略語

OB

オービー

3つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

スポーツ・フィットネス

アウトオブバウンズ(ゴルフ)

out of bounds

ゴルフで、コースの境界線の外に出た球の状態。球が見つからない場合と並んで扱われ、罰打が付く。競技では1罰打で打ち直すのが基本だが、仲間内のラウンドでは、境界線を越えた地点付近から2罰打でプレーを続けるローカルルールが使われることもある。

ティーショットが右に曲がってOBになり、打ち直しになった。

放送(テレビ・ラジオ)

中継(スタジオ外からの放送)

outside broadcast

スタジオの外、スポーツの競技場やニュースの現場などからテレビ・ラジオの番組を制作して送ること。カメラやマイクの信号は現場に止めた制作用の車に集められ、そこで処理・収録され、局へ送られる。この車は英語で OB van、OB truck と呼ばれる。

スタジアムの外に OB van を止め、試合の映像をそこで切り替えて局へ送った。

医療・医学

産科/潜血

obstetrics / occult blood

医療の略語で、診療科では妊娠・出産と母体のケアを扱う産科(obstetrics)を指す。婦人科(gynecology)と合わせた産婦人科は OB/GYN(OB-GYN)と書かれる。医療略語の一覧には、肉眼では見えない血液である潜血(occult blood)の略としても載っている。

英文の紹介状に OB/GYN とあり、産婦人科の外来へ案内された。

OBの「外」と、産科の「前」と、見えない血

ティーショットが右に曲がってOBになる。放送局では「OBの車を出そう」と言う。どちらも「外」の話だから、医療のOBもどこかの外に出る語だろうと思っていた。

違った。産科は obstetrics で、もとをたどるとラテン語の obstetrix、助産師を意味する語に行き着く。Wiktionary によれば、obstetrix は「前に立つ」を意味する動詞 obstō に、女性の行為者を表す接尾辞 -trix が付いた語と説明されている。産む人の前に立つ人を指す語が、診療科の名になった。外ではなく、前だ。

では、ほかの二つの「外」は、何の外なのか。

ゴルフの out of bounds は、コースの境界線の外である。競技では1罰打で打ち直すのが基本だが、仲間内のラウンドでは、境界を越えた地点付近から2罰打で続けるローカルルールもある。外に出た球は、競技から外されない。罰が付いて、続きができる。

放送の outside broadcast は、スタジオの外である。Wikipedia英語版によれば、英国放送会社(のちの BBC の前身)の最初の outside broadcast は1923年1月8日で、コヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスからの『魔笛』の中継だった。劇場の中から送っても、スタジオの外なら「外」と呼ぶ。基準は建物の内外ではなく、局のスタジオにある。カメラとマイクの信号が集まる制作用の車が OB van で、ここで処理と収録をして局へ送る。

並べると、ゴルフはコースの境界線、放送はスタジオ、産科は出産する人と、基準にしているものがばらばらだ。同じ二文字の下に、英語の out が二つと、ラテン語の ob が一つ入っている。

産婦人科は OB/GYN と書く。gynecology(婦人科)と並べるので、スラッシュの手前の OB は、お産の側を受け持つ。英文の紹介状にその表記を見つけたら、この OB は出産する人の前に立つほうの OB だ。ボールも中継車も、そこには出てこない。

ところが医療の側には、もう一つ OB がいる。Wikipedia英語版の医療略語一覧(O の項)は、OB の語義として obstetrics and gynecology と並べて、occult blood を挙げている。肉眼では見えない血、つまり潜血である。

こちらは、確かめられた範囲が狭い。日本語の出典では、潜血を OB と略す例を見つけられなかった。根拠は、この英語版の一覧の1件だけだ。日本の検査の現場でこの略記が通じるのかは、わからない。

それでも、一覧のうえでは同じ見出しに、人の前に立つ語と、見えない血が同居している。ゴルフ場でOBと言えば外に出た球だが、英文の紹介状に OB の二文字を見つけたなら、そこにあるのは前に立つ人か、見えない血かもしれない。