略語

NC

エヌシー

4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

機械・生産

数値制御

Numerical Control

工具と工作物の相対運動やその他加工に必要な作業工程などを、それらに対応する数値情報を入力として用いる制御装置により制御される工作機械

出典:日本大百科全書(ニッポニカ)(小学館)/コトバンク

工具や工作物の動きを、数値で書いたプログラムによって機械に自動で行わせる制御方式。NC旋盤、NCフライス盤、マシニングセンタなど、この方式で動く工作機械そのものも「NC」と略して呼ぶ。現場では「NCプログラムを組む」「NCを回す」のように、加工プログラムや機械を指して使う。

このワークは段取りが済んだので、NCプログラムを呼び出して試し削りに入ります。

半導体・電子部品

未接続ピン/ノーマリークローズ(b接点)

No Connection / Normally Closed

回路図やデータシートで2通りに使う。ICなどの端子名としては、内部に接続がなく機能もない未使用ピンで、基板上では何もつながない。リレーやスイッチの接点としては、コイルに通電しない通常状態で閉じている接点(b接点)で、通電すると開く。

このICの7番ピンはNCなので、基板ではどこにも配線せず空けておきます。

音響・レコーディング

ノイズキャンセリング(ノイキャン)

Noise Cancelling

マイクで拾った周囲の騒音と逆位相の音を作って重ね、耳に届く騒音を打ち消す技術。ヘッドホンやイヤホンの機能名として、オーディオ愛好家の間では「NC」「ノイキャン」と略される。マイクの位置により、外側で拾うフィードフォワード型と内側で拾うフィードバック型などがある。

電車の中ではNCをオンにすると、走行音がかなり静かになります。

医療・医学

鼻カニューラ(ネーザルカニューラ)

Nasal Cannula

鼻の穴に差し込む2本の短い管(プロング)から酸素を送る、酸素投与の器具。顔を覆うマスクと違い、口元が空いたまま使える。低流量の酸素投与に向き、流量は通常1〜6L/分で、鼻の刺激が強くなるため実際には3L/分程度までが望ましいとされる。英語圏の医療で nasal cannula を NC と略し、日本の医療現場でもこの略記が使われる。

今朝から酸素はNCで2L/分流していて、SpO2は96%を保てています。

1949年に動き出した二つのNCと、機内の三つ目

工場のNC旋盤と、病室の酸素のNCと、耳のNC。三つとも同じ二文字なのに、どれも同じ時代の生まれだとは思いにくい。実際、日付が追えるものを並べると、二つが同じ年に重なっていた。

1949年、米空軍はジョン・パーソンズに、新しい工作機械を開発する契約を出した。数値で工具を動かす機械、のちの数値制御(Numerical Control)の出発点である。同じ1949年、酸素供給の器具である鼻カニューラ(Nasal Cannula)が、BOC社の特許になった。発明者はウィルフレッド・ジョーンズとされる。工場の機械と病室の管に、書類の上では何のつながりもない。

数値制御のほうは、3年後に形が見える。1952年、MITのサーボ機構研究所がシンシナティ社のフライス盤に制御装置を載せ、穴をあけた紙テープで動かしてみせた。空軍は1955年には、約100台のNCフライス盤の製造に約3500万ドルを出している。紙の穴が工具の動きになるのだから、空軍が金を出したのはうなずける。

では、いちばん若いNCはどれか。ノイズキャンセリングである。1978年、MITの電気工学の教授だったアマー・ボーズは、チューリッヒからボストンへ向かう機内にいた。航空会社が配っていた軽いヘッドホンで音楽を聴くつもりが、エンジンの轟音に負けて聴けない。着陸までに、彼は騒音を打ち消す仕組みの最初の手順を書きつけたという。数値制御が紙テープで動いた研究所と同じ大学の教授が、26年後に別のNCを機内で思いついたことになる。

残る一つの、基板のNCは、いつ生まれたのかを確かめられなかった。この二文字は、端子名としては「内部に接続がない」、リレーの接点としては「通常は閉じている」を意味する。片方は何もつなぐなと言い、もう片方は最初からつながっていると言う。同じ回路図の上で、逆向きの指示を出す。

1949年の契約書と特許にNCと書いてあったのかどうかは、私は知らない。呼び名はあとから、それぞれの現場で貼られたのだろう。

電車でイヤホンのNCをオンにしたとき、耳の中で動いているのは、機内の座席で書きつけられた手順の子孫である。