ロング
ロング
3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
買い持ち
long position
買い持ちポジションのこと。保有する金融資産の買い持ち高と売り持ち高を比較し、買い持ち高が上回っている状態をロングポジションと呼びます。
値上がりを見込んで買い、まだ決済せずに持っている状態。株式・FX・先物など商品を問わず使い、売りから入る「ショート」の反対語になる。FXでは通貨ペアごとに「ドル円のロング」と言い、買い持ち高が売り持ち高を上回るとロング超過になる。
円安が進むとみて、ドル円のロングを積み増した。
ロングショット(引きの画)
long shot
被写体の全身が頭から足まで入り、周囲の空間も大きく収まる、引いたサイズの画。人物と場所の位置関係を示す場面の冒頭や、出入りや全身の動きを見せる場面で使う。現場では単に「ロング」と呼び、寄りのバストショットやアップと対にして撮り分ける。
このシーンはまずロングで場所を見せてから、バストに寄っていこう。
ロング(髪の長さ)
long hair
美容室で髪の長さを区分する呼び名のひとつで、おおむね胸より下まで届く長さ。ボブ、ミディアム、セミロングの順に長くなり、その先がロングになる。区分の境目は店や媒体で多少ずれるため、オーダー時は写真や「胸の下あたり」のように位置で伝えるとずれが少ない。
ロングのまま毛先だけ5センチ整えてください。
ロングレンズで撮ってもロングショットにならない
映像の現場で「ロングで撮って」と言われたら、カメラを引けばいいのか、望遠レンズに付け替えればいいのか。一瞬迷う人がいても不思議はない。「ロング」と略せる言葉が、ここには二つあるからだ。ロングショットとロングレンズである。
ロングショットは、被写体を頭から足まで収め、周囲の空間も大きく入れる画のサイズを指す。How To Film School の辞典は、これを「a shot size that shows the subject from head to toe while also including a significant amount of the surrounding environment」と説明している。長いのは被写体とカメラの見かけの距離で、引くほど「ロング」になる。
ロングレンズ(長焦点レンズ)は、焦点距離の長いレンズのことだ。Wikipedia の「Long-focus lens」の項によれば、35mm カメラの標準レンズが 50mm であるのに対し、長焦点レンズの例には 135mm、210mm、500mm がある。焦点距離が長いほど視野は狭くなり、遠くのものが大きく写る。こちらで長いのは、レンズの焦点距離である。
二つを組み合わせると、直感に反する画ができる。500mm のロングレンズで人物にぐっと寄れば、画はアップになる。広角レンズでも、被写体から離れれば、全身と背景の入ったロングショットが撮れる。冒頭の一言がどちらの注文なのかは、前後の文脈がなければ決まらない。
金融と美容室のロング
この混線は、映像の内側では収まらない。金融のロングは買い持ちの状態で、長さの意味はなく、向きだけを表す。反対語はショートで、売りから入ったポジションを指す。美容室のロングは髪の長さの区分で、胸より下に届くあたりが目安になる。反対側にはボブやミディアムがあり、境目は店や媒体で多少ずれる。
映像では距離と焦点距離、金融では持ち高の向き、美容室では髪の長さ。同じ「ロング」が測っているものは、これだけ違う。三つの業界の人が同じ部屋で「ロングでお願いします」と言ったとき、通じる相手は、ほぼ同じ業界の人に限られる。冒頭の撮影現場の一言は、引きの画か望遠レンズかで割れた。この部屋では、買い持ちか、引きの画か、胸より下の髪かで割れる。