略語

LD

エルディー

6つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

教育

学習障害

Learning Disabilities

基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。

出典:文部科学省「学習障害児に対する指導について(報告)」(平成11年7月)

知的発達に全般的な遅れはないのに、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するのうち特定の力の習得だけが著しく難しい状態。特別支援教育で、通常学級に在籍する児童生徒への指導や支援を考える際に使う。医学の診断名(限局性学習症)とは範囲の取り方が異なり、教育では「学習障害」の語が使われてきた。

読み書きだけが極端に苦手な子について、LDの可能性を踏まえた支援を担任と相談した。

演劇・舞台・伝統芸能

照明デザイナー(照明家)

Lighting Designer

舞台の照明プランを作る担当者。演出家や美術・衣裳のデザイナーと打ち合わせ、客席から役者が見えるかという機能面と、場面ごとの見た目の両方から灯りを設計する。台本にキュー(照明を切り替える合図)を書き込み、本番では操作卓のオペレーターがそれに沿って進める。

LDの仕込み図が上がったので、明日の吊り込みまでにバトンの位置を確認しておこう。

医療・医学

乳酸脱水素酵素

lactate dehydrogenase

ほぼ全身の細胞に含まれる酵素で、血液検査で肝臓・心筋・血液などの細胞が壊れたときに上がる値の項目名。検査室や健診の結果表ではLDと略され、LDHとも書かれる。測定法は国内のJSCC法から国際標準のIFCC法へ移行したが、基準範囲は124〜222 U/Lと変わらない。

貧血の精査で、LDとハプトグロビンを追加で測定した。

半導体・電子部品

レーザーダイオード(半導体レーザー)

Laser Diode

半導体のPN接合で発光させ、レーザー光を出す素子。小型で扱いやすく、光ファイバー通信の光源、光ディスクの読み書き、バーコードリーダ、レーザーポインタなどに使われる。部品表やデータシートではLDと略され、LED(発光ダイオード)と区別される。

この光モジュールに使うLDの発振波長を、データシートで確認しておいてください。

製薬・創薬

致死量

Lethal Dose

動物に物質を投与したとき、死亡が起きる用量。毒性試験では、試験集団の半数が死ぬ量をLD50と呼び、体重1kgあたりのmgで示して急性毒性の強さを比べる。新薬の開発では、有効な量と致死に近い量の隔たり(治療係数)を考える材料になる。LD1、LD99のように死亡割合を変えた表記もある。

マウスでのLD50が高く出たので、急性毒性は低いと判断した。

不動産(開発・取引)

リビングダイニング

Living Dining

間取り図や物件広告で、食事室を兼ねた居間を表す記号。「2LDK」のように台所のKと続けて書くほか、台所が独立した間取りは「LD・K」と書き分ける。広告でLDKと表示するには、不動産の表示に関する公正競争規約で居室兼食事室兼台所として使える広さと機能が求められ、居室数に応じた畳数の目安も示されている。

この間取りは、LDの隣に洋室が2部屋ある。

半年違いに生まれた、二つのLD

1962年9月16日の日曜、ニューヨーク州スケネクタディにあるGEの研究所で、一辺がおよそ0.44mmのヒ化ガリウムの結晶が、干渉の縞を伴う光を出した。最初の半導体レーザーとされる。光ったのはここだけではない。IBMのワトソン研究所とMITのリンカーン研究所も、同じ秋のうちに成功を報告している。互いを知らない三つの研究所が、ほぼ同時に同じ素子へ行き着いたのだ。

電子工学のLD、レーザーダイオードの誕生である。

半年あまり後の1963年4月6日、シカゴで、学校でつまずく子どもを抱えた親たちの会合が開かれた。登壇した心理学者サミュエル・カークは、数か月前に自分で作った「learning disabilities」という語を使って話した。聞いた親たちは、その語を自分たちの子の呼び名にし、これから作る全国組織の名前にもしたいと頼んだ。教育のLD、学習障害が、名前として動き出した瞬間だ。

レーザーは、名前がなくても光る。子どもたちはそうはいかなかった。当時、そうした不振は、怠けか、知能の低さか、親の育て方のせいだと見られていたという。原因が本人と家庭に向かうのだ。名前がつけば、同じ困りごとを抱える人を数えられ、集まれる。数か月後に生まれた団体は、いまのLearning Disabilities Association of Americaで、カークは連邦政府との連絡役も引き受けた。

日本の文部科学省が1999年7月にまとめた報告も、この語の中身を、全般的な知的発達に遅れはないのに、特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す状態としている。「知能の問題ではない」と最初に言い切る名前なのである。

ほかのLDは、名前の付き方が違う。致死量のLD50は、物でも人でもなく、測り方に付いた名だ。毒性を比べる指標としてこの半数致死量を用いる方法は、英国の薬理学者トレヴァンが1927年の論文で示したものとされる。乳酸脱水素酵素は、血液検査の結果表の欄で二文字に縮めて書かれる。照明デザイナーは、仕込み図や台本のキューに添えられる職名だ。

最後の不動産のLDは、名前のほうが部屋を縛る。広告で「LDK」と書くには、居室兼食事室兼台所として使える広さと機能が必要で、居室の数ごとに畳数の目安が定められている。学習障害の名は子どもを守るために求められ、リビングダイニングの名は、書く側に広さを求める。

賃貸サイトの間取り図で「2LDK」の二文字を見かけたら、その後ろに畳数の条件がついていることを思い出してほしい。