略語

PA

ピーエー

8つの業界で、それぞれ別の意味で使われています。

音響・レコーディング

音響拡声設備

Public Address

ライブや会場で多くの人に音を届けるための拡声設備の総称。マイク、ミキサー、パワーアンプ、スピーカーを組み合わせた一式を「PAシステム」と呼び、これを操作する担当者や職種も略して「PA」と言う。

今日のリハはPAの音出しから始めます。

映画・映像・アニメ

制作助手

Production Assistant

映画やテレビ、映像制作の現場で、撮影が滞りなく進むよう雑務全般を支える入門的な職位。コールシート(撮影日程や集合時間を記した香盤表)の配布、スタッフの食事や移動の手配、現場の準備や片付けなどを受け持つ。

新人のPAは、まず弁当の手配とコールシートの配布を任された。

土木・測量

パーキングエリア

Parking Area

高速道路に設けられる休憩施設のうち、運転者の疲れや緊張をとるための駐車場とトイレを基本に、必要に応じて売店を置くもの。サービスエリア(SA)と対になる区分で、規模の大小ではなく提供するサービスの内容と施設どうしの位置関係で分けられる。

次のPAまで約10キロなので、そこで休憩を取ろう。

医療・医学

医師助手

Physician Assistant

米国で1960年代に養成が始まった、医師の監督下で診察や手技などを担う専門職。外来診察から入院、手術の補助、病棟管理まで幅広く関わり、医師の業務負担を軽くする。日本では国家資格ではなく、2010年に亀田総合病院が院内資格として導入した例がある。

手術の助手と術後管理は、外科のPAが担当している。

素材・化学

ポリアミド

Polyamide

アミド結合-CONH-で連結した重合体(ポリマー)の総称。PAと略称される。

出典:日本大百科全書(ニッポニカ)(小学館)/コトバンク

アミド結合でつながった高分子の総称で、ナイロンもこの仲間。強靱で摩擦係数が小さく耐摩耗性に優れたエンジニアリングプラスチックとして機械部品に使われる。ナイロン6は PA6、ナイロン66は PA66 のように、数字を添えて種類を区別する。

ギアの材料をPA66のガラス繊維強化品に変更した。

広報・PR

パブリックアフェアーズ

Public Affairs

企業や団体が事業目的を達成するため、政府機関、自治体、非営利セクターなどに戦略的に働きかける活動。ロビイングにとどまらず、規制当局など政策に関わる主体との関係づくりや合意形成を含む。報道向けの広報とは相手と目的が異なる。

新制度の検討段階から、PA担当が省庁との対話を重ねている。

スポーツ・フィットネス

打席数(野球)

Plate Appearance

野球で、打者が打席に入った回数を数える記録。四死球や犠牲フライなど打数(AB)に数えない場面もすべて含むため、PAは常にABより多いか同じになる。首位打者などの規定打席の判定にも使われる。

今季はすでに400PAを超え、規定打席に到達した。

航空

気圧高度

Pressure Altitude

高度計の気圧設定を標準大気の海面気圧(1013.25hPa=29.92inHg)に合わせたときに示される高度。観測した気圧を国際標準大気(ISA)に当てはめた高度にあたり、実際の気圧が標準より低い日は高く、高い日は低く出る。離陸距離や上昇性能を性能表で調べる入り口の数字で、これに気温を加味して密度高度を求める。

今日の空港は気温が高いので、PAに気温補正をかけて密度高度を出してから離陸距離を確認しよう。

弁当を頼むPAと、二年学ぶPA

撮影現場の新人PAが最初に任されるのは、弁当の手配とコールシート(撮影日程や集合時間を記した香盤表)の配布だ。Production Assistant、つまり制作助手。映像の世界では、いちばん下の段から始まる入門の職位である。

同じ二文字が、病院ではまるで違う重さで使われる。Physician Assistant、医師助手。診察から手術の補助、病棟管理までを医師の監督下で担う専門職で、米国では二年の課程を修めた人がなる。助手という訳語は同じなのに、片方は下積みの入口で、片方は課程を修めた先にある仕事だ。この落差は、どこから来たのだろうか。

米国の側をたどると、始まりの日付がはっきりしている。1965年10月、デューク大学医学部の内科主任だったユージン・ステッドが二年のカリキュラムを開いた。入学したのは海軍の衛生兵だった元軍人四人で、うち三人が1967年10月6日に最初の修了生になった(デューク大学の公式記事による)。ステッドが狙ったのは、医師と看護師のあいだの空白を埋めることだった。軍で積んだ経験を、そのまま捨てずに生かす道でもあったという。

つまり医療のPAは、最初から「医師の仕事の一部を預かる人」として設計された職で、助手という名は、その預かり方を示すものだった。映像のPAは逆に、現場で雑務を受け持ちながら周りの仕事を覚えていく入口に置かれている。名前は同じでも、前者は役割を先に決めた職、後者は段階を表す職である。

日本に目を移すと、少し事情が違う。医療のPAは国家資格ではなく、2010年に亀田総合病院が院内資格として導入した例がある。制度が先にあって言葉が追いかけたのではなく、言葉と一緒に一つの病院が始めた、というのが実際に近い。

ところが現場の会話では、「PAが来た」と言われても、それが誰なのかは場所で決まる。ライブ会場なら音響の担当者のことで、音出しの時間を聞いている。高速道路なら、次の休憩場所を示すパーキングエリアだ。工場では、ギアの材料のポリアミド(ナイロン)でもある。

空港まで行くと、人でも場所でも素材でもなくなる。パイロットの言うPAは気圧高度、Pressure Altitudeで、高度計の気圧設定を標準の海面気圧1013.25hPaに合わせたときに示される数字のことだ。実際の気圧が標準より低い日は高く出て、高い日は低く出る。暑い日の離陸距離を性能表で調べるときは、この数字に気温を加えて密度高度を出すところから始める。ひとつの単語に、人の役目と、場所の名前と、素材の名前と、高度計の読みが重なって使われている。

弁当を配り終えたその人が、半年後に別の現場で音のPAと呼ばれることは、たぶんない。同じ二文字を背負いながら、呼ばれる先がまるで違う。それを混乱なく使い分けられるのは、会話の外にある現場そのものが、答えを先に教えているからだ。滑走路の脇でPAと聞いて、弁当を思い浮かべる人はいない。