略語

MR

エムアール

4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

製薬・創薬

医薬情報担当者

Medical Representative

製薬会社の社員として病院・診療所・薬局を訪ね、医師や薬剤師に自社医薬品の有効性・安全性の情報を届ける職種。副作用などの情報を現場から集めて社内へ報告するのも仕事で、営業だけでなく情報の双方向の窓口を担う。資質の認定には、公益財団法人MR認定センターが実施する試験の制度がある。

新薬の説明会に向けて、担当MRが医局に添付文書の改訂点を届けに来た。

IT・システム開発

複合現実

Mixed Reality

現実の空間の形状をデバイスが把握し、そこに仮想の物体を位置を合わせて重ねて、現実と相互に影響し合う形で見せる技術。VRが全面仮想、ARが現実への情報の重ね合わせであるのに対し、MRは両者の融合を指す。1994年にミルグラムと岸野文郎が、現実から仮想までの連続体として提唱した概念が出発点とされる。

MRヘッドセットで、設計中の設備を実際の工場の床に原寸大で重ねて確認した。

マーケティング・CRM

マーケティング・リサーチ

Marketing Research

企業が顧客のニーズや市場の状況を知るために、情報を集めて分析し、商品・サービスづくりや販売の意思決定に生かす調査活動。市場調査とも呼ばれる。業界団体の日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)も、資料や機関誌でMRと略して使っている。

新商品の方向性を決める前に、MRの担当者が消費者向けの定量調査を設計した。

医療・医学

麻しん風しん混合ワクチン

Measles-Rubella (vaccine)

麻しん(はしか)と風しんを同時に予防する生ワクチンで、予防接種の現場や自治体の案内ではMRワクチンと呼ぶ。定期接種は第1期が1歳の1年間、第2期が5歳以上7歳未満で小学校入学前の1年間の2回。麻しんと風しんを両方接種するときは原則としてこの混合ワクチンを使う。

1歳の誕生日を迎えたので、MRの第1期接種を予約した。

MRの三つの年号:1991年、1994年、2006年

1991年、製薬会社で医師や薬剤師に情報を届ける職種の呼び名が変わった。それまでは「プロパー」だった。薬事日報の社説は、この語を「自社製品の宣伝=プロパガンダの意味」と説明している。業界は医薬情報担当者・プロパーのイメージを払拭しようとして、社説の言葉では「1991年に呼称変更してMRが誕生した」。教育研修制度と認定制度を整えたうえでの改称だったとも、同じ社説には書かれている。新しい呼び名は Medical Representative の頭文字を取ったもので、薬の現場ではそれ以来MRと略される。

3年後に現れた同じ二文字

1994年12月、電子情報通信学会の論文誌に、ポール・ミルグラムと岸野文郎の「A Taxonomy of Mixed Reality Visual Displays」が載った。現実の環境から完全な仮想環境までをつなぐ連続体を考え、その上で現実と仮想が融合する表示技術を Mixed Reality として扱った論文である。略せば、やはりMRになる。

3年しか離れていないのだから、製薬業界の改称がIT側に影響したのか、あるいはその逆なのか、と考えたくなる。ただ、一方がもう一方に影響したと言える材料は見つかっていない。別々の経路で生まれ、頭文字だけが一致したと見るのが自然だろう。

2006年の三つめ

三つめのMRは、さらに12年後に現れる。東京都などの案内によると、2006年6月に予防接種法の政令が改正され、麻しん風しん混合ワクチンによる定期接種が導入された。1歳のときと小学校入学前の1年間の2回接種が、その年度から始まっている。

麻しん(Measles)と風しん(Rubella)の頭文字を取った略称が、保護者向けの案内に載るようになった。1991年に製薬業界が選んだ略称は、15年後には、子どもの予防接種を案内される保護者の目にも触れるものになっていた。英語に戻せば Medical Representative、Mixed Reality、Measles-Rubella で、頭の語はどれも違う。