略語

NA

エヌエー

3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

自動車・輸送機器

自然吸気

Naturally Aspirated / Normally Aspirated

NAとは、Normal Aspiration(ノーマルアスピレーション)、Natural Aspiration(ナチュラルアスピレーション)の略で、自然吸気エンジンのことです。

出典:car-me.jp

ターボやスーパーチャージャーなどの過給機を使わず、空気を自然に吸い込むエンジン方式。NAエンジンを積んだ車はノンターボ車にあたる。同じ排気量なら過給機付きより加速の伸びは劣るが、アクセル操作に対する反応がよく、踏んだ分だけなめらかに加速することが好まれる。

このグレードはターボではなく、NAエンジンを積んでいる。

生命科学・バイオ

ノイラミニダーゼ

neuraminidase

A型インフルエンザウイルスの表面にある糖タンパク質(酵素)の名前。もう一つの表面糖タンパク質ヘマグルチニン(HA)と並べて亜型の分類に使い、NAはN1からN9の9種類が報告されている。H1N1の「N1」はこのNAの型を表す。

H1N1とH3N2では、HAとNAの亜型の組み合わせが違う。

分析・計測

開口数

numerical aperture

顕微鏡の対物レンズなどの光学系が、どれだけ広い角度の光を取り込めるかを表す無次元の数。NA = n sinθ(n はレンズが働く媒質の屈折率、θ はレンズに入る光の円錐の最大半角)で表す。値が大きいほど細かい構造を解像でき、像も明るくなるが、焦点深度は浅くなる。

もっと細かい構造を見たいので、NAの大きい油浸対物レンズに替えた。

二つのNAは取り込み、一つのNAは切り離す

車のカタログにある「NA」と、顕微鏡の対物レンズにある「NA」は、別々の語だと思っていた。ところが、どちらも「どれだけ取り込めるか」を言い表す語だった。

車のNAは、Normal Aspiration や Natural Aspiration の略で、自然吸気エンジンを指す(car-me.jp の解説は「NAとは、Normal Aspiration(ノーマルアスピレーション)、Natural Aspiration(ナチュラルアスピレーション)の略」と書く)。ターボのような過給機を使わず、空気を自然に吸い込む。吸える量は、大気の押す力で決まる。

顕微鏡のNAは numerical aperture、開口数である。NA = n sinθ で、n はレンズが働く媒質の屈折率、θ はレンズに入る光の円錐の最大半角を表す。Wikipedia 英語版によれば、NAが大きいレンズはより多くの光を集め、像は明るくなり、細かい構造も見える。一方で焦点深度は浅くなる。取り込む量が増えると、見える範囲の奥行きは削られる。

この式には上限がある。媒質が空気なら n は約1で、sinθ は1を超えられないから、NAも1を超えない。自然吸気が大気圧を超えて吸えないのと、構図が似ている。そして、上限を越える手も似ている。エンジンは過給機で空気を押し込む。顕微鏡は、空気のかわりに油を満たす油浸対物レンズで n を上げる。どちらにも、この上限を越える手が用意されている。

三つ目のNAは、インフルエンザウイルスの表面にあるノイラミニダーゼ(neuraminidase)だ。H1N1の「N1」は、この酵素の型を表す。JST の用語解説は、NAについて「9種類(N1からN9)の亜型が報告されています」と書く。

この酵素は、取り込む側ではない。新しくできたウイルスは、感染した細胞の表面にあるシアル酸という糖にくっつく。Protein Spotlight によれば、ノイラミニダーゼはそのシアル酸を切る。切れて初めて、ウイルスは細胞を離れて広がれる。タミフルはシアル酸に似た形をしていて、酵素がそちらを追いかけてしまう。ウイルスは細胞に付いたままになり、免疫が片づけやすくなるという。

並べると、車とレンズは入り口の広さで勝負し、ウイルスは出口の手前で糸を切る。同じ二文字で、取り込む語が二つ、手放す語が一つである。

カタログの「NA」を見たとき、これを「ターボなし」と読む人は多いだろう。薬局でタミフルを受け取った人は、その薬が止めようとしているのが、H1N1の「N」だと知らないかもしれない。