そのものは、確かめられていない。
処方の側も枝分かれしている。塩化ナトリウムを1 Lあたり5 gに減らしたものは、LB(Lennox)と呼ばれる。1951年の元の処方は、塩が10 gだった。略称の中身が定まらないうちに、処方にも別の人の名が付いたことになる。
一方、ほかの二つのLBは、略す前の語がはっきりしている。ロードバランサーは Load Balancer の略で、ラインバッカーは linebacker の略だ。ラインバッカーはスクリメージラインから3〜5ヤード下がって構える守備の位置で、辞書の記事によれば、1905年にミシガン大学のコーチが考案したという。
培地のLBだけは、考案者が思い浮かべた語と、読む側が思い浮かべた語がずれた。ベルターニにとっては lysogeny、読む側にとっては人の名前だった。冷蔵庫に並ぶLB寒天培地のプレートの二文字にも、そのどちらかが入っている。