略語

MD

エムディー

9つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

小売・店舗

マーチャンダイジング(商品政策)

merchandising

売れる商品を、適切な量・価格・時期・売り場で提供するための計画と運用の総称。品揃え(アソートメント)、価格設定、棚割、販売方法までを決める。この業務の担当者や部署を「MD」と呼ぶ企業も多い。

来期のMDでは、冬物の投入時期を前倒しして品揃えを組み直す。

音響・レコーディング

ミニディスク

MiniDisc

ソニーが1991年に発表し、1992年に商品化したデジタル録音・再生の規格とその媒体。直径64mmのディスクをカートリッジに収め、録音用には光磁気ディスクを使う。アナログのコンパクトカセットの置き換えを狙って開発され、MDレコーダーやMDプレーヤーで使われた。2000年代後半にはフラッシュメモリなどに置き換わっていった。

古いライブ音源がMDにしか残っていないので、再生機を探して取り込む。

防衛・安全保障

ミサイル防衛

Missile Defense

飛来する弾道ミサイルなどを迎撃ミサイルで破壊し、被害を防ぐ防空の仕組み。日本は2003年に導入を決定し、海上自衛隊のイージス艦(SM-3)が大気圏外で、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC-3)が地上近くで迎撃する二段構えをとる。

北朝鮮の発射を受け、ミサイル防衛の運用体制が強化された。

コンサルティング

マネージングディレクター

Managing Director

コンサルティングファームの職位で、パートナーと並ぶ最上位クラス。アナリスト、コンサルタント、マネージャー、プリンシパル(ディレクター)と上がった先にあたる。個別案件だけでなく、部門や事業の運営・収益にも責任を持つ。呼称や序列はファームによって異なる。

MDが最終報告会に同席し、経営陣へ提言を説明した。

IT・システム開発

Markdown(ファイル拡張子 .md)

Markdown

Markdown 形式で書かれたプレーンテキストの拡張子。見出しや箇条書きを記号で記すだけで書式を表せ、READMEや開発ドキュメント、静的サイトの原稿に広く使われる。Markdown は2004年にジョン・グルーバーらが作った軽量マークアップ言語。

手順書は README.md にまとめてリポジトリに置いてある。

学術・研究

分子動力学法

Molecular Dynamics

原子や分子の間にはたらく力からニュートンの運動方程式を数値的に解き、時間とともに動く様子を計算機で追うシミュレーション手法。物性やタンパク質の構造変化の解析に使われ、スーパーコンピュータの計算科学の代表的な応用の一つでもある。

水分子の拡散係数を分子動力学(MD)計算で求めた。

音楽ビジネス・興行

グッズ(マーチャンダイジング)

merchandising / merchandise

音楽事務所やレーベルで、アーティストのグッズ(Tシャツ、タオル、ペンライトなど)を企画・制作・販売する業務や、その担当部署・商品を指す。日本の音楽事務所の求人でも「MD(商品企画・グッズ制作)」のように使われる。K-POP業界ではグッズそのものを「MD」と呼ぶことが多い。ライブ会場やポップアップストア、オンライン販売が収益源になる。

ツアーの公式MDは、会場限定の柄とオンライン販売分を分けて展開する。

製薬・創薬

メディカルドクター(社内医師)

Medical Doctor

製薬会社に勤務する医師の職種。新薬の臨床開発、安全性評価、メディカルアフェアーズ(医学的な情報提供・市販後の活動)などで、医学の専門家として社内外と連携する。病院で診療する医師とは仕事の場が異なり、通称「MD」と呼ばれる。

治験の計画段階から、MDが医学的な観点でプロトコルを確認する。

医療・医学

筋ジストロフィー

Muscular Dystrophy

筋肉が壊れては再生することを繰り返し、筋力が少しずつ落ちていく遺伝性の筋疾患をまとめた呼び名。病型が多く、デュシェンヌ型(DMD)、ベッカー型(BMD)など個々の病型の略語にもMDが含まれる。筋ジストロフィーの専門誌や臨床試験ネットワークの名称にも「MD」が使われる。日本では2015年に指定難病となった。

MDの臨床試験への参加を検討するため、患者登録の情報を確認する。

2004年、MDは二つの場所で生まれ直した

検索窓に「MD」と打つと、何が出てくるかは打った人の職場によって変わる。小売ならマーチャンダイジング、コンサルティング会社ならマネージングディレクター、防衛ならミサイル防衛、研究室なら分子動力学である。ここに、音楽用の円盤とテキストの拡張子が加わる。この二つは、同じ2004年に、まったく別の場所で節目を迎えた。

ミニディスクは1992年11月にソニーのMDウォークマン「MZ-1」で商品化された規格で、音楽用の媒体として育った。2004年に出たのが、その最終進化形とされる「Hi-MD」である。従来のMDと同じ大きさのディスクに1GBを記録でき、ATRAC3plusやMP3、リニアPCMに対応した。従来のMDでは難しかった画像やテキストなどのデータファイルの記録にも使えた(GIGAZINE「ソニーがHi-MDウォークマンの出荷を終了」による)。音楽のためのディスクが、ファイルの入れ物にもなろうとした年だった。

同じ年の3月、ジョン・グルーバーがウェブサイト Daring Fireball で「Markdown」を公表した。見出しや強調を記号で書き、HTML に変換できる軽量マークアップ言語である。設計の相談役を務めたのは当時17歳のアーロン・スワーツだったとされる(Wikipedia「Markdown」による)。拡張子は .md で、いまは README などの開発文書の定番になっている。

オーディオ機器の棚にいた人と、テキストエディタの中にいた人のうち、相手の「MD」を連想した人がどれだけいたかはわからない。ただ、いま同じ見出し語に並べると、一方は物理的な円盤で、もう一方は拡張子だけが残った記号だという対照がはっきりする。

その後の歩みも違った。ソニーはHi-MDウォークマン「MZ-RH1」を2011年9月に出荷完了とし、対応ディスク「HMD1GA」も2012年9月に出荷を終えた。MDのハードウェアは2010年代の初めに市場から姿を消していく。Markdownは、2004年の公表から現在まで README.md の形で開発の現場に残り、サイトの原稿にも使われている。

検索窓に打つ二文字は同じでも、片方は2012年に出荷が終わった円盤を指し、もう片方は2004年から使われ続ける拡張子を指す。