略語

OD

オーディー

8つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

機械・生産

外径

outside diameter

パイプ・丸棒・軸・Oリングなど円形の部品で、外側の端から端までの直径。図面や発注で内径(ID)とセットで指定する。管では内径=外径-肉厚×2の関係になり、同じ呼び径でも肉厚が違えば内径が変わるため、嵌め合いや流量の計算では外径と内径のどちらを基準にするかを確かめる。

このパイプはODが25ミリで肉厚2ミリだから、内径は21ミリになる。

人事・人材

組織開発

Organization Development

社員一人ひとりの能力ではなく、職場の風土やメンバー同士・上司と部下の関係に働きかけて、組織として成果を出せる状態をつくる取り組み。外部の専門家が答えを示すのではなく、当事者が対話を通じて自分たちの課題に気づき、改善を続けていく進め方をとることが多い。研修などで個人の能力を高める人材開発とは働きかける対象が異なる。

管理職研修に加えて、チーム内の対話を促す組織開発(OD)のワークショップを始めた。

銀行・融資

当座貸越

overdraft

当座預金の残高を超える小切手・手形の支払いが来たとき、あらかじめ結んだ契約の限度額までを銀行が自動的に貸し付ける仕組み。不渡りを避けて資金繰りをつなぐために使う。利息は借りた分にだけかかる。

今月は入金が遅れるので、ODの極度額を使って手形の決済に充てた。

分析・計測

光学密度

optical density

試料に光を通したとき、どれだけ光が弱まったかを表す値。分光光度計で測る。微生物の培養では波長600nmで測るOD600が増殖の目安になる。濁った培養液では、光の吸収よりも細胞による散乱が主な原因で、吸光度の法則どおりにはならない。

OD600が0.6を超えたので、誘導剤を加えた。

音楽(演奏・楽器)

オーバードライブ(ギター用エフェクター)

overdrive

ギターの音をロックらしく軽く歪ませるエフェクター。アンプの音量を上げすぎて回路が飽和し、音が歪む現象を人工的に作るもので、製品名や型番にODと略して入る。ディストーションより歪みが浅いものを指すことが多い。

足元にOD、ディストーション、ワウの3台を並べている。

医療・医学

起立性調節障害

orthostatic dysregulation

立ち上がったときに血圧や心拍の調節がうまくいかず、立ちくらみ、朝起きられない、倦怠感、動悸、頭痛などが出る病気。自律神経の働きの乱れが関わり、思春期の子どもに多い。診断は起立試験でサブタイプに分け、水分と塩分の摂取などの非薬物療法が基本になる。

朝起きられない原因を調べるため、小児科でODの起立試験を受けた。

土木・測量

起終点(OD調査・OD交通量)

Origin-Destination

車や人がどこから出てどこへ向かうかを表す言葉。道路計画では、地域間の交通量を出発地と目的地の組で整理した表を OD表、その量を OD交通量と呼ぶ。国の道路交通センサスでは、車の所有者や使用者に出発地・目的地などの利用状況をアンケートで尋ねる自動車起終点調査を OD調査と呼び、結果を道路の計画・建設・管理に使う。

バイパスの需要予測のため、OD調査の結果から区間ごとのOD交通量を集計した。

防衛・安全保障

オリーブドラブ(軍用の暗緑色)

olive drab

軍の車両・装備・被服に使われる、灰色や茶色を帯びた暗い黄緑色。山野で敵に見つかりにくくするための色で、英米では OD と略して被服や装備の色番号に使う(第二次大戦の米陸軍の兵用軍服の OD33 など)。自衛隊の車両も濃緑色(オリーブドラブ)が多いが、飛行場で使う航空自衛隊の支援車両は薄い緑灰色で塗るなど、すべてがこの色というわけではない。

放出品の野戦服はODで、色番号はOD7だった。

足元のODと手形のODは同じ「超える」か

ギタリストの機材表に「OD、ディストーション、ワウ」と並んでいれば、銀行の話だと思う人はいない。経理の担当者が「ODの極度額を使った」と言えば、ペダルの話だと思う人もいない。同じ二文字が、どちらの現場でも説明なしで通じている。

綴りを開くと、どちらも頭に over が付く。overdraft と overdrive。同じ語源の兄弟に違いない、と最初は思った。

確かめると、そうではなかった。overdraft の後半は draft で、「引く」の draw と同じ系統の語である。口座から残高を超えて引き出すことを指す銀行の語義は、英語では1841年にさかのぼるという(Online Etymology Dictionary)。日本の当座貸越もこの筋にある。当座預金の残高を超える手形や小切手の支払いが来たとき、あらかじめ結んだ限度額までを銀行が自動で貸す。利息がかかるのは、実際に借りた分だけだ。

一方の overdrive は、アンプの音量を上げすぎて回路が飽和し、音が歪む現象から来ている。それを小さな箱で再現したのが、1977年に出たBOSSのOD-1である。回路は、波形の上半分と下半分を同じには歪ませない非対称の設計で、大音量にしなくてもアンプを鳴らし込んだような音が出るのが売りだった(ローランドの解説記事による)。この箱は型番にそのままODと入っている。略称が先にあって製品がそれを借りたのではなく、製品の型番が略称として定着したのだろう。これは推測で、確かめられてはいない。

並べてみると、共通点は語源ではなく、超えることが最初から想定されている点にある。当座貸越は、残高が足りなくなる日が来ることを前提に、超過分の限度を契約で決めておく仕組みだ。OD-1は、アンプの限界を超えた音を、わざわざ作るための装置だった。

違いは、超えたあとの扱いにある。銀行は超えた分に利息を付け、いつか返させる。ペダルは超えた音をそのまま鳴らし、誰にも返さない。

ほかにもODは、パイプの外径、培養液の光学密度、起立性調節障害、組織開発として現場に顔を出す。道路計画では、車がどこから出てどこへ向かうかを表す起終点で、国の道路交通センサスのOD調査は、車の使用者に出発地と目的地をアンケートで尋ねる。軍装の世界では、灰色や茶色を帯びた暗い黄緑色のオリーブドラブを、英米でODと略して被服や装備の色番号に使う。このうち外径は、むしろ超えないことが仕事で、ODが数ミリ合わないだけで継手に入らない。

それでも冒頭の場面は変わらない。機材表のODは、読み違えようがない。二文字を見て迷うのは、機材表と手形、あるいは道路の調査票と軍装の色番号を、同じ机で扱う人くらいだろう。