NG
エヌジー
4つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。
撮影の失敗・使えないテイク
No Good
撮影で俳優の演技や映像がうまくいかず、使えないと判断されたテイク(1回の撮影分)を指す。現場では「NG」と告げて撮り直し、採用するOKテイクと分けて扱う。失敗シーンを集めた「NG集」などを通じて一般にも広まった。
セリフを噛んだので、今のテイクはNGにして、もう一度回します。
天然ガス
Natural Gas
地下から産出する可燃性ガスで、主成分はメタン。燃焼時のCO2排出が石炭・石油より少ない化石燃料として扱われる。海外からのパイプライン輸入がない日本では、冷却して液化した LNG(液化天然ガス)の形で輸入し、都市ガスや発電の燃料にする。
ガス田で産出したNGを液化してLNGにし、専用船で日本へ運ぶ。
経鼻胃管(NGチューブ)
nasogastric tube
鼻から胃まで通す細い管で、胃の内容物を体外へ排出して減圧したり、性状を確認したり、口から食べられない患者に栄養や薬を入れたりするのに使う。看護の現場では「NGチューブ」「エヌジーチューブ」と呼び、挿入や固定の管理が看護業務に含まれる。
イレウスの患者さんにNGチューブを入れて、胃液を排出します。
州兵(米国)
National Guard
米国で州ごとに組織される軍で、平時は州知事の指揮下で災害救援や治安維持にあたり、有事には連邦の軍として動員される予備戦力の役割を持つ。連邦側で州兵を統括する機関は National Guard Bureau(NGB)。日本の自衛隊にはない制度で、米国の安全保障の文脈で出てくる。
知事の要請で、NG(州兵)が災害対応に動員された。
NGの4つのNと4つのG
映像の現場でNGと言えば使えないテイクで、病棟では鼻から胃へ通す管、ガスの会社では天然ガス、米国の軍事ニュースでは州兵になる。頭文字は同じ二つなのに、展開してみると語の種類がそろわない。
- 映像:No Good。Nは否定語、Gは形容詞
- エネルギー:Natural Gas。Nは形容詞、Gは名詞
- 医療:nasogastric tube。Nはnasoで「鼻」、Gはgastricで「胃」
- 防衛:National Guard。Nは形容詞、Gは名詞
Nは「否定」「自然」「鼻」「国」に、Gは「良い」「ガス」「胃」「守り」に散らばる。形容詞と名詞の組み合わせはエネルギーと防衛で重なるが、二つの語に関係はない。頭文字がたまたま同じ二文字に収まっただけである。
LNGが日本に着いた1969年と、州兵が名前を借りた1824年
エネルギーの側から見ると、NGは単独ではあまり出てこない。日本が天然ガスを受け入れるときは液化したLNGとして船で運ぶので、現場で見る文字はNGより先にLが付いている。日本で初めてLNGが入ったのは1969年11月で、アラスカからの第一船が東京ガスの根岸基地(横浜市)に着いた。東京ガスと東京電力が1967年にアラスカ産LNGの購入契約を結んだ結果だった。
防衛のNational Guardは、さらに古い。米国の州兵の源流は、1636年にマサチューセッツ植民地が民兵中隊を三つの連隊にまとめたことにさかのぼる。ところが「National Guard」という名前が使われたのは、それから約190年後の1824年で、ニューヨーク州の民兵部隊が最初とされる。ラファイエット侯爵の訪米に合わせ、彼がフランスで指揮していた国民衛兵(ガルド・ナシオナル)にちなんで名乗った。
州ごとに組織されているのに「National」と名乗っているのは、フランスの部隊の名前を借りたからである。
現場で「NG」と言われたとき
この四つが同じ職場に並ぶことはまずない。撮影現場でNGと言われれば撮り直しの合図になる。NGになったテイクは、採用するOKテイクと分けて扱われ、集めれば「NG集」という娯楽にもなった。病棟でNGと言われれば経鼻胃管のことで、こちらには「やり直し」の意味がなく、挿入後に位置を確認し、固定を管理する対象になる。
同じ二文字のうち、後から一般の人に広く知られたのは映像の意味だろう。それでも、医療者がNGと聞いて最初に思い浮かべるのは胃への管で、エネルギー関係者ならLNGの手前にある天然ガスである。