用語

ライナー

ライナー

8つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

海運・貿易

定期船

liner

定期船。特定の航路に定期的に運航される船舶のこと。

出典:横浜市港湾局 港湾用語集((公社)日本港湾協会「数字で見る港湾2014」より)

特定の航路を、決められた寄港地と日程に従って定期的に運航する船のこと。貨物や旅客の有無にかかわらず運航し、これで運ぶ貨物は「ライナー貨物(定期貨物)」と呼ばれる。対になる不定期船はトランパーという。

この航路はライナーが週一便で寄港するので、ライナー貨物として申し込みます。

スポーツ・フィットネス

ライナー(野球:直線的な打球)

liner

野球で、フライのように高く上がらず、空中を低く一直線に飛ぶ打球。ラインドライブともいい、「ライナー性の当たり」のようにも使う。

ショートの頭上を越えるかと思ったライナーを、ジャンプして捕られた。

鉄道

ライナー列車(有料の座席指定列車)

liner

乗車券のほかに「ライナー券」や座席指定券などの料金を払って座る列車。通勤時間帯などに走らせる、着席できる列車の名に使われる。料金や車両は会社ごとに違い、京阪は全車座席指定でライナー券が必要、東京メトロの「THライナー」は座席指定券が必要。

帰りは疲れたので、ライナー券を買って座って帰ることにした。

素材・化学

ライナー(段ボール原紙)

linerboard

段ボールシートの表面と裏面に使う板紙。波状の部分に使う中芯原紙と組み合わせて段ボールシートになり、段ボール箱の材料になる。

ライナーの強度を上げると、同じ段ボールでも箱の圧縮強度が変わる。

自動車・輸送機器

シリンダーライナー

cylinder liner

エンジンのシリンダー内壁に入れる筒状の部品で、ピストンが擦れて動く面になる。鋳造時にブロックごと鋳込む方式が現在の主流。冷却水路がライナー外面に直接触れる「ウエットライナー」は、ボア径の変更に対応しやすい一方、ブロックの剛性は下がる。

アルミブロックは摩耗しやすいので、鉄のライナーを鋳込んである。

土木・測量

ライナープレート(土留め材)

liner plate

熱延鋼板を加工した土木用の鋼製部材。深礎杭工事の土留めや、シールド工法による下水道工事の仮設土留めに使われる。前者は土中に残り、後者は工事が終わると多くが回収される。

立坑の掘削は、掘りながらライナープレートを組んで土留めをしていく。

機械・生産

ライナー(レベル調整板)

shim liner

機械の据え付け時に、床との水平をとる高さ調整に使う部材。スペーサーやシムライナーとも呼ばれ、機械と床の間にはさんで高さをそろえる。

水平が出ないので、ライナーを一枚足して高さを合わせた。

日用品・消費財

ライナー(コートの取り外せる裏地)

liner

コートなどの、取り外せる裏地のこと。ファスナーやボタンで着脱でき、季節や気温に合わせて付け外しする。キルティング素材のものもある。裏地を取り外せるコートは「ライナーコート」と呼ばれるが、これは和製英語とされる。

ライナーを外せば、春先まで同じコートで過ごせる。

船と打球は線から、コートの裏地は内張りから

球場で低く一直線に飛ぶ打球。港を決まった日程で出入りする定期船。段ボールの表と裏になる紙。エンジンのシリンダー内壁に入る筒。どれも「ライナー」と呼ぶ。八つもの意味が一語に集まっているのだから、たどれば一つの意味に行き着くに違いない、と思いたくなる。

英語の辞書は、そう書いていない。Wiktionary は liner の語源を二つに分けている。ひとつは動詞 line(内張りをする)に -er がついたもので、取り外せる覆いや裏地、蒸気機関やエンジンのシリンダー内張りが入る。もうひとつは名詞 line に -er がついたもので、大型の客船と、野球の line drive が入る。綴りが同じだけで、出どころは二本ある。

二本目の側は、日本語の辞書にも跡が見える。精選版日本国語大辞典は野球のライナーを「直線的に飛ぶ打球。ライン‐ドライブ。」と説明し、初出の実例に三宅大輔『野球』(1923年)の「又バントでライナーを打つ事は殆どないが、打てばライナーが飛んで」を挙げる。デジタル大辞泉は、同じ見出しに定期船、定期旅客機、定期長距離列車を並べる。線を引いたように飛ぶ球と、決まった航路を走る船が一項目に同居しているわけだ。ただ、船の意味が line のどの意味から来たのかは、Wiktionary にも書かれていない。

一本目の側は、手元の品でわかる。コートの取り外せる裏地は、ファスナーやボタンで着脱でき、春先に外して使う。デジタル大辞泉はこれにも「取り外しができるコートなどの裏」の語釈を与えている。シリンダーライナーは、ピストンが擦れて動く面になる筒で、鋳造のときにブロックごと鋳込む方式が主流だ。内側に当てて、本体の代わりに擦れ、傷む部品である。

では、残りはどちらの線に属するのか。段ボールの表裏になる板紙は、波状の中芯原紙をはさむ外側の紙で、裏打ちに近い。しかし Wiktionary の記述からは、どちらの語源とも言い切れなかった。立坑の土留めに組むライナープレートも、機械の下にはさんで水平を取る調整板も同じで、どちらの語源に入るのかは確かめられていない。ライナー券を買って乗る座席指定列車も、大辞泉が挙げる「定期長距離列車」とは語釈が違い、つながりは確かめられていない。

わかっているのは、二本の線が同じ荷物の中で出会いうることだ。定期船に積まれてライナー貨物になった段ボール箱を開けると、ライナー付きのコートが出てくる。船は名詞の line、コートの裏地は動詞の line から来た語で、箱の紙はどちらなのか、まだ決まらない。