MT
エムティー
7つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
マニュアルトランスミッション(手動変速機)
Manual Transmission
運転者がクラッチペダルとシフトレバーを操作してギアを切り替える変速機、またはそれを積んだ車。AT(オートマチック)と対比して「MT車」「マニュアル車」と呼ぶ。カタログや中古車情報では、AT車と区別する表記として使われる。
この型は5速MTのみの設定で、AT車の設定はありません。
磁粉探傷試験
Magnetic particle Testing
鉄鋼などの強磁性体を磁化し、表面や表面近くのきずから漏れる磁束に磁粉を付着させて、きずの位置と形を見つける非破壊検査の方法。非破壊検査の技術者資格では、浸透探傷試験(PT)などと並ぶ試験方法の区分として「MT」と書き、レベルを付けて MT1 のように呼ぶ。
溶接部の表面きずはMTで確認し、内部のきずは別の方法で調べる。
機械翻訳
Machine Translation
コンピューターが文章や音声をある言語から別の言語へ自動で翻訳する技術。辞書と文法規則を組み込むルールベース方式、データから学ぶ統計的MTを経て、現在はニューラルネットワークで翻訳するニューラルMTが中心になっている。
社内文書はまずMTで下訳を作り、あとで人が直している。
端末着信
Mobile Terminated
SMS の配信で、アプリや外部のシステムから送られ、利用者の携帯端末で受け取られるメッセージ。送信(アウトバウンド)SMS とも呼ぶ。端末側から送られる MO(Mobile Originated)と対になる。
認証コードのSMSはMTとして送信し、返信のSTOPはMOで受け取る。
モータータンカー(船名の接頭辞)/メートルトン
Motor Tanker / Metric Ton
船名の前に付く MT は、エンジン(モーター)で推進するタンカー(Motor Tanker)を示す。一方、貿易書類や運賃の計算では、MT や M/T は 1,000kg を表すメートルトンの略として使われる。同じ表記で、船の種類と重量の単位という別の意味がある。
MTを冠したタンカーに、原油を数万MT積み込んだ。
SWIFT のメッセージタイプ
Message Type
国際送金で銀行間をやり取りする SWIFT 電文の種類を表す番号の頭に付く記号。MT103 は顧客の送金内容を伝える電文、MT202 は金融機関どうしの資金決済の電文というように、番号で用途が決まる。ISO 20022 形式への移行後も、MT103 などの呼び名は銀行の窓口で使われている。
送金の証明として、MT103のコピーを取引銀行に依頼した。
臨床検査技師
Medical Technologist
病院などで検査を担う臨床検査技師のこと。日本ではその英語表記を Medical Technologist とし、頭文字を取って MT と略す。海外で同じ仕事をする職種は Clinical Laboratory Technician などと呼ばれ、呼び名が国によって違う。
至急の血液検査を、検査室のMTに依頼した。
MTを八通りに読む
MTの頭のMは、Motorの略に違いない。船の世界なら、その読みで外れない。船名の前に付くMTは Motor Tanker、エンジンで進むタンカーを示す。
ところが同じ二文字が、自動車では Manual Transmission になる。運転者がクラッチペダルとシフトレバーでギアを切り替える変速機のことで、AT車と対比して「MT車」と呼ばれる。モーターのMではなく、手のMだ。
AIの世界へ移ると、MTは Machine Translation、機械翻訳になる。こちらは機械のMである。手で動かすことを指す二文字と、機械に任せることを指す二文字が、同じ綴りで並んでいる。
数えてみると、Mはどの業界でも別の語だった。船の Motor、自動車の Manual、AIの Machine、磁粉探傷試験(Magnetic particle Testing)の Magnetic、通信の Mobile、SWIFT電文の Message、医療の Medical。七つの業界で、七つの語である。Tも揃って違う。Tanker、Transmission、Translation、Testing、Terminated、Type、Technologist。しかも船には、貿易書類で1,000kgを表すメートルトン(Metric Ton)という読みまである。一つの業界の中でも、MTは二通りに読まれる。業界が七つなのに八通りになるのは、そのためだ。
重なりそうで重ならないのは、検査のMTと医療のMTだろう。磁粉探傷試験のMTは、鉄鋼の表面や表面近くのきずを見つける検査の方法で、非破壊検査の資格ではレベルを付けて MT1 のように書く。臨床検査技師のMTは、病院の検査室で働く人である。「溶接部はMTで確認する」と「検査室のMTに依頼した」。どちらも検査の話なのに、前の文のMTは方法で、あとの文のMTは人だ。日本では臨床検査技師の英語表記を Medical Technologist とし、海外で同じ仕事をする職種は Clinical Laboratory Technician などと呼ばれる。MTと略せるのは、日本の呼び方に限った話だ。
最も向きが逆になるのは通信だ。Mobile Terminated の terminated は、メッセージが利用者の端末に配信されて終わることを指す。企業が認証コードのSMSを送る行為は、企業の側から見れば送信である。それでもMTと呼ばれるのは、基準が送り手ではなく、端末に置かれているからだ。端末から出ていくものは Mobile Originated、MOになる。
認証コードのSMSはMTとして送信し、返信のSTOPはMOで受け取る。同じ画面の中で、MTの二文字は「送る」を意味しながら、「届く」の側から名づけられている。